湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第17節(2016年6月25日、土曜日)

 

美しく(そして粘り強く)勝ち切るサッカーが甦りはじめたレッズ・・(レッズvsヴィッセル、3-1)

 

レビュー
 
今日は、事情があってテレビ観戦。だから、簡単にまとめようと思います。

ということで、テーマは、実効(結果)が期待できる仕掛けシチュエーションの内実・・ってなところですかね。

この試合でも明確に感じたんだけれど、やはり相手(今日はヴィッセル)は、レッズが仕掛ける、ダイレクト(パス)コンビネーションの「狙い目」を、しっかりとイメージして守備に入っていた。

レッズの狙い目。

もちろん、人とボールを活発に動かして決定的スペースを攻略していくことだよ。スペースで、ある程度フリーでボールを持つプレイヤーを演出できれば、即チャンス・・ってわけだ。

相手は、そんなレッズのスペース攻略プロセスを、最高の集中力でイメージしつづけるんだよ。

彼らは、ダイレクトパス・コンビネーションの「リズム」と、ボールがないところでの「人の動き」を、しっかりと抑え切るイメージで試合に臨んでいるんだ。

そんなだから、「このところの」レッズが、シーズン当初のように、スムーズなコンビネーションでチャンスを作り出せなくなっているのも、自然な成りゆきとも言えそうだ。

何せ、「あの」フロンターレやアントラーズ、サンフレッチェにしても、まず意の一番に、レッズが繰り出すダイレクト(パス)コンビネーションを抑制することに集中するんだからね。

この日の相手。智将ネルシーニョに率いられる強豪ヴィッセルもまた、同じようなゲーム戦術で立ち上がった。

だからレッズは、そう簡単にはチャンスを作り出せなかった。でも・・

そう、前半27分に、相手カウンターを寸断してボールを奪い返し、そこから素早く繰り出したショートカウンターが、決定的チャンスにつながるんだ。

そう、興梠慎三の、ゴール前10メートルからのフリーシュート。アレは、ゴールチャンスという視点で、とても惜しいシチュエーションだった。

そして、その5分後におとずれた先制ゴールシーン。

それも「また」、ダイレクト(パス)コンビネーションを基盤に創りだしたチャンスではなく、森脇良太からの一発ロングパスが、オフサイドラインを絶妙タイミングで抜け出した李忠成のアタマにピタリと合ったことで陥れたゴールだった。

ただ、前半ロスタイムのレッズ追加ゴールには、レッズテイストが感じられたかな。

それは、とてもうまく人とボールの動きが連動したパスコンビネーションを基盤にしたチャンスメイク&ゴールだったんだよ。

そして後半。

その立ち上がりに一点を返したヴィッセルの、前への勢い(人数を掛けるリスクチャレンジ姿勢!?)が倍増したことで、逆にレッズにカウンターチャンスが多くめぐってくることになる。

ここで、もう一つ、とても興味深い視点を提議したい。

それは、一発ロングパスではなく、タテへの(スペースをつなぐ!)ドリブル主体のカウンター。

そう、柏木陽介の、スピーディーでテクニカルな「タテのスペースをつなぐ」ドリブルが大きなチャンスにつながったシーン。

相手ディフェンスは、柏木陽介がブチかました「タテへの仕掛けの流れ」をスピードダウンさせられず、完璧に「後追い」のディフェンスに終始させられちゃうんだ。

それでもヴィッセル守備は、最後のところでは、集中して潰すことができたけれど・・ね。

まあ、逆から言えば、あのチャンスの流れに「乗った」レッズ選手の数が足りなかったとも言える・・ね。だからヴィッセル守備が、最後の勝負所で、ピンチを逃れられたわけさ。

その、最後の勝負所・・

ヴィッセル守備は、柏木陽介がブチかます「そのままの勢い」を保ったドリブルシュートだけじゃなく、ズラタンなどがイメージした、ラストパスを、しっかりと潰せたんだよ。

だからこそ、(カウンターの流れに乗ってくる人数を増やすことで!?)攻め手の可能性を、一つでも広げられていたら・・と、残念に感じていたっちゅうわけさ。

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さて、後期。

もちろんレッズが(ミハイロ・ペトロヴィッチが)志向するサッカーのベクトルは、まったく変える必要はありません。

いや、変えて欲しくない。

勝てなくなったことで様々なフラストレーションが溜まるのは分かるけれど、それでもレッズが、いまの攻撃的な姿勢(美しく勝つ・・というベクトル!)から外れたら、もうレッズじゃなくなっちゃう。

このテーマについては、先日の「第13節FC東京戦」で書いたコラムも、ご参照アレ。

また、レッズが志向するサッカーという概観テーマについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してくださいネ。

あっと・・、後期のリーグ展開については、こんな視点もあったっけ。

それは、今シーズンのレッズが、とても早いタイミングで「壁」にぶち当たったコト。

もちろん、相手のゲーム戦術に「はめ込まれた」っちゅう、ジリ貧ゲームのことだよ。

でも彼らは、ダイレクト(パス)コ ンビネーションとサイドからのクロス攻撃だけじゃなく、ドリブル突破やミドルシュート、一発のロング勝負パスや、アーリークロスなど、仕掛けに変化をつけ ることで、また、粘り強い(忍耐強い)勝負サッカー「も」推し進めることで、しっかりと、「勝ち切るマインド」を取り戻しつつあると思う。

そう、それこそが、後期に向けて、チーム全体が共有しなきゃいけない、とても大事なマインド(勝者メンタリティー!?)だと思うわけだ。

とにかく、これまでと同じ「攻撃的サッカー」に、より質実剛健なファクターを積み重ねていく・・という強い意志が大事だね。

この「質実剛健ファクター」については、これから(一年間を通した!!)シーズンが進んでいくなかで、徐々に具体的に表現していこうと思います。

とにかく、これからだ。

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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