湯浅健二の「J」ワンポイント


2015年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第10節(2015年6月3日、水曜日)

 

レイソル吉田達磨さんは、とても良い仕事をしている・・またレッズのミハイロ・ペトロヴィッチも・・だから、ものすごく高質なエキサイティングマッチになった!!・・(レイソルvsレッズ、3-3)

 

レビュー
 
・・何で、アタックしないんだ〜っ!!・・

そのとき、武藤雄樹がジェスチャーでブチかました意志と同じように(!?)、橋本和の「意志のないアリバイアクション」に対して、罵声を飛ばしていた。

要は・・

・・そこにパスが来るのが分かっているのに・・ボール奪取アタックを仕掛けようと思えば、距離的にも、タイミング的にも「行けた」のに・・また、もし「そこ」でボールを奪い返せたら、完璧なカウンターチャンスが訪れるのに・・

・・ってなビッグチャンスだったにもかかわらず、橋本和が、相手パスレシーバーに対して、例の「トンコ・・トンコ・・」っちゅう「緩い寄せ」をしただけだったんだよ。

もちろん武藤雄樹は、次の相手アクションや、ボールを奪い返したトコロからの必殺カウンターをイメージし、フルパワーの勢いでベストポジションへ入っていた。でも・・

そう、橋本和は、武藤雄樹が描いていたに違いない「ボール奪取アタックアクション」を起こすことなく、単に、相手のボールホルダー(パスレシーバー)へ、緩い勢いで近寄っていっただけだった。

そして私は、そんな「意志のないプレー姿勢」に、腹を立てていた。

いつも書いている通り、「勝負に行かなければミスをしない」というのも、サッカーの、基本的なメカニズムなんだよ。でも、それじゃ、何も生み出せない。だからこそ・・なのに。

橋本和は、ロングボール主体の組み立てや、正確で危険なクロスボールでは、素晴らしい存在感を魅せる。

でも彼のスタートラインは、ディフェンダー。基本は、強烈な意志をもって、相手からボールを奪い返すことなんだ。にもかかわらず・・。

フ〜〜・・

それに対して、槙野智章。

誰が観ても、このゲームでの彼は、まさにスーパーディフェンダーだった。

彼が何度もブチかました、ギリギリ危急状況での、相手ボールホルダーに対する(シュートや決定的パスをブロックする!)必殺スライディングに鳥肌が立った。

また、タイミングの良い攻撃参加では、次のディフェンスという意味合いでも、まさに質実剛健なリスクチャレンジを魅せた。

それは、攻守のバランスを考えながらのリスクチャレンジ(阿部勇気のバックアップを基盤にしたタテのポジションチェンジ!)だったという意味だけれど、そこには深いコノテーション(言外に含蓄される意味!)が内包されているわけだ。

___________

あっと、ゲーム。

まず、何といっても、レイソルが展開した素晴らしいサッカーを賞賛しなきゃいけない。

彼らは、攻守にわたって、本当に優れた「意志のプレー」を魅せつづけたんだ。だからこそ、冒頭で書いた橋本和の「緩いプレー」に対して、余計に腹が立っちゃうっちゅうわけだ。

少しコラム執筆の気合いは乗ってきたけれど、でもまだ今は「プロヴィデンス時間」にドップリ浸かっている筆者だから、そんなレイソルの素晴らしい「意志のサッカー」を、より深くひも解いていくエネルギーは・・ない。面目ありません。

でも、記者会見では、吉田達磨さんに、こんなコトを「語って」しまった筆者なのだ。へへっ・・

・・いままでの質問で指摘されていたように、レイソルは素晴らしいサッカーを展開した・・いや、今シーズンを通してのサッカー内容は、とても充実しているし発展しているとも思う・・

・・でも、たしかにaclでは結果を残しているが、リーグでは結果に恵まれていない・・

・・サッカーだから、内容と結果の相克というテーマは避けて通れないけれど、ここでは、最終シーンでの集中力というテーマについてコメントをいただきいたい・・

・・レッズ先制ゴールのシーンは(梅崎司にタテへ抜け出され、そこに決定的パスを通されてしまった!)、レイソル守備のイメージ的なミスだと思う・・レイソル守備が、そのシーンでの決定的スペースを、しっかりとイメージ出来ていなかったということだ・・

・・今シーズンのレイソルが、サッカーの素晴らしい内容に結果がフェアに伴っていないことの主な要因は、そんな、ほんの小さなトコロでの集中力の欠如にあるとは考えられないだろうか?・・

フ〜〜・・やっぱり長い。スミマセンね、吉田達磨さん。

でも彼は、そんな(語るタイプの!?)質問にも、例によって真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

・・わたしも、そう思います・・最後の集中力をもっとトレーニングしなければいけない・・

・・たしかに、ノーマルな状況では、しっかりと対応できていたと思う・・でも、ゲームの立ち上がりとか、疲れが溜まってくる試合終了間際とか(武藤雄樹の同点ゴールシーンをイメージ!?)、そこでの集中力が最高レベルだったかといえば、自信がない・・

・・そう、体力的、心理・精神的に厳しい状況下でもしっかりと対応できる・・そこでは、互いに声を掛け合うなどの、ギリギリの効果的コミュニケーションも大事だ・・

・・それは、互いに「感じ合えている」こととも表現できそうだ・・そしてそれこそが、(内容と結果をシンクロさせるために!?)とても、とても大事なファクターだと思う・・

・・100%以上の集中力・・それを、限界領域の厳しい危急状況でも維持できる・・そんなチーム総合力を高めていくことこそが、我々のターゲットということだ・・

フムフム。いいね、吉田拓磨。これからも、彼が、良くなっているレイソルをどのように引っ張っていくのか、注目しましょう。

___________

あっと・・。ということでレッズ。

冒頭でも匂わせたとおり、また記者会見でミハイロも認めていた通り、このゲームでのレッズ守備ブロックには、少しだけ、安定感が欠けていたと思う。

もちろん、槙野智章や阿部勇樹といった「重心プレイヤー」の内容は安定しているから、大きく「破綻」するなんてコトは起きないけれど、その要因としては、やはり、バックアップ選手がチカラを100%発揮できていないというポイントを挙げざるを得ないかもしれない。

私が言っているのは、前述した、吉田達磨さんとの対話でテーマにした、最高テンションに包まれた危急状況でのディフェンス集中力のことです。

そこで、一人でも足が止まった様子見になったり、周りとのコミュニケーションが十分ではなかったりしたら、そりゃ、全体的な守備ブロックの機能性はダウンするでしょ。

何せ、ディフェンスでは、本物の組織コンビネーション(勝負イメージのシンクロ状態)が求められるわけだからね。

一人では何もできない。だからこそ・・

・・チェイス&チェックを絶対的なベースに、周りが、そのアクションに連動する・・っちゅうわけだ。

まあ、守備については、帰宅してからビデオで確認することにしよう。

でも攻撃では、ミハイロが胸を張っていたように、積極的な意志が、光り輝くシーンも多かった。

そこでは、レッズのサッカーが、どんどん高みへ向かっているコトを再認識できた。とてもハッピーだった。なかでも・・

・・レッズ選手たちの、ボールがないところでの動きの量と質が抜群だった・・

・・別な表現をすれば、忠実にスタートし、「走り抜ける」ことに対する意志がとても強いということ・・だからこそチームメイトとの質実剛健な信頼関係を築き上げられる・・そして、だからこそ、スペースパスが出るし、「そこ」に誰かが走り込んでいる・・

・・そんな、ボールがないところでの動きの量と質がハイレベルだからこそ、ダイレクトのコンビネーションプレーも冴えわたる・・

・・そう、レッズの攻撃では、本当に頻繁に「スペースパス・コンビネーション」が飛び出してくるんだよ・・

・・何度、中盤でのレイソルの協力プレスを、「トントント〜ン」っちゅうリズミカルなダイレクトパスでかわし、彼らの背後スペースを攻略しちゃうような創造性コンビネーションを魅せたことか・・

ことほど左様に、いまのレッズの仕掛けには、組織サッカーのエッセンスが詰め込まれているんだよ。

もちろんサイドゾーンを中心に仕掛けてはいくけれど、それも、タテ方向のポジションチェンジや、大きく正確なサイドチェンジを効果的に活用したモノだから、そりゃ、魅力的だし、危険きわまりない。

とにかく、着実にレッズが進化&深化していることを体感できたことで、眠気と闘いながらのコラム執筆をつづけられたっちゅうわけだ。

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・なんていう「興行」について。

既にメディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。

でも・・ね・・

皆さんもご存じのように、レッズは、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』にならなきゃいけないんだよ。

以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。

その後のトーナメントは、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。

だから、レッズは、そして皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。いかに、2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかが分かりますよ。

そろそろ、気が遠くなり始めた。推敲は、もう、まったく無し。テニオハの間違い、変な文章、誤字脱字、ご容赦・・。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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