湯浅健二の「J」ワンポイント


2014年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第7節(2014年4月12日、土曜日)

 

今日も二試合をレポート・・(マリノスvsベガルタ、 0-2)(グランパスvsレッズ、 1-2)

 

レビュー
 
さて、まず、スタジアム観戦した「マリノス対ベガルタ」から。

ベガルタが(順当に!?)奪い取った、内容からすれば「フェア」なアウェー勝ち点「3」というのが妥当な評価だろうね。

とにかくベガルタは、持てるチカラを、限界「近く」まで出し切った。

もちろん、エネルギーの多くは守備に費やされたわけだけれど、アーノルド監督からチームを引き継いだ渡邉晋監督が言うように、素早く効果的な「攻守の切り替え」をベースに、次の攻撃でも、立派なリスクチャレンジを展開したと思う。

たしかに、流れのなかで、「あの」マリノスの堅いディフェンスブロックを崩すのは(スペースを攻略するのは)難しかっただろうけれど、彼らの集中力と闘う意志は天井知らずだから、観ているこちらも、とても楽しめた。

そして後半、最高の集中力(意志)で、以前FC東京で活躍した赤嶺真吾が、セットプレーから二つのゴールをゲットした。

赤嶺真吾。たしかに上手くはない。でも、その汗かきハードワークを厭(いと)わない素晴らしい闘う意志は、賞賛に値する。

また、同じように、太田吉彰が魅せつづけた、強烈な意志を爆発させる攻守のハードワークと、仕掛けチャンスにブチかまし続けた、失敗を恐れないリスクチャレンジの姿勢は、まさにイメージリーダーと呼ぶに相応しい。

ところで、その太田吉彰。ベガルタがゴールを奪うたびに、ベンチの渡邉晋監督と抱き合っていた。そのシーンにも、選手たちの、渡邉晋監督に対する確かな信頼感を感じたものです。

そういえば・・

ある記者の方が、主力として期待されている(いた!?)マグリンチィが、先発に名を連ねていないだけじゃなくベンチにも座っていなかったことについて渡邉晋監督に質問したのですが、彼は、屹然(きつぜん)と、こんな一言をコメントした。

「それは、単に、私の判断と決断です・・」

立派じゃないか。その話し方、内容も含め、とても優れたプロコーチだと思った。

そう、優れたインテリジェンスとパーソナリティーを感じたんだよ。

不確実なサッカーは、意志のボールゲームとも表現できるからネ。

だからこそ、監督と選手の間に、深い信頼関係が成り立っていなければ、その意志を活性化させることなんて出来るはずがない。

その意味でも、これからのベガルタの逆襲にも注視しよう。

ところで、前半のゲーム内容だけれど・・

そこでは、全体的に、倦怠感あふれる雰囲気が支配していたよね。

もちろん、前言撤回するわけじゃなく、とても立派なサッカーを展開したベガルタにしても、その「倦怠の雰囲気」に呑み込まれていたんだよ。

もちろん、観戦していた誰もが、同じような倦怠感に包まれていたに違いない。

その雰囲気だけれど、それは、具体的には、攻守にわたるボールがないところでのプレーの量と質に、如実に現れてくるんだよ。

例えば、フリーランニング。

たしかに、小さな可能性に懸けて走りはするけれど、それは、表面的な「義務感」から。主体的で強固な「意志」は感じられない。

だから、途中で、そのフリーランニングの勢いが、急激にダウンしちゃう。そう、「どうせ勝負パスなんて来やしないよ・・」なんていう意識が、ミエミエなんだ。

だから、それは「アリバイフリーランニング」というわけだ。

私は、そんな雰囲気を感じるたびに、昔のことを思い出す。

そう、ヘネス・ヴァイスヴァイラーや、リヌス・ミケルス。彼らは、そんな雰囲気を感じたとき、まさに瞬間湯沸かし器のように、強烈な「怒りのオーラ」をブチかますんだよ。

「フザケルナよ〜っ!!」ってね。

前半のゲームを観ながら、そんな「強烈な刺激」を、とても懐かしく思いだしたものでした。

たしかに後半は、それなりに白熱していったけれど、それでも私は、「もっと出来る・・もっと、リスクへチャレンジしていける・・もっと(攻守にわたる!)ボールがないところでの動きの量と質をアップさせられる・・!!!」なんて、心のなかで叫んでいたっけ。

ちょっと蛇足だったけれど、そんな不満を抑え切れなかったことも、書き添えておきます。

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さて、これから、グランパス対レッズのビデオを観ることにします。

後で〜・・

・・さて、ということで・・

それにしても、すごかったネ〜。久しぶりに、サッカーの内容と結果を、「強引に!?」一致させてしまったレッズ・・ってな感じ。

ホント、素晴らしかった。

ゲームの流れを牛耳り、そして、一発ロング(勝負)パスやサイドチェンジ(勝負)パス、素早い(タテへの)勝負コンビネーション、はたまたドリブル突破などを、変幻自在にミックスされつづける(要は変化が満載の)仕掛けプロセスによって、繰り返しチャンスも作りだした。

もちろん、それは、グランパス守備ブロックを(その決定的スペースを)攻略しつづけたことを意味する。

だから、ホントに素晴らしかった・・っちゅう形容が相応しいというわけだ。

でも・・サ、その割りには、あの時間帯までゴールを決められなかったという事実は残る。

まあ、それは、これからのプログレス(進化・発展)へ向けた課題ということでしょ。でも、チャンスを決め切れない・・というのは、既に、とても長〜い間の課題でもあったよな〜。フ〜〜・・。

でも、これまで何度も書いたように、攻守にわたって、とても良くなっていることは確かな事実。今シーズンのレッズは、本格的な「ブレイクスルーのベクトル」に乗った・・と感じる。

それにしても、よく勝った。

ゲーム展開では、「あのまま同点で・・」ってな感じではあったからね。

聞くところによると、チャンスの量と質ではリーグ随一だとか。それは、サッカー内容と直接的にリンクしているという意味で、とても重要なポイントだよね。

また、攻守のバランスが良くなっているという、もう一つの重要ポイントがある。

要は、次の守備までイメージして攻め上がるけれど、それで、仕掛けに掛ける人数が「足りなく」なるシーンが、少ないんだよ。

要は、タテのポジションチェンジが、とてもうまく機能しているということだね。

左サイドでは、槙野智章、宇賀神友弥(関根貴大)、原口元気で構成するタテのトリオ。

右サイドでは、森脇良太、梅崎司(平川忠亮)、興梠慎三で構成するタテのトリオ。

もちろん中央ゾーンは、守備的ハーフコンビを中心に、臨機応変に対処する。

あっと・・この守備的ハーフコンビ(柏木陽介、鈴木啓太、阿部勇樹など)の機能性こそが、攻守のバランスという現象の「キモ」だよ。

まあ、柏木陽介はユーティリティープレイヤーだから、どこでも出来るし、鈴木啓太は、中盤のバランサーとしてだけじゃなく、後方からのゲームメイカーとしても存在感を発揮する。

言いたかったことは、彼らが展開する「タテのポジションチェンジとバランシングのイメージ」が、とても進化しているということです。

だからこそ、積極的に攻め上がっても、次の守備で、バランスの崩れることがない。

最後に、もう一丁テーマを・・

それは、攻撃における、優れたメリハリ。

落ち着いた展開(冷静で大きなボールの動き)から、チャンスとなったら、ロング勝負パスやサイドチェンジ勝負パスも駆使し、複数プレイヤーが「同時にアクション」をスタート」させるんだよ。

この試合でも、こんな優れたメリハリが、存在感を発揮した。

とにかく、今年のレッズは「必ずやる」・・と、しつこく繰り返す筆者なのです。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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