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またまた「神様のドラマ」が・・ジェフ対マリノス(0−2)とセレッソ対フロンターレ(1−2)・・(2000年5月27日、土曜日)


「フロンターレ!! フロンターレ!!」

 スタジアムを、サポーターの歓声が包み込みます。ここは国立競技場。ちょうど、ジェフユナイテッド対マリノスの試合が終了したところです。そこで、オーロラビジョンに、大阪の長居スタジアムで行われているセレッソ対フロンターレの延長戦が映し出されているというわけです。もちろん声援が(科学的には?!)届くはずもないのですが、マリノスファンが放つ大迫力の「参加意識エネルギー」が、本当に大阪まで届いていたかも・・

 押し込まれ、「もう完全に集中を切らせている。これはセレッソのVゴールを待つだけの雰囲気に陥ってしまっているナ・・」というくらい劣勢の、延長戦でのフロンターレ。セレッソの西谷が、ノ・ジュンユンが、はたまた森島が、決定的なシュートを放ち、そのたびに、国立に残っていた1万7千人のマリノスファンの悲鳴が響きわたります。

 ただ延長前半の最後の2分間だけは、フロンターレが持ち直し、コーナーキックから、また流れの中から決定的なシュートチャンスを作り出します。そして、「これは・・」と思っていた延長後半の1分、本当に「コト」が起きてしまいます。

 右サイドで、「フリー」でボールをもった二年目の新人、フロンターレの我那覇(前半にはポストシュートを放ち、後半4分には先制ゴール!!)。その瞬間、フロンターレ最前線にポジションをとっていた交代出場の浦田が、「ファーポスト側のスペース」へ爆発的なダッシュをスタートします。ここが勝負の瞬間でした。

 我那覇へは、セレッソ四番の田坂がチェックにいきますが、スライディングするわけでもなく(スライディングできるタイミングだったのに・・)、結局は「フリー」でラストパスを出させてしまうのです。もう一方の「決定的」パスレシーバー、浦田。彼をマークしなければならなかったのは、五番の蔵田。ただ彼の目は、我那覇とボールへ向けられています。もちろん蔵田の頭の中のディスプレイには、浦田の動きが完璧に映し出されていたに違いありませんが、それでも・・。蔵田は、「アッ、オレのウラを浦田が走り込もうとしている。でも、本当にそこへ、(パスコースに入っている)オレを外したパスが通るかな・・」といったイージーな心境だったのかも・・

 疲れ切った延長後半にまでも、最高レベルの集中力で身体を張ったギリギリのディフェンスを・・というのが酷であることは重々承知ですが(正直に言います・・湯浅は、サッカー内容の素晴らしさから、また初めての関西チームということで、セレッソに勝って欲しいと思っていたのです!!)、それでも、このフロンターレの「Vゴール」が、田坂、そして蔵田の「ぬるま湯ディフェンス」と、その守備の甘さを突いた、我那覇、浦田の素晴らしい「イメージシンクロプレー」によって生まれたことだけは確かな事実なのです。

 さて、オーロラビジョン。

 記者席の私の隣に座っていたマリノスのファンの方々の喜びようといったら・・。もちろんマリノス選手たち、サポーターの皆さんも含め、喜びが爆発してしまって・・。私の隣の方々からは、試合中から、「どうなっていますか?」なんて質問されていました。ですから私の方から「セレッソの延長は、オーロラビジョンでやるはずですヨ」とお教えしました。

 イタリアの「セリエ」、ドイツのブンデスリーガ、そして「J」。本当に信じられない、リーグ最終節での「大逆転ドラマ」ではありました。これはもう「神さまのイタズラ」と言うしかない?! 森首相の「神の国発言」が、一瞬、脳裏をよぎったりして・・

 サッカーは、感動・歓喜と、落胆・悲劇が交錯する「シナリオのない(神様が演出する?!)ドラマ」。本当に、この試合ではそのことを実感させられてしまいました。

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 さて、ジェフ対マリノスの試合についてもレポートしなければ・・

 試合は、完全にジェフペースで終始します。マリノスには、三浦がいない・・、ユー・サンチョルがいない・・、それでも優勝を争うチームなのだから、だらしない・・なんて思っていました。

 もちろん(小さいとはいっても)優勝の可能性を残した試合ですから、セレッソ同様(長居からのレポートでは、セレッソもガチガチだったようで・・)、彼らのプレーからは、かなりの緊張を感じてはいましたが・・それでもネ・・

 とにかく「全体的」な内容はジェフのもの(シュート数は、ジェフが15本、マリノスがたったの6本!)。

 18分には、バロンからベンソンへ決定的なパスがとおる(ギリギリのところで触れなかった!)、24分、右サイドでバロンが突破し、そのままフリーで、ゴール前の(GK目前の)「決定的スペース」へ、ズバッというグラウンダーのラストパスを通す(ただ、中で待っていた小倉が反応せず、みすみすチャンスを棒に振ってしまう・・そんなラストパスに対する「イメージ」がない!!)、29分には、大柴が、怒濤のドリブル突破にトライする・・などなど・・

 とはいっても、マリノスの「才能」が演出する「ココゾ!」のチャンスメイクには、やはり危険な臭いを感じていたことも事実です。

 「才能」とは、もちろん中村俊輔、そしてエジミウソンのこと。

 中盤での忠実な守備からのしっかりとした組み立てを基盤に攻め上がるジェフ。また、バロン、ベンソンを起点に、大柴や酒井などが後方から絡んでいく最後のフィニッシュまでの「仕掛け」にも、かなりの危険性が見え隠れするのですが、対するマリノスの「才能ベースの危険性」も、(単発ではありますが)それに勝るとも劣らないほどに脅威だと感じていた湯浅だったのです。

 また、ジェフの、マリノスの「勝負の仕掛け」を受け止める、中盤から最終守備ラインにかけてのディフェンスワークに大いなる不安を感じていましたからネ。私は、彼らの「ボールがないところ」での守備が不安定だと感じていたのです。

 そして、マリノスの「才能」が狙っていたのは、まさにそこだった?!

 まず前半32分。それまで目立った活躍ができていなかった中村俊輔が、やっと決定的な仕事に絡みます。右サイドでのフリーランニングから(素晴らしいタイミングの走り抜けでした)、タイミング良くパスを受け、ジェフの中田を見事なフェイントで抜いてセンタリングを上げたのです(精度不足で失敗)。

 そして前半38分。マリノスの「危険な匂い」が現実のものとなります。

 ジェフのペナルティーエリア外の中央でボールを持った中村が、ちょっとフェイントを入れ、最前線のエジミウソンへタテパスを出し、自分はそのままタテへ走り抜けます。エジミウソンは、パス&ムーブで入ってくる中村へリターンパスを出す「素振り」から、そのままボールを流して抜け出し、シュートを決めてしまったのです。先制ゴール!!

 それは本当に一瞬の出来事。このゴールでは、中村のパス&ムーブの動きが「決定的な意味」をもっていました。それがなければ、決してジェフ守備陣の意識が「引きつけられる」ことはなかったと思うのです。

 それこそ、「ここ一発の才能」が光り輝いた先制ゴールではありました。

 その後の前半42分。ジェフのベンソンが二枚目のイエローを受けて退場。彼は、中西がケガでうずくまっていたことから、とにかくプレーを一度止めようと、無理にマリノス選手を引っかけてしまったのです。そしてイエロー・・、フ〜〜ム。中西が倒れているのですから、プレーが流れているとはいえ、レフェリーが一度止めるべきだった・・とも思うのですがネ・・

 (ジェフが一人足りないとはいえ)後半も、前半同様の展開。全体的にはジェフがペースを握っています。それでも、たまに見せるマリノスの攻撃では、本当に簡単なワンツーのタイミングでディフェンダーが置き去りにされてしまうなど、ジェフの守備への不安は募るばかり。

 ザムフィール監督は、いったい何をしているのでしょうか。「ボールがないところでの守備」。「決定的な場面での、最後まで忠実にマークし続ける姿勢」。「相手の次の攻撃プレーを予測した先回り(これも忠実な守備の一環)」。そんなところに、ジェフ守備陣の、イメージ的な課題が「明確」に見えてしまって・・

 後半20分、大活躍の大柴が、マリノスの松田に押さえられて倒されます。それが決定的なシーンだったので(大柴が抜け出せばGKの川口と1対1!)、松田に、即刻レッドカードが出されます。

 これで人数はイーブン。マリノスの選手たちは、「同勝ち点、同得失点差」の場合は、総得点の多いセレッソに軍配が上がることを良く知っているはず。ですから、とにかくもう一点奪っておかなければならないのに・・。彼らのプレーからは「是が非でももう一点!」という姿勢を感じません。

 この時点で、長居は「1-1」。このままだと・・

 試合中から、周りの記者仲間の皆さんから「長居の情報」が入ってきていました。「このままでは、セレッソが優勝する・・」、なんてネ・・

 ただ後半24分。意を決した(状況的にやるっきゃないと感じていた?!)遠藤の「一発勝負」が図に当たり、マリノスが値千金の二点目を奪います。

 左サイドの遠藤が、ワンツーを二回続けて決めて抜けだし(最初は中村、最後のポストは外池)、ジェフGKのアタックをフワッと越える「バカウマ・シュート」を決めてしまったのです。追加ゴール!!

 ここでも、簡単にワンツーで置き去りにされてしまったジェフ守備陣。そこに、彼らがランキング上位に姿を見せられないという「問題」の本質を感じていた湯浅でした。

 そして、私の席の後ろから、「湯浅さん、これでセレッソは、レギュラータイムでも、延長でも、とにかく勝たなければならなくなりましたヨ・・」なんて声がかかって・・フ〜〜

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 セレッソの選手たちは、肉を切らせて骨を断つ・・という優勝争いのプレッシャー、そして「地獄の結果」を体感しました。

 ここからです。

 いま「J」でもっとも輝いている、セレッソの「魅力満載サッカー」。セカンドステージでは、倍加された「自信・確信」をベースに(失敗をステップに・・機会と脅威は背中合わせ・・ポジティブシンキングで・・)、より磨きのかかった「ファンタスティックサッカー」を魅せて欲しいものです。

 ガンバレ! セレッソ大阪・・




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