湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第34節(2010年12月4日、土曜日)

 

両監督との対話・・(RvsVI, 0-4)

 

レビュー
 
 「濱田水輝は、オーストリア合宿のときに何試合か、センターバックとしてプレーしたのだが、そこでの内容は、本当に素晴らしいものだった・・彼は、確実にセンターバックをこなせる能力があると、今でも確信している・・ただ、この試合での彼は、何本かの決定的ミスを冒してしまった・・そしてそれがチーム敗戦の大きな要因になってしまった・・その、大きなプレッシャーのなかで起きてしまった決定的ミスについては、彼を起用したわたし一人が責任を負う・・」

 フォルカー・フィンケは、そのことに付随して、「もちろん、この敗戦の要因は、それだけではない・・前半に作り出したチャンスを決め切れなかったこと・・また、もう一つ・・選手は、このシーズンを締めくくる試合で、最高のパフォーマンスを魅せようと張り切っていたわけだが、それが逆効果となって硬(かた)くなり、つまらないミスを繰り返すことになってしまった・・」とも語っていた。

 まあ、この試合の内容的な分析はこのくらいにして、ここからは、二人の監督に投げた質問(テーマ)を掘り下げていくことにしましょうか。もちろん、例によって、行間ニュアンスも含め、私の質問と両監督のコメントは、私なりに編集しちゃいます。悪しからず。

 まず、ヴィッセル神戸の和田昌裕監督に対する質問から・・

 「和田さんは、コメントの冒頭で、奇跡の残留という表現をされた・・たしかに、私もそうだったが、まさに、あり得ないコトが起きたというのが正直な印象だった・・最後まで諦めず、全力を尽くし切る覚悟を強調し、グラウンドに送り出す、とか・・選手も、もちろん最高の闘う意志をもってゲームに臨んだ、といったことはプロとして当たり前のことだと思う・・ただ、深層心理では、やはり、一部残留がとても難しいモノだと誰もが感じていたはず・・でも終わってみれば、そんなネガティブな思いがどこかへ吹っ飛んでしまったかのように、奇跡としか言いようのないサプライズに酔いしれた・・そのことは、多分、ご自身のなかにある『何』かを突き破ることにつながったと思う・・感覚的なハナシなのだが、もし今、思い当たる『何か』があったら教えていただけないだろうか・・」

 後で考えてみたら、とても難しい質問だったよな〜〜・・なんて反省しきりの筆者でした。スミマセンね、和田さん。でも和田昌裕監督は、例によって、とても真摯に応えてくれた。

 そのコメント内容を(私の印象も含めて!)まとめると、こんな感じ。

 ・・本当の奇跡は(他の試合結果も含む)今日のゲームではなく、それ以前に、何度か起きていた・・そこで和田さんは、いくつか、具体的な節と、そこでの降格リーグライバルたちのゲーム結果を挙げた・・それら全てが、ナルホドと頷(うなづ)けるものだった・・けれど私は、そのなかで最もドラマチックな体感だったのは、やっぱり、実際に一部残留を決めたこの最終節マッチで起きたことだと思うわけです・・

 ここで、この質問のテーマを簡単に整理します。要は、たぶん不可能だと、半分(深層心理では)諦めていたコトが、全力を尽くしてチャレンジしつづけるなかで(予想に反して!?)実際に掴み取ることに成功してしまう・・というホンモノの成功体感のことです。

 わたしにも、ドイツ留学時代、読売サッカークラブでコーチしていた頃、その後にはじめたビジネスや、フットボールジャーナリストとして仕事をしていくなかでも、何度か経験がありますよ。

 ・・ダメかもしれない・・そう感じはじめてからの、決して諦めない(まあ・・我を忘れて!?)限界を超えた(150パーセントの!?)闘う意志の活性化と、ギリギリの限界アクションの積み重ね・・そして実際に、「その入魂努力プロセス」に、思いも寄らなかった成果「も」ついてくる・・

 そのときの、『何かを突き破ったような』充実感は、言葉では表現できないよね。その『何か』によって、自分の心の深層にある、自信と確信のリソース(源泉)が、何倍にも拡充されたと感じ、そして実際に、日常の言動にも、その「心理・精神的な源泉によって増幅された!?」自信がポジティブに作用するようになっていった。

 いや・・もちろん・・「自信と過信は紙一重だぜ〜〜ッ!」といったネガティブなコトも、何度も体感しましたよ。でも・・サ、大体はポジティブだったと思う。そんな「体感ベースの自信」によって、どんな相手と対峙したときでも、まず態度に余裕を持てるようになった。もちろん、たまには「コンプレックス・ベースの尊大さ」で大失敗したこともあるけれど・・サ・・あははっ。

 ちょっとハナシが混迷しはじめたように思う。まあ・・心のハナシだからネ・・あははっ。

 まあ、早い話が、今回の「成功体感」によって、選手やコーチングスタッフ、そしてクラブ自体の「自信レベル」が、大きく拡充される可能性が高まったということです。もちろん、その「成功体感」を、しっかりとメンテナンス(心理マネージメント)することで効果的に「増幅」させられれば・・のハナシだけれど・・サ。あっと・・もっと分かり難くなっちゃった!? スミマセン・・

 ということで、ここからは、フォルカー・フィンケとの対話。

 「記者会見場のモニターに映し出されていた、埼スタでのラストマッチセレモニーの様子や、わたしが持っているチャンネルからの情報などを総合したら、いまレッズは、チームとして、とても素晴らしくまとまっているとすること出来ると思う・・それも、指揮官と中心選手が退団することが決定している状況であるにもかかわらず・・ヨーロッパも含め、そのような状況でチームが結束することは希有な現象だと思う・・ということは、チームを一つに結束させる強い要因があったということか・・例えば、チームの共通の敵とか・・もし、そんな共通の敵がいたならば、それが誰だか、教えて欲しい・・また、このままいけば、天皇杯の頂点まで上り詰めることも夢ではないと、本当に心から思ったりするのだが・・」

 「今日は、シーズンのなかで最低の部類に属するゲームだった・・とはいっても、うまくチャンスを作り出せなかったり、チャンスを演出できても最後のシュートでミスするといったネガティブなことが重なったにもかかわらず、選手は、最後まで、悦びをもってプレーしていた・・いまのチームは、徐々に失点が減っているだけではなく、全体的なサッカー内容も進化している・・もちろんそこでは、選手の闘う意志を充実させることで、チームが一丸となって闘えていることが大きい・・この、闘う意志の拡充がもっとも重要なテーマだった・・そして、これから、その充実したチームで天皇杯に臨む・・そこでは、山田暢久やスピラノビッチだけではなく、他の主力選手も復活してくるはずだ・・私自身、天皇杯を、大いに楽しみにしている・・」

 共通の敵・・についてのコメントはなかったね。こちらも「それ以上は」突っ込まなかったけれど・・。まあ、とにかく天皇杯に向け、コーチングスタッフと選手が一体となって、今シーズン限りのチームの総決算を、全力のポジティブマインド(意志)で闘おうとしていることだけはヒシヒシと感じる。

 ところで、今シーズン限りのチーム・・。要は、指揮官の交代が、一旦チームがチャラになることを意味するという事実は、誰にも変えられないということです。そして、その後の展開については、戦術的な継続性も含め、全てが後任監督のウデに拠るということになる。

 フォルカー・フィンケに関する短いコメントについては「第33節コラム」を参照して下さい。私「も」、フォルカー・フィンケの退任については、まったくアグリーじゃないのですよ。もちろん、後任監督が、それなりのウデを持っていればハナシは別だけれど・・ネ。

 このテーマについては、今日のゲーム前に、どこかの携帯サイトかインターネットマガジンのインタビューに答えました。それが「どのメディア」だったか忘れた。申し訳ありませんが、もし「その」編集者の方が「このコラム」を読んだら、ご連絡いただけませんか? 次のコラムで「リンク」しますので・・あははっ・・(ということで編集者の方から返事がありました・・掲載サイトは「携帯サイト・レッズプレス」ということでした・・あははっ・・

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 



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