湯浅健二の「J」ワンポイント


2020年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第16節(2020年9月12日、土曜日)

 

両チームの「特長」が体感できるエキサイティング勝負マッチだった・・それにしてもイニエスタの魔法プレー・・堪能した・・(ヴィッセルvs FC東京、2-2)

 

レビュー
 
そうそう、それそれ・・

そのとき、そんな頓狂な声が出ていた。

そう・・

「あの」イニエスタが登場し、ヴィッセルの、組み立てと仕掛けプロセスの「流れ」に、有為な変容があったんだ。

・・イニエスタにボールが入る・・

・・ワンタッチ(トラップ)した次の瞬間には、スパッってな鋭い音がするようなタテパスが、古橋亨梧の足許に正確にフィードされる・・

・・また・・

・・イニエスタがスペースでワントラップし、タメを演出しながら、FC東京プレイヤーの視線を釘付けにする・・

・・そして次の瞬間、彼の横をオーバーラップするチームメイトの前方スペースへ、優しい、ホントに優しい、置くようなタテパスを通しちゃったりする・・

そんなだから、イニエスタが入ってからのヴィッセル仕掛けプロセスで、特に、ボールがないところのサポートの動きが倍増するのも道理だったんだよ。

ホント、その「仕掛けプロセスのポジティブ変容」には、舌を巻いた。

そうそう・・

イニエスタについては、以前、「こんなコラム」を書いたコトがあった。

そこでも書いたと思うけれど、とにかくイニエスタは、仕掛けプロセスの流れの「加速装置」として抜群の存在感を発揮していたよね。

だから私は・・

ヴィッセルが同点ゴールをブチ込むのも時間の問題って感じていたんだよ。

でも、そのイニエスタが登場してから数分後・・

自分たち主体の判断だったのか、ベンチの指示だったのか・・

そう、FC東京が、イニエスタを、タイトにマンマークしはじめたんだ。

だから、味方も、そう簡単にはイニエスタにボールを「預け」られなくなった。

それだけじゃなく・・

イニエスタ登場によって「押し上げ勢い」がアップし、逆に、守備が「薄くなる」傾向にあったヴィッセルの隙を突き、FC東京が、必殺のカウンターを見舞うんだよ。

そう・・

3点目をブチ込まれちゃう「勝負の流れ」になっちゃったんだ。

そんな感じで・・

イニエスタが登場してからの残り30分では、ゲーム展開の流れだけじゃなく、「勝負の流れ」にも、大きな「揺動」があったんだよ。

もちろん、観ているコチラにとっちゃ、とても興味深いグラウンド現象ではあったわけだけれど・・さ。

それにしてもFC東京のカウンターは、危険なコト、この上ない。

ショートカウンター場面は別にして、自軍ハーフでボールを奪い返した次の瞬間・・

超速の直線ドリブルやパスにしても、そこからの「ファースト仕掛けプレー」が素早く、効果的なんだ。

超速ドリブルでタテへ突進する選手、「最初の仕掛けパス」を受けた選手、パス展開を中継する選手、最後のフィニッシャーになろうとする選手など、とにかく、タテへ突っ掛けていく前へのダイナミズムは群を抜いているんだ。

そんなカウンターの流れにスイッチが入ったときのFC東京は、複数の「勝負イメージ」が、とても正確にシンクロしているって感じるのさ。

サスガのストロングハンド、長谷川健太じゃありませんか。

ということで・・

そんな「ピックアップ視点」があったゲームだったけれど・・

でも、全体的には・・

やっぱり、ヴィッセルの、「静と動」がうまくバランスしたボール奪取プロセスと、そこからの、組織と個が上手くバランスした仕掛けが光っていたと評価するのがフェアかな。

ダゾン試合後インタビューで、トルステン・フィンクが語っていたようにね。

もちろん・・

「静」は、ブロック守備、「動」は、前からプレス守備のことだよ。

その使い分けが、とてもスマートに機能していたっちゅう印象が残っているのさ。

だからこそ・・

組み立てプロセスでは、しっかりと人数をかけた「人とボールの効果的な動き」が目立っていたし・・

スペースを攻略してからの、組織と個がうまくバランスした仕掛けプロセスも、見所満点の「危険コンテンツ」だったっちゅうわけだね。

そう、前節フロンターレ戦のようにね・・

それにしても・・

流れのなかでは、ハードマークされていることで、交替出場してからの数分間に魅せた、素晴らしい「魔法プレー」がままならなくなっていたイニエスタ。

それでも・・

ギリギリで右上角をかすめた86分のFKと、ダンクレーが同点ヘッドを叩き込んだ93分(ロスタイム3分)のFKには、「まさに世界トップ」ってな趣が漂っていた。

とにかく、イニエスタ・・

交替した直後の、ヴィッセル仕掛けの(!)流れを変容させた「魔法のパスプレー」と、結果を引き寄せた素晴らしいフリーキックが観られた(体感できた)だけで、心から満足していた筆者だったのであ〜る。

へへっ・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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