湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー

 

第29節(2016年9月17日、土曜日)

 

まさに勝者メンタリティーの炸裂ってな感じの逆転勝利だった・・(FC東京vsレッズ、1-3)

 

レビュー
 
さて、何から書きはじめましょうか。

テーマは、レッズ側からも、FC東京側からも、いろいろとありますよね。

でもまあ、まずは、レッズを応援している(彼らのサッカーコノテーション=言外に含蓄される意味=を支持している)一人のサッカージャーナリストとして、斜に構えるのではなく、素直に、結果を喜びましょうかね。

何といっても、ターゲットは、年間の勝ち点チャンピオンだから・・ね。

このテーマについては、例によっての末尾コメントをご参照あれ。

ということで、ゲームの流れを追いながら、あまり長くならないようにテーマを抽出し、それらを簡潔にまとめようと(は)思っています。へへっ・・

ということで、まず・・

そう、何といっても、立ち上がりからFC東京がブチかましつづけた、素晴らしく積極的なハイプレスサッカーを高く評価しなきゃいけない。

私は(多分ミハイロも!?)、FC東京がブチかましつづけた、リスクチャレンジマインド満載の積極プレスサッカーに対して、素直に拍手していましたよ。

とにかくレッズは、そんな連動ハイプレスに、いつものように、後方で、落ち着いてゲームを組み立てることがままならなかったんだから・・。

ということで、全体的なゲームの流れは、もちろんFC東京が牛耳っていた・・でも・・

そう、イニシアチブを握るFC東京だったけれど、なかなか、流れのなかからチャンスを作り出せないんだよ。まあ、二度、三度と、ショートカウンターシーンはあったけれど・・さ。

そんななかで東京は、相手(レッズ)のイージーミスから、決定的なショートカウンターをブチかまし、そこから、まさに決定的なシュートシーンを創りだしちゃうんだ。

主役は、レッズGKの西川周作。

彼のキックミスからショートカウンターをブチかまされたんだよ。でも、その決定的なシュートを、スーパーセーブで弾き出したのも彼だった。

もしかしたら西川周作は、意図的に「テメーの見せ場」を創りだそうとしていたりして・・

へへっ・・そんなワキャね〜よな。

とにかく西川周作は、「あの」ミスキックシーンについては、真摯に反省しなきゃいけませんよ。ホントだよ・・。

でも、その西川周作は、そのミスキックの10分ほど前には、最前線にポジションを取る武藤雄樹への決定的な一発ロングパスを決めた。

そのビッグチャンスでは、武藤雄樹の放ったシュートが相手に当たり、ピタリとズラタンの眼前スペースに流れたんだ。

誰もが「アッ・・ゴールだっ!!」と、フリーズした瞬間。でも、シュートは、サイドネットの外側を直撃しちゃった。

それ以外にも、カウンター気味の攻めから、関根貴大や駒井善成が送り込んだ鋭いクロスで、決定的チャンスの流れ(雰囲気)が創りだされた。

要は、たしかに前半のFC東京は、ゲームの流れは支配していたけれど、チャンスメイクの量と質という視点では、レッズに軍配が上がっていたというわけだ。

でも・・

そう、後半の立ち上がり3分に、森重真人が、先制のPKを決めてから、ゲームの流れが、風雲急を告げることになる。

そこから、様々な意味合いの「戦術コンテンツを内包するドラマ」が繰り広げられたんだよ。

まず、レッズ。

先制ゴールを奪われた彼らの仕掛けの勢いは、まさに、(単車のギアを!)三つほど「シフトダウン」して急加速をはじめたっちゅう感じ。

とにかく私は、その、ダイナミズムが高揚していくプロセスの内実は、あまり例がない程の急激なモノだったと感じていたんだ。

後で書くけれど、その先制ゴールの後(レッズの急加速を体感したことで!?)、FC東京は、ディフェンスブロックを「固める」ような勝負ゲーム戦術を執ってきた。

それまでの「前からプレス」で、まさに鬼神の存在感をブチかましていた中島翔哉と河野広貴を、ディフェンスクオリティーの高い選手と交代させたんだよ。

その是非については、まあ結果論ではあるけれど、後から、私なりの分析だけは主張します。

ということで守備を固められたレッズの、シフトダウン急加速。

でも私の心のなかでは、そんな彼らの「急加速」を体感しながらも、心配の方が先に立っていたんだ。

これまで何度もあったように、守備ブロックを固める相手に、仕掛けの勢いを殺がれて攻めあぐんでしまうかしれないという、一抹の不安がよぎっていたんだ。

でも・・

そう、この日のレッズの仕掛けの勢いは、レベルを超えていた。

何度も、サイドからの崩しと決定的クロスからチャンスを創りだしたんだ。

あれ程センターゾーンを「人数を掛けて固められて」いたわけだから、そりゃ、クロスボールが効果的だよ。

相手ディフェンスは、人数を多く掛けているからからこそ、最後の瞬間におけるマーキングが徹底されないという皮肉なケースに苛まれるっちゅうわけだ。

そして・・

そう李忠成の同点ヘディングゴールと、(関根貴大が飛び込んだからこその!!)相手自殺点による勝ち越しゴール。

あっと、その前には、ズラタンの決定的ヘディングシーンもあったね。

その、李忠成と関根貴大のゴールシーンとズラタンの決定的ヘディングシーンだけれど、そこで走り込んだ三人は、「ボールサイド側」に、相手よりもアタマ一つ前へ出ていた。

それ(アタマ一つ前へ出ていること!)こそが決定的に重要な意味をもっているんだよ。

興梠慎三がブチ込んだ、ダメ押しの3点目シーンでも、後方から走り込んでくる興梠慎三へのマークが、まったく機能していなかった。

FC東京の守備ブロックは、(人数が余っていたから!?)マークが甘くなってしまった!?

さて〜〜・・

実際は、どうだったんだろうね。このテーマについては、ビデオを見返してから分析を深めることにしましょう。

ハナシが、ちょっと逸れるけれど・・

いま、新連載「The Core Column」で新しいテーマのコラムを書きはじめているんですよ。テーマは、攻守にわたる、結果を出すために決定的に重要になってくる「小さなコト」。

そこでのディスカッションでも、このシーンの分析が役立つかもしれない・・。

あっと・・

ということで、最後に、FC東京の、戦術的な交替についても一言。

断っておくけれど、このディスカッションは、結果を受けてのモノじゃないよ。

そうではなく、全体的な「ディフェンス傾向の変化」という視点で、分析したいんだよ。

FC東京の篠田善之監督は、「あのまま」では、中島翔哉にしても河野広貴にしてもプレスエネルギーが枯渇してしまうから、いつかは交替しなきゃいけない・・という判断だったらしい。

でも・・

私は、その交替のタイミングが早すぎたこと・・と、その交替によって、それまでの、チーム全体の「ボール奪取プロセスイメージ」の統一感が乱れてしまったと思っているんだよ。

要は、それまでの「前からプレスによるアグレッシブなボール奪取プロセス」が、急に、リトリートした「受け」の雰囲気になってしまったということ。

そりゃ、チームの全体的な守備イメージのシンクロ状況に支障をきたしてしまうはずだ。

何といっても守備は、チェイス&チェックや、ボールがないところでの勝負プレーなど、すべての守備アクションが、有機的に連動(連鎖)しなきゃ、うまく機能しないわけだからね。

だから、それまでの「守備のイメージング傾向」がガラリと変化したことで、チーム全体の「連動性メカニズム」に乱れが生じたかもしれない・・と思っているわけさ。

そうそう・・

それに、守備ブロックを「厚く」するタイミングも、早すぎたかもしれない・・とも感じる。

もう少し我慢して、アグレッシブなボール奪取プロセスをつづけていたら、レッズの「反抗エネルギー」も、あれほどスムーズに高揚していかなかったかもしれないよね。

まあ、タラレバ・・ではあるけれど・・さ。

もし「あのまま」FC東京が勝利を収めていたら、「あの采配」は素晴らしかった・・ってなことになるわけだからサ。

ホント、サッカーって、たまに、想像を絶するほどアンロジカルで理不尽な様相を呈するよな。そう、サッカー神様のスクリプト。

フンッ・・

ということで、来週の日曜日は、サンフレッチェとの勝負マッチだね。いまから、楽しみで仕方ありませんよ。

では、今日は、こんなところで・・


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あっと・・

私が愛用しているウエストポーチやバックパックについて、何人かの方から質問されたこともあって、友人のデザイナーが主催するブランド、「METAS」のプロモートをさせてもらうことにしました。

この方は、有名メーカーのデザイナーから独立し、自らのブランドを立ち上げました。シンプルイズベスト・・スローライフ・・などなど、魅力的なキーワードを内包する「METAS」


とてもシンプル。でも、その機能性は、もう最高。お薦めしまっせ。

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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