湯浅健二の「J」ワンポイント


2021年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第12節(2021年5月4日、火曜日)

 

さて、両チーム間の「僅差」の本質ファクターは?・・(フロンターレvsグランパス、3-2)

 

レビュー
 
・・出して、走る・・出して、動く・・

フロンターレのストロングハンド鬼木達は、そんな声かけをつづけている。

もちろん「それ」は、パス&ゴーとか、パス&ムーブとか呼ばれる組織プレーのこと。

そう、「その」積み重ねこそが、サッカーの美しさを象徴する、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションの礎(いしずえ)っちゅうわけだ。

各ステーション(パスレシーバー)での「球離れ」が、軽快で素早いフロンターレの「人とボールの動き」を象徴しているのが、この「出して、走る」っちゅうキーワードに込められているのかもしれない・・ね。

そんなフロンターレに対しして、この試合でのグランバスは・・

先週の「変則22節コラム」で期待を込めて書いたように、少なくとも、観ている者をゲームに引き込んでしまう「魅力的な意地」は魅せた。

でも・・

やっぱり、地力では、フロンターレに一日の長があった・・ということなんだろうね。

その「僅差」の内実だけれど・・

わたしは、「意識と意志とイメージング」の「量と質」の差・・なんて表現しようと思う。

それは・・

冒頭の、鬼木達からの「指示」に代表される積極(主体性!)プレーとなって、グラウンド上に表出してくる。

また、「それ」は・・

素早く、想像的な「攻守の切り替え」だけじゃなく、何人もの選手たちが積極的に絡んでいく(前からの)協力プレスの内実を形作る。

もちろん、グランパスが、その視点で、大きく劣っているワケじゃない。

でも、微妙な「僅差」は、感じさせられるわけさ。

もっと言えば、「その僅差」は、攻守にわたるハードワーク&リスクチャレンジを、主体的に(!!)探しまくるプレー姿勢にも、微妙に反映されているわけだ。

そして「その僅差」は・・

仕掛けプロセスの、実質的な「内実」となってグラウンド上に現出する。

人とボールの動きの「量と質」の差・・!?

まあ・・そうとも表現できるかもしれない。

フロンターレは、人数をかけられているからこそ(勇気まんまんのサポート!)、優れた、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションを魅せつけられる。

そして、そんなサポートが見事に実を結んだのが、フロンターレ山根視来の追加ゴールっちゅうわけだ。

フロンターレのなかでは、縦横無尽のポジションチェンジが、とてもスムーズにマネージされている。

そう、そのポジションチェンジのイメージが、明確にシェアされているんだよ。

あっと・・

ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションというテーマだった・・

そう、そうなんだよ。

その「内実」にこそ、グランパスとの「僅差」の本質が隠されているとも思うわけさ。

その、「組織と個のバランス」という視点ね。

グランパスの仕掛けでは、組織的な人とボールの動きが、うまくフロンターレに抑え込まれていた。

そう、グランパスの人とボールの動きは、フロンターレ守備を「振りまわす」には、力不足なんだよ。

だから、「仕掛け」のアクセントは、どうしても、前田直輝やマテウスによる「個のドリブル勝負」に頼ってしまう。

それに対してフロンターレは、組織コンビネーションで、スペースを攻略できるからこそ、そこからの、三笘薫や家長昭博に象徴される「個の天才プレー」を、よりいっそう光り輝かせることができるっちゅうわけだ。

この、「組織と個のバランス・・」というテーマは、とても深い。

その「バランス」を、かなりの高いレベルまで「自分たちのモノ」にしているフロンターレだからこそ、彼らが創りだす「仕掛けプロセスでの変化」は、レベルを超えているんだ。

もしかしたら・・

そう、その「仕掛けの変化」こそが、両チームの「僅差」の本質なのかもしれない。

ということで・・

たしかに、マッシモ名古屋は、意地の「ガンバリ」を魅せ、簡単には、フロンターレにスペースを攻略させなかった。

それでも、「今」のフロンターレの総合力からすれば、「いつかは・・」ってな「ゴールの香り」は、常に匂っていた。

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この試合での、ダゾン・カメラワーク(ズーミングワーク)ですが、とても良かったと思いますよ。

だからこそ、かなり突っ込んだ分析(テーマの提議!?)もできた。

どうも有難うございました。

そして、お疲れ様でした。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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