湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第十五節(1999年11月27日、深夜にアップ)

レッズvsサンフレッチェ(延長Vゴール・・1−0)

レビュー

 知っていた・・。ベンチ、選手たち、そして2万人の観客すべてが知っていました。

 延長にはいった瞬間、スタジアムにいるすべての「歴史の証人」が、レッズの二部降格を認識していたのです。それでも声をからして声援を続けるレッズサポーター、観客、そして、最後まで戦い続けようと、前へ進む選手たち・・。本当に感動的な時間が過ぎていきました。

 感動・・?! それはたぶん(正直に言えば・・)、私自身のレッズに対する「参加意識(思い入れ)」が高かったからなんだろうと思います。だからこそ(残念・・悔しい・・とはいえ・・)、ジェフ、そしてアビスパの「ドラマの参加者」の皆さんに対し、本当に心からおめでとうございますと言えるのかもしれません。常に、感動、そして奈落の落胆(それは決して悲劇ではない!!)というドラマを提供してくれる「フェアなスポーツ」を愛する仲間として・・

 これまでに私は、数え切れないほどの「神様のイタズラ」の証人になってきたという自負はありましたが、それでも、こんな「異質のドラマ」は初めてです。リーグ戦に「延長」があるというシステム・・。ある意味では、残酷な「時間」でもありました。だからこそ、ドラマの証人になった全ての人々の「姿勢」に感動をおぼえたんだろうな・・そう思うのです。

 私は、スタンドがほとんど空になるまで、グラウンド上にいました。そして、思いを遂げられなかった選手たちと観衆の「ふれ合い」を最後まで見ていました。そして確信したのです。レッズのサポーター、ファンの人々の、「レッズ」という市民イニシアチブ・アクティビティーに対する「参加意識」が、サッカーネーションのそれに勝るとも劣らないレベルにまで高まっていること、だから来期の「J−2」が、彼らを中心に大いに盛り上がるだろうことを・・

 レッズは、彼らにとっての「地域的・文化的アイデンティティー」として、また異性、異ジェネレーション、異業種などを結びつける「異文化接点(媒体)」として、すでに非常に大きな「生活価値」を生み出しているのです。

 「参加意識」、サッカーの「文化価値」などのテーマについては、「Yahoo Sports 2002 Club」の過去のコラムで採りあげました。また今週号のコラムでは、「降格」について、思うところを書きました。そちらも参照してください。

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 相手のサンフレッチェ。彼らも、プロとして立派な闘いを展開しました。だからこそ、レッズ・サポーター、ファンの人々の「心理」も、たしかに「歓喜」とは逆の方向であるとはいえ、少なくとも「曇りや陰り」が残ることはないのでは・・と思うのです。

 フェアなスポーツ・・。それは、(健全な)悲しみや喜び、楽しみ、元気を与えてくれるものなのです。

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 ただ一つだけ、納得できないことがあります。それは、私のホームページ、また「Yahoo Sports 2002 Club」やサッカーマガジンで何度も採りあげた、レッズの、戦術的、そして心理・精神的な「闘い方」です。

 試合後のインタービューで、デモス監督が、「過去四試合のうち、三試合を、我々が目指していたように零封した・・。それだけレッズは良くなったのだ・・。ただ、勝つために必要な点が取れなかった・・」と述べていました。

 やはりそうか・・

 デモス監督は、「日本人選手に、攻撃でのリスク・チャレンジを要求したら、(戻ってくるチカラや、前後のバランスをとる状況判断のチカラが十分ではないから?!)守備のバランスが崩れて失点してしまう可能性が高い。勝つためには、まず『失点しないように』・・という姿勢(戦術)で試合に臨み、一試合に一度か二度は訪れるワンチャンスを確実にモノにしていこう・・」という基本的な考え方(判断)で「チーム戦術」、「ゲーム戦術」をプランしていたということです。

 たしかに、ジェフとベルマーレに勝利し(零封)、ヴェルディーには最後の最後で追い付かれ引き分けてしまったが、残り一試合の時点で、降格リーグでの直接的ライバルであるジェフに「勝ち点1」の差をつけたではないか(そして最後のサンフレッチェも零封の勝利!!)・・と言われれば・・。それでも私は、そんな「後ろ向き」のプランに納得できないでいます。

 なんといっても、「J」が始まって以来はじめて「絶対に90分以内で勝たなければならない試合」に臨んでいたのですから・・。

 「最初は、安全、確実に・・そして最後の15分間に勝負をかける積極的な交代を敢行していく・・」。デモス監督の「ゲームプラン」です。でも私は、「スタート時」の心理・精神的な姿勢がもっとも重要だったと考えます。それが、まず「失点をしないように・・」という心理で重要な試合に臨み、結局は、まったく「タテのポジションチェンジ」がない、つまり相手守備にとって、まったく変化と驚きがない、「危険なニオイ」がまったく感じられない攻撃を繰り返してしまう・・。これでは、そんな闘い方(心理・精神的、戦術的な戦い方)を急に活性化する(積極的・攻撃的なモノにする)ことなど・・

 これはもう、「考え方の違い」というしかありませんが、私は、ツートップ、二列目の小野とペトロピッチだけではなく、それに、少なくとも一人か二人は、「常に」最後のシュートシーンまで(味方の最前線を追い越すところまで?!)行くような「積極的、攻撃的な心理・精神的姿勢」と、それをサポートできるだけの「クレバーで積極的な戦術」が「最初」から必要だったと思うのです(たしかに山田は仕掛けてはいましたが・・それも単発・・)。

 例えば、中村と城定、石井と山田がペアを組み、交代々々に上下動する(相手守備にとっての『見慣れない選手』が常に最前線に顔を出してくる)・・、それに小野とペトロのコンビの「交代の上下動」が絡む・・。また、攻撃に多くの人数が絡んだ状況で「中途半端」にボールを奪われたとしても、最前線選手も含めた瞬間的なチェイシングをかけることで相手の攻撃を遅らせ、周りが「必要な高さ」まで全力で戻ることを徹底させる(トレーニングで繰り返し準備する)・・

 リスク(仕掛け)のないところに進歩はない・・、リスクのないところに満足もないし、積極的に、攻撃的に考え続ける姿勢だって発展しない・・。そして、ガチガチの守備・攻撃戦術だけに「心理的・精神的・物理的に閉じこもる」ようになってしまう・・

 これからも私は、今回の、リーグ終盤でのレッズの闘い方に納得することはないでしょう。

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 来シーズンのレッズは、「J−2」での観客動員記録を塗り替えながら、サポーター、ファンの人々の「高い参加意識に根ざした期待」を、着々と満足させていくに違いありません。

 今年最後のサッカーイベントである「天皇杯」も含め、これからも頑張れ、浦和レッズ!!




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