湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第9節(2010年5月1日、土曜日)

 

レッズは(エスパルスとともに!)とても立派なサッカーを展開した・・けれど・・(SPvsR, 2-1)

 

レビュー
 
 とてもチカラの入ったエキサイティングな熱戦。レッズにとっては、久しぶりの、積極的に「攻め上がってくる相手」とのガチンコ勝負ということになった。

 この試合は、ビデオ観戦。それも、既に夜中の0200AMを回っている。ということで、ポイントだけ手短にまとめることにします。

 両チームとも、決して(失敗したらどうしよう・・なんていう)ネガティブな感覚に囚(とら)われることなく、あくまでも自分たちの「持ち味」を最高のカタチで表現しようとする強い意志をベースに、とても立派なサッカーを展開した。

 攻撃での「持ち味」・・。エスパルスは、最後の最後まで(シュートまで)シンプルな組織プレーを押し通すような仕掛けプロセスに徹するサッカー。それに対してレッズは、組織と個を、うまくミックスさせたサッカーを標榜する。まあ、割合的に、より組織的な最終勝負プロセスを押し出すのがエスパルスで、組織パスによる最終勝負と、個人プレーによる最終勝負がバランスしているのがレッズ・・っちゅう感じですかネ。

 最終勝負(≒シュート)には大きく分けて二種類あります。一つは、送られてくるパスをダイレクトで叩くシュート。もう一つは、(相手を抜き去るような)ドリブルシュートや、パスをトラップし、局面での勝負プレーからシュートまでもっていくような「個人勝負を前面に押し出す」最終勝負。

 クロスボールやスルーパスを、ボールを止めずに、そのままダイレクトで叩けば、相手ディフェンダーとのフィジカルな接触を極力避けることができる。そう・・岡田武史率いる日本代表がイメージする「究極の組織プレーベース」の最終勝負。

 エスパルスの場合、岡崎慎司の「爆発フリーランニング」にラストパスを合わせたり(岡崎慎司のフリーランニングが、ラストパスを呼び込む!)、ヨンセンのヘディングシュートをイメージしたラストクロスを送り込むというイメージの方が、より強調されているというわけです。

 それに対し、組織パスからのダイレクトシュートあり、ドリブルシュートなどの個人勝負プレーあり、はたまたコンビネーションあり・・というのが、レッズの「ミックス・タイプ」。

 そりゃ、総体的にみたら、レッズに一日の長があるのは理の当然だよね。何せ、選択肢が「より」多いわけだから。でもサッカーは、そう簡単にコトを運べない。あははっ・・

 エスパルス選手たちは、より集約したシンプルな仕掛けイメージに徹して最終勝負を繰り出していける。だから、より効果的に「結果」へ近づいていけるケースが多いだろうね。何せ、やること(選択肢)が少なく、そしてプロセスがシンプルなわけだから。

 それに対してレッズは、選択肢が多いからこそ、相手を惑わせるような「変化」も演出できる。でも、複数選手の「最終勝負イメージ」をシンクロさせるのは簡単な作業ではないから、失敗する確率は、確実に高くなる。フムフム・・痛し痒し・・か。

 ・・例えば・・ドリブル突破を仕掛けていくポンテ・・周りは、そのままシュートまで行ってしまうだろうと(パスを受けられる)スペースへ走らずに足を止めてしまう・・ただポンテは、最後の瞬間、パスを出すつもりでドリブルで相手を引きつけていた・・とかネ・・

 もちろん、様々な最終勝負プロセス(仕掛け)のバリエーションイメージが、うまくシンクロしはじめたら、それは「そちらの方」が、より強力で効果的な最終勝負を展開できるよね。何せ「より多くの変化」を、うまく連動させられるわけだから。でも逆にいえば、シンクロレベルが十分ではないと、どうしても最終勝負プロセスが複雑になって、うまく機能させられなくなる・・。

 この試合でのレッズは、ちょっと「複雑になり過ぎ」というプロセスも散見されたね。もっと、サイドチェンジなども含め、シンプルにボールを動かすことで、エスパルスの守備ブロックを振り回すという発想が必要だったのかもしれない。何せ、エスパルスは、ものすごく戻りが早く、常に8人から9人のブロックを組織してしまうんだから。

 そんな、シンプル(組織)プレーと個人勝負プレーのミックスプロセスを、高みでバランスさせるのが難しいのですよ。それに対してエスパルスの場合は、「シンプル」の方が主体だから、より容易に「最終勝負シーン」を連動させられる・・かな・・!?

 そんな「シンプル」の象徴が、言わずと知れた岡崎慎司。

 ホントに、彼の、最終勝負シーンでの瞬間的な動きは素晴らしい。動物的・・とも言える。何度も、何度も、レッズのマーカーを(彼がボールを見た瞬間を狙ってスタートすることで!?)振り切り、そのマーカーや、別のレッズ選手の「眼前スペース」で先にボールに触ってシュートしてしまうのですよ。これから彼のことは、「消える天才」と呼ぶことにしようか。やはり、その感覚的アクションの量と質は、いまのところは確実に「日本一」だね。他にコンテンダーはいない。

 とにかく、レッズが(エスパルスとともに!)立派なゲームを展開したことだけは確かな事実です。決して「うつむく」必要などありません(もちろん現地まで観戦に行かれたレッズファンの方々の帰りの足取りは重かったでしょうが・・)。また、途中から「前戦プレイヤー」として交代出場したサヌも、とても素敵な勝負プレーを魅せてくれたしネ。ケガ人が戻ってくることも含め、これからのレッズに対する期待は、否が応でも高まっていくじゃありませんか。

 何か・・アタマが朦朧(もうろう)としてきた。そろそろ寝ます・・

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 お知らせですが、きたる5月3日の月曜日。NPO法人横浜スポーツコミュニケーションズ(ヨココム)が主催する「湯浅健二の独演会」が、昨年につづいて開催されることになりました。テーマは「岡田ジャパン」・・まあ、「日本人はなぜシュートを打たないのか?」っちゅうテーマにも入っていかざるを得ない!? さて・・。詳しくは「こちら」を参照してください。

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 ところで、三年ぶりに新刊を上梓しました。4月14日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定したらしい。フムフム・・。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。

 



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