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2006_ワールドカップ日記・・次のステージへの大きな一歩を踏み出したドイツ・・国民に希望を与えられたことは素晴らしい成果だった・・(2006年7月4日、火曜日)

フ〜〜ッ。まあ仕方ない。とにかくドイツは、ギリギリの勝負マッチを重ねるなかでどんどん発展をつづけ、最後は、どんな強豪チームと対戦しても、しっかりとした勝負を展開できるまでに成長したのですからね。次につながる大会だったことが、ドイツサッカーにとって、ものすごく大きな価値があったと思っている湯浅なのです。

 もちろん、かなり落胆はしたけれど、「奈落の・・」というわけではまったくありませんでした。そのことは、ドイツの友人たちも同じに違いありません。試合が終わった次の瞬間には、「ドイッチュランド! ドイッチュランド!」の大合唱がスタジアムを包みましたからね。もちろんそれには、ドイツ代表が、次のステージへ飛翔することに対する大いなる期待が込められている。いまドイツ人は、それを期待できると確信しているのです。素晴らしいことじゃありませんか。希望こそが、次のステップアップの糧ですからね。

 さてゲーム。この試合でのドイツは、前からプレッシングを仕掛けていくのではなく、あくまでも慎重に、守備ブロックをしっかりと組織した上で良いカタチのボール奪取を狙いつづけます。それが、殊の外うまく機能する。表面的な主導権はイタリアに握られているけれど、チャンスを作らせているわけではないし、逆にドイツが、しっかりと攻め返し、より良いチャンスを作り出しているのです。

 やはりイタリアは、自分たちが主導権を握ったゲーム展開は、あまり得意ではない!? まあ、そういうことなんだろうね。彼らの典型的な「仕掛けイメージ」は、しっかりとボールをキープしながら、最後は「トントン・ト〜ン」というリズムで決定的スペースへスルーパスを通そうというもの。ただ、ドイツ守が備ブロックがしっかりと組織を作っていることで、どうしても、ウラのスペースをタイミングよく突いていけないのですよ。攻め過ぎのイタリア!? まあ、そういう側面もありそうです。

 イタリア得意の仕掛けのカタチ。例えばこんな感じ。ピルロがボールをキープし、横にいるペッロッタへ足許パスを出す・・もちろんピルロは動かず、ペッロッタからの「足許リターンパス」を待つ・・そして最後の瞬間、ズバッという横パスがピルロに返され、それを、もちろん「ダイレクト」で、ドイツ最終ラインのウラに広がる決定的スペースへタテパスを送り込む・・もちろん、そのタテパスのタイミングを狙って、トーニが抜け出している・・ってな感じ。

 この仕掛けは、本当に危険。何せ、イタリア選手は全員が、その仕掛けイメージで統一されているんだからネ。ピルロがボールを持って、ゆっくりとした横パスを出した次の瞬間には、最前線のトーニや、二列目のカモラネージ等が、横への動きをスタートしているのです。もちろんそれは、急激なタテへの方向転換を前提にした「助走」というわけです。

 たしかに、最初の10分間は、ドイツ最終ラインはまだ不安定でしたね。だから、何度か決定的スペースへパスを通された(そこで相手にボールを持たれた)というシーンがありました。でも、15分も経つと、どんどんとドイツの守備ブロックの対応が確実なものになっていきました。ラインコントロールも自信をもって出来ていたし、イタリアの「勝負のタテパス」を読んだパスカットも、何度も魅せた。ボールポゼッションではイタリアのものだけれど、チャンスの量と質では、確実にドイツに軍配が上がるという実質的なゲーム展開なのです(前半34分の、カウンターからシュナイダーがフリーシュートを放ったシーンはまさに決定的!)。

 もちろんイタリアも、何度か決定的チャンスを作り出したけれど、どうも単発という印象をぬぐえない。全体的な流れでは、確実にドイツがイニシアチブを握っているのです。ドイツ全土の期待が膨らみつづけるのも道理といったゲーム展開でした。

 そんな流れは、後半も変わりません。イタリアが主導権を握っているように「見えて」実際の勝負は、どんどんとドイツへ傾いていきました。後半17分のポドルスキーの振り向きざまのシュートなど、ドイツが得意のカタチをシュートへ結びつけている。もちろん、テクニックがあるわけじゃないけれど、ボールがないところでのアクションを忠実につづけることで、素晴らしいダイレクトコンビネーションを繰り出していくドイツってな具合なのです。

 そんな流れのまま延長戦に突入していきました。ただ、その前半立ち上がりにイタリアが、二本の決定的チャンスを作り出してしまう。まず、右サイドでメッツェルダーを振り切ったジラルディーノが、そのままドリブルで切れ込み、バラックまでも外してシュート。ボールは、レーマンの手をかいくぐってゴールへ。でも最後は、ポストに当たって枠外へ転がっていきました。誰もがため息をついたその一分後には、今度はザンブロッタが、ドイツゴールのバーを直撃するシュートを放つ。さて・・。

 その後の展開は、互いにチャンスを作り出すなど、どんどんと緊迫の度を深めていきました。そして、先ほどまでのドイツ有利の流れは、徐々に薄れはじめていくのです。勝負はどちらに転ぶかまったく予断を許さないといったゲーム展開になっていく。そして・・

 やはり最後は、個の能力の差でやられてしまったと言ってもいいでしょうね。コーナーキックからのこぼれ球を拾ったピルロの素晴らしい「タメ」と、ウラへのスルーパス・・そしてグロッソの、ここしかないというコースへの正確なシュート・・。イタリアは、ザンブロッタ、カンナヴァーロ、ピルロ、カモラネージ、トッティー、トーニといった優れた才能を有しているということです。

 もちろんドイツも、これからもっと技術レベルの高い若手が出てくるでしょう。そして中堅やベテランと融合していく。やっとドイツも、良いベクトルに乗ったということです。これからの彼らの活躍に期待しましょう。
 



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