湯浅健二の「J」ワンポイント


2013年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第22節(2013年8月24日、土曜日)

 

城福浩とチョウ・キジェとの対話・・いつも、ハイレベルな内容です・・そして、攻守にわたる「一体感」が進化&深化しつづけるレッズ・・(ベルマーレvsヴァンフォーレ、 1-2)(エスパルスvsレッズ、 0-2)

 

レビュー
 
 まず、スタジアム観戦した、ベルマーレvsヴァンフォーレ戦から、簡単に。

 内容的には(相手ディフェンスのウラを攻略して作りだした決定的チャンスの量と質という視点などで・・)、まあベルマーレが勝ってもおかしくなかったというゲームでしたかね。

 もちろん、錯綜した「勝負のアヤ」という視点も含めれば、引き分けが妥当な線だったかもしれないけれどサ・・。

 とにかく、両チームともに、攻守にわたるハードワークを積み重ねる立派なサッカーを展開していたことだけは確かな事実です。

 そう、立派なサッカー。ということで、特に前半は、両チームともに、まったくといっていいほど、ウラの決定的スペースを攻略するようなクリエイティブな仕掛けを繰り出せなかった。

 要は、両ディフェンスともに、相手の決定的パスコンビネーション(次のパスレシーバーの動き出し!)を、しっかりとイメージできていたということです。

 だから、そんな「動的な均衡」状況を打開していくためには、やっぱり、「特別な個のチカラ」が必要なわけだ。

 何せ、両チームともに、まあセットプレーは除き、カウンターへの対処(事前のイメージ作り)も含めて、ボールがないところでの質実剛健なディフェンスアクション(ハードワーク)を魅せつづけていたわけだからね。

 要は、このゲームでは、両チームともに、守備のチカラの方が、攻撃の能力を完全に上回っていたということが言えるわけなんですよ。

 だから、ウラの決定的スペースを攻略するような危険な仕掛けがままならない・・だから可能性の高いシュートチャンスもできない・・

 でも、後半も20分を過ぎたあたりから、ガラリと様相が変化していくんだよ。そう、両チームともに、スルーパス&フリーランニング(または、パスを呼び込むフリーランニング&スルーパス!?)というコンビネーションが機能しはじめたんだよ。

 その時間帯の攻防では、完全に、ベルマーレが優位に立っていたね。何度か、ホントに決定的なチャンスも作りだしたしね。

 ということで、この時間帯での攻防について、両監督に質問した。

 まず、ヴァンフォーレの城福浩監督。

 ・・前半は、まったくといっていいほど、両チームともに、ウラを攻略でなかったですよね・・それじゃ、チャンスができないのも道理です・・まあ、ゴールは二つも決まったけれど・・それでも、後半の20分を過ぎたあたりからは、大きく状況が変わっていった・・

 ・・ベルマーレの方が多かったとは思うのですが・・コンビネーションで、守備ブロックのウラを攻略するプレーが、俄然、増えたと思うんですよ・・

 ・・やはり後半も半ばを過ぎてくると、疲れからか、意志と集中力がダウンするということなんですかね・・城福さんは、そこのところのメカニズムを、どのように理解されていますか?・・

 ・・そうですね・・その時間帯に入ったら、疲労が蓄積してくることで、特にディフェンスで難しい局面が増えてきますよね・・

 ・・この試合でも、後半の半ば頃からオーブンな展開になっていきました・・だからスペースができるし、そこをうまく使われるシーンが増えてくる・・ベルマーレにスルーパスを決められたシーンでは、ホントにラッキーでした・・

 ・・そんな、スルーパスを決められたシーンですが・・それは、徐々に、相手ボールホルダーへの詰めが甘くなっていったからに他なりません・・わたしは、 相手ボールホルダーに「ヘッドアップさせない」という表現を使うのですが・・この気候条件で、そんな忠実なファーストディフェンスを完璧にこなすのは、と ても難しいですよね・・

 ・・そして、そこからのスルーパスが、フリーランニングにピタリと合う・・そして大ピンチ・・それはたしかに大きな課題です・・何とか、消耗しすぎない ように、走るところと休むところの「メリハリ」を、うまくコントロール出来るくらい集中力を保てればいいのでしょうが・・

 フムフム・・。城福さんは、例によって、とても誠実に応えてくれました。感謝します。

 また、チョウ・キジェ監督に対しては、こんな質問を投げかけた。曰く・・

 ・・このゲームのポイントは、何といっても、後半20分過ぎにベルマーレが作りだしたチャンスですよね・・その時間帯から、急にベルマーレの「ウラ突き コンビネーション」が冴えわたりだした・・そして、高山薫のビッグチャンスも含め、数本、とても可能性の高いチャンスを作りだした・・でも、決め切れな かった・・タラレバじゃなく、そんなとき、チョウさんは、選手たちに、どのように心理アプローチされますか?・・

 ・・昨年のJ2では、ゴール数はトップでした・・わたしは、選手に対して、偶然ではなく必然のチャンスメイクを求めています・・人数をしっかりと掛 け・・そして、スルーパスとフリーランニングのコンビネーションで仕掛けていく・・もちろん、選手の判断の内容もブラッシュアップしなければなりませんが ね・・

 ・・いまのご質問の背景として、わたしは、こんなニュアンスも聞き取りました・・プロセスは「うまく成立」しているからオーケーというのではなく、監督として、常に結果も求め続けなければならない・・それこそが、監督として必須の姿勢だと・・わたしも、そう思います・・

 ・・チャンスを多く作りだした・・ただ、そのプロセスが良かったから「満足」というのではなく・・そこから先の結果までも、しつこく追求しつづけること が大事だと・・高山薫は、チャンスを逃したことを、とても悔しがっていた・・彼は、更衣室で泣いていたんですよ・・わたしは、そんな悔しさの体感こそが大 事だと思っています・・そして、監督の「姿勢」も・・

 いいネ、城福浩とチョウ・キジェ。この二人との記者会見は、いつも、本当に「中身」があるし、自分にとっても勉強になります。どうも有難うございます。

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 ということで、エスパルス対レッズ。

 私が、ブラジル、ドイツと日本を離れていた2ヶ月の間、聞くところによると、レッズが調子を落としていた時期もあったとか。でも私が帰国してからは、これで三勝一敗。フム〜・・

 鈴木啓太がケガで戦列を離れていたことも大きく影響した・・なんてことを、知り合いのジャーナリストの方が言っていたっけ。

 そう・・鈴木啓太。

 こんなに大幅なイメチェンを果たしたサッカープレイヤーも、ホントにめずらしい。そのことについては、もう何度も、何度もコラムで言及したっけね。それにしても、この試合でも、自信にあふれたハードワーカー&創造的ゲームメイカーぶりが目立ちに目立っていた。

 中盤での守備ハードワーク(チェイス&チェック、カバーリング、忠実マーク・・等など)にしても、以前よりも、よりスマートに「実効レベル」をアップさせていると感じるしネ。

 そんな啓太が、ゲームメイクでもチームから深く信頼されるようになっている。フ〜〜・・

 とにかく私は、中村俊輔と鈴木啓太の「プレー内容の(意識と意志の!?)変遷」について、とても興味があるんだよ。彼らが引退したら、是非、このテーマについて対談したいね。

 そんな鈴木啓太と阿部勇樹のセンターハーフコンビが、攻守の「重心」として素晴らしい機能性を魅せつづけるレッズの(そのサッカー内容の)躍進ぶりには、本当にワクワクさせられる。

 この試合でも、素晴らしい2ゴールを決め、その後は、まさに王者の貫禄で、エスパルス攻撃を、余裕をもって抑え込んだ。

 レッズのコンセプトは、もちろん、全員守備、全員攻撃だよ。

 そのために、チーム内での、攻守ハードワークに対する「相互信頼」を浸透させなきゃいけない。そのテーマでも、ミハイロの功績は、ものすごく大きいよね。

 もちろんチーム戦術の浸透ワーク(心理マネージメント)も優れているし、鈴木啓太に代表される、「自信を確立し深化させる心理マネージメントのウデ」でも、特別な能力を発揮している。

 まあ、ミハイロ・ペトロヴィッチについては、また別の機会に取りあげよう・・というか、今度トレーニングを見学しに行ったときに話してみよう。

 あっと・・全員守備、全員攻撃・・

 それについては、攻守にわたって、できるかぎり多くのシーンで、常に「数的に優位な状況」を作りだす・・っちゅう表現も、アリですかね・・

 とにかく、相手にボールを奪われた次の瞬間からはじまる守備では、誰ひとりとしてサボらない。「あの」原口元気にしても、完全にイメチェンを果たしてしまった。

 まあ、彼の場合は、まだまだ、無為に(意志が減退して!?)足を止めちゃうこともあるけれど、まあ、それにしても、「行く」ところと「休む」ところの「優れたメリハリ」・・なんていう具合に、ポジティブに受容できちゃうこともあるんだから、驚いちゃうよ。

 それも、これも、原口元気のディフェンスが大きく進化したからに他ならない。まあ、ミハイロの「ストロングハンドぶり」には脱帽だね。

 その「全員守備」だけれど、2列目の3人はもちろんのこと、ワントップの興梠慎三にしても、ガンガンとボールを追いかけ回すことで、後方の味方とタテにポジションチェンジしちゃうことだってあるんだよ。

 それでも、次の攻撃じゃ、気が付かないうちに最前線スペースへ飛び出したりしちゃうんだ。

 それと、全員の守備意識が深化しているからこそ、ディフェンダーの前線への飛び出し(オーバーラップ)にも、以前にも増して、強烈な意志エネルギーが注入されていると感じますよ。

 この試合じゃ、両サイドバックのオーバーラップだけじゃなく、最終ラインの「スリー」も、交替に、最前線へ飛び出していったり、後方からのゲーム&チャンスメイクも効果的にこなしていた。

 2点目シーンでの、那須大亮のチャンスメイカーぶりは、もう書く必要なんかないよね。それも、最前線の決定的スペースに「最初に」飛び出していったのは、宇賀神友弥だぜ。

 これじゃ、エスパルス守備陣が、イメージ的に「振り回されてしまう」のも道理だよね。

 以前は、槙野智章のオーバーラップばかりが目立っていたけれど、今じゃ、森脇良太や那須大亮だって、「オレが・・オレが・・」ってな具合に、押し上げるチャンスを狙っている。

 それでも、次の守備組織のバランスが崩れることがない。

 それは、素早い攻守の切り替えを絶対的なベースに、全員の「戻りが忠実で力強い」からに他ならない。もちろん、阿部勇樹と鈴木啓太が、効果的に「タテのポジションチェンジ」をコーディネイトしていることもある。

 とにかく、いまのレッズは、チーム全体が、攻守にわたって、「一つのユニット」として機能している・・なんて表現できちゃうほどの一体感がある。頼もしい。

 さて来週の水曜日には、マリノスとの勝負マッチがある。いまから、楽しみで仕方ありません。


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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