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ほとんど寝られずの湯浅健二・・予選リーグの各組第一戦の続報です(1998年6月16日)

 いま、イングランド対チュニジアの試合をテレビで観戦しています。主審は、日本の岡田正義氏。彼が、今回のルール改正をどのように解釈し、ゲームをコンダクト(指揮)するのかにも注目してゲームを見ようと思っています。

 それにしてもチュニジアの守備。いつも、少なくても8人、たまには9人も守備に参加します。そんな固めた守備をベースに必殺のカウンターを・・と考えているのでしょうが、そのカウンターが鈍い。素早くタテパスを通そうとするわけでもなく、超速ドリブルで上がって行く(スペースをつなぐドリブル)わけでもなく、やろうとしている計画(このことをゲーム戦術というのダ)ははっきりしているのに、「プレー意図」が非常に曖昧なのです。これでは、いくら足技がウマクてもイングランドの堅守を崩せるはずがありません。

 そんな中途半端な攻めは、今度は守備にも悪影響を与えてしまいます。最終局面でのマークが甘くなってしまうのです。それはそうです。チュニジアの守備陣は、「こっちは一生懸命に守っているのに、なんだヨ、お前たち(攻撃陣に対して)、もっと一生懸命にリスクにチャレンジしろヨ・・」ってな具合。それにしてもチュニジアの選手たちの「ボール扱い」は、本当にウマイ。

 対するイングランドですが、本当に彼らのプレーイメージが、良い方向に大きく様変わりしたことを感じます。それには、イングランド、プレミアリーグを代表するクラブ、マンチェスター・ユナイテッドの、高質でスマートなだけではなく、しっかりと勝てる「強い」サッカーが、「イメージ的」にかなり貢献していると思います。そんな「オピニオンリーダー」がいることで、代表チーム(選手たち)のサッカーも少なからず影響を受けているということのよい証明・・といったところまでしょうか(もちろん代表チームには、何人ものマンチェスター選手たちが選ばれています)。

 また、代表監督のグレン・ホドルも、現役時代は「技術系」の天才選手として鳴らした存在。放り込みだけだった当時のイングランドサッカーに不満を持っていたに違いありません。そんな彼の不満も、今のイングランド代表チームのサッカーに反映されているということです。

 さて試合ですが、何度もチュニジア守備ラインを完全に崩してしまうなど、結局は「2-0」でイングランドの貫禄勝ちといったところです。チュニジアは確かに個人的な能力は高いのですが、それがチームとしてまとまっていない・・という「アフリカのジレンマ」をそのまま踏襲しています。これでは、ホンモノの勝負で勝てるはずがありません。

 この試合については、それ以外にあまり注目する見所がかなったので、ここまでにしますが、最後に岡田氏の主審ぶりについて一言。

 全体としては合格点をつけられる内容。特に後半は、自信をもった「コンダクター」ぶり。安心しました。ただ、明らかな判定ミスも何度かありました。もっと勇気をもって笛を吹いてもいいのでは・・と感じた湯浅健二でした。

 もしかしたら、国際サッカー連盟からの通達で、ルール改正の内容が、急遽「緩やかな」ものに変わってしまったのかもしれません(このルール改正については、私がコラムを連載しているサイト、2002Japan、または、マイクロソフト・ネットワークのスポーツコーナーを参照してください)。もし判定基準がコロコロと変わってしまうのだったら、レフェリーも含めた「プロサッカーの現場」にとってはいい迷惑。プラティニもいっているとおり、もしこのような大々的なルール改正をするならば、ワールドカップの少なくても一年前くらいから準備をしなければならないのでは・・。世界最大のエンターテイメントを台無しにすることなど考えられませんからね。

 さて次は、ドイツ対USA戦(2-0)です。この試合は、パルク・ド・プランス競技場で観戦しました。

 この試合についても簡単に。まずドイツの出来があまり良くなかったこと。世界最高のディフェンスは健在ですが、メラー、ヘスラー、クリンズマンといった、ドイツのエース格の出来が今一つ。USAの守備の出来が素晴らしかったこともあるのですが、ドイツの真骨頂である「ボールのないところでのクリエイティブプレー(パスを受ける動き・・フリーランニングのことですヨ)」がうまくいきません。相手の「ウラ」を突くようなコンビネーションがほとんど出てこないのです。それでもそこはドイツ。最後は、本来の勝負強さを発揮してUSAを粉砕しました。それにしても、特にドイツの「攻め」には不満が残りました。クリンズマンは、本当に限界なのでしょうか・・。確かに二点目はゲットしましたが、私の目にも、彼のパフォーマンスが落ちていることは明白でした。キルステンなどの後進がいるのだから、そろそろ・・?!

 これで、すべてのチームがワールドカップ初戦を終了しました。

 ワールドカップ初戦には「悪魔が棲みついている」。過去には何度も、そのときの優勝候補が、初戦で苦い思いをしたことがあります。その意味は、優勝候補は、トーナメントが進むうちに成長する・・、逆にそれ以外のチームは、優勝候補と当たる「初戦」がハイライト・・、というところにあります(初戦は、常に、強豪チーム対それ以外のチームというカードが組まれる)。

 優勝候補チームにとって、初戦は非常に難しい「位置づけ」にあるゲームです。彼らにとっては、長丁場のトーナメントで調子を上げ、最後の決勝戦に「トップフォーム」にもっていくというのが理想。ただ、初戦の相手は「失うもののないチーム」というのが普通。彼らは、それぞれに激烈な予選を勝ち抜き、ワールドカップ第一戦にターゲットを絞って準備してきます。ですから、気を抜いたらやられてしまう、それでも、その試合だけにターゲットを絞るわけにもいかない・・。

 このことは、私のワールドカップ優勝候補、ブラジル、ドイツ、フランス、イングランド、アルゼンチン各国に共通していたジレンマです。地元のフランス、そして調子の良いイングランドは、内容的にも横綱相撲でしたが、それ以外の、ブラジル、ドイツ、アルゼンチン(日本代表が素晴らしい試合をしたので、彼らの場合は、本当にラックだった)は苦戦を強いられてしまったというわけです。まあそれでも自力に勝る彼らのこと、最後は、「最高の闘志をぶつける」相手を、勝負強さで葬ってしまったというわけです。

 読者のみなさんのなかには、「何だ、湯浅健二は、この五ヶ国しか優勝候補として考えいないのか・・。イタリアだっているし、スペインだって悪くない。またナイジェリアだって、ユーゴ、クロアチア、はたまたオランダやデンマークだって・・」とお考えの方も多いに違いありません。

 そうです。もちろん彼らも優勝候補には挙げられます。ただ私が、彼らの場合、優勝するには、まだまだ何かが足りないと感じていることも事実なのです。例えばナイジェリア。彼らの個人的な能力は、それは世界最高峰です。それでも(確かにスペインに勝ったとはいえ)、チームゲームという意味では大きな不満が残ります。それ以外のチームについても、少しづつ何か足りないところを感じる・・・。

 ということで、私は、上記の五ヶ国を中心に、ワールドカップを注目していこうと思うのですが、いかが?!




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