湯浅健二の「J」ワンポイント


2017年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第15節(2017年6月18日、日曜日)

 

まあ仕方ない・・レッズは、「脅威と機会は表裏一体」という普遍的コンセプトの正しさを体現できるだけの「内実」を備えているから心配していない・・(レッズvsジュビロ、2-4)

 

レビュー
 
・・さて、ここからだな・・

・・今は、このネガティブな状態から、着実に抜け出していくという強い意識と意志を持つことが、とても重要だと思うよ・・

記者会見が終わってから、ミハイロと立ち話をしたのだけれど、そんな私の言葉をなぞるように、ミハイロが応えた。

・・そう、その通り・・シーズンは長いし、ここから気持ちを新たに、チャレンジをつづけるのサ・・

だから私も、こんな本音で応えた。

・・そうだよ・・

・・いまのレッズは、とても優れたサッカーの強いチームだから、焦らず、ステップバイステップで、粘り強い闘いをつづけていきさえすれば、必ず結果はついてくる・・

そして、ミハイロも・・

・・そうさ・・そのことについてはオレも確信しているよ・・

・・でも、こんな結果の後だから、そのことを強く主張するわけにゃいかないよな・・でも、このネガティブな刺激は、必ず次のステップアップのキッカケになると思っているのサ・・

そこには、「脅威と機会は表裏一体」という普遍的コンセプトが息づいていた。

たしかに今日は、フレッシュなジュビロ選手たちがブチかます、軽快な攻守ハードワークに、ゲームのイニシアチブを握られる時間帯もあった。

とはいっても、実質的な「勝負の流れ」という視点じゃ、やっぱり、レッズに一日以上の長がある。

それは、シュートチャンスを創りだす「スペース攻略の量と質・・」とも言い換えられる。

そう、強烈な意志の守備ハードワークによってイニシアチブは握ったジュビロだったけれど、スペース攻略という視点では、明確に、レッズに分があったんだよ。

うまくスペースを攻略できないジュビロ。

だから、川又堅碁の高さやパワー、アダイウトンのスピードやテクニックに頼るような、アバウトなタテパスやクロス、ゴリ押しの勝負ドリブルなどで、力業(ちからわざ)の勝負を仕掛けていくっちゅうわけだ。

それじゃ、レッズ守備にとっては、ちっとも怖くない。

だから、そんなタテへの「力業」の仕掛けを、しっかりと受け止め、奪い返したボールを、ズバッと、タテの決定的スペースへ送り込んだりする。

そう、必殺の「一発カウンター」。

もちろん「そこ」には、スリートップ(興梠慎三、武藤雄樹、李忠成)の誰かが、走り抜けている。

たしかにオフサイドになるシーンも多かったけれど、何度かは、観ている者を「ハッ!」とさせるチャンスにつながった。

でも実際の勝負の流れは・・

そう、「あの」先制失点と、前半43分に飛び出した阿部勇樹の同点ゴールという、大きなゲーム展開の「揺動」があったんだよ。

そして入った後半。ペースを上げ、ゲームのイニシアチブを奪い返しはじめたレッズが、勝ち越しゴールをブチ込むんだ。後半11分。

フィニッシャーは、また阿部勇樹。素晴らしい、ダイレクトパス・コンビネーションだった。

そしてその後は、(ジュビロ名波浩も認めていたように・・)レッズが、持てる実力を存分に魅せつけ、何度もジュビロ守備ブロックの穴(スペース)を攻略してチャンスを創りだちゃうんだ。

そんな後半のゲームの流れを体感していた観客だったから、誰一人として、その後の劇的な勝負ドラマをイメージした人はいなかったに違いない。

それほど、レッズとジュビロの、サッカーの「質的な差」が明白になっていったんだよ。

でも・・

まあ、これ以降の勝負ドラマについては、「タラレバ感性」に大きく左右されちゃうだろうから、書きたくないね。

ジュビロ同点ゴールだけじゃなく、その後の3点目、4点目も含め、そこで展開された勝負ドラマは、戦術的な「意味づけ」をするには、あまりにも低次元の出来事だったと思うわけさ。

だから、多くは語りたくないけれど、それでも、アダイウトンに素晴らしく冷静に蹴り込まれた「あの」同点ゴール以降、レッズ守備の、人数&ポジショニングバランスが、急に不安定になったコトだけはピックアップしようかな。

選手たちも、サッカーの内容的に、「あの時点まで」は、自分たちが負けるはずがない・・と、確信していたに違いない。

そんななかで起きた「事件」だったから、心理・精神的に立ち直れなかった・・ということだったのかもしれない。

だから、攻撃に出て行き過ぎたり、カバーリングに戻り遅れたり、ボールウォッチャーになって、背後スペースで相手をフリーにしちゃったり・・等など。

まあ、仕方ない。

ということで、冒頭の(ミハイロと交わした会話の!)ニュアンスに戻るけれど・・

そう、「脅威と機会は表裏一体・・」という普遍的コンセプト。

いまのレッズは、とても優れたサッカーを展開する強いチームへと成長をつづけているんだよ。

だからこそ、地道に、着実に、リーグでの闘いをリカバーできると確信するわけさ。

それもまた、(現場にとって!)とても魅力的なチャレンジだよね。

とにかく、これからだよ、これから・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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