湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第4節(2010年3月27日、土曜日)

 

両監督のコメントにスポットを当てました・・また「ヨーロッパからの出戻り組」についても・・(FRvsSP, 0-0)

 

レビュー
 
 「高畠さんのコメントのなかでは、スリートップを活かした攻めというのがキーワードだったと思います・・たぶんそれは、個のチカラを最大限に活かして・・要は、個人勝負を主体にして攻め込むというニュアンスなのでしょうが、いかんせん、その中心的な存在のジュニーニョと、そのスリートップをマネージする中村憲剛がいません・・ということで、なかなかうまくスリートップを活かす攻めが出来ていなかったように思うのですが・・」

 そんなわたしの質問に対し、フロンターレの高畠勉監督が、真摯に、下記のコメントをくれました。

 「スリートップを活かした攻めという表現の意味合いですが、おっしゃるように、ウチのスリートップが秘める個の能力を最大限に活用していくというのが、その骨子です・・例えばキープ力とかタメといった能力をうまく活用し、その間に、サイドバックがオーバーラップしたり、中盤がサポートに押し上げたりするわけです・・」

 「でも、この試合では、チームの中心的な存在を欠いていたことで、スリートップを活かしていこうという意図が、あまりうまく機能しなかった?」

 そんなわたしの追い討ちの質問に対しても、高畑監督は、あくまでも冷静に反応するのですよ。

 「この試合での出来は、そんなに悪いモノだったとは思っていません。前線のプレーがうまく機能しはじめてからは、忠実なサポートやサイド攻撃など、しっかりと攻撃に厚みを持たせられたと思っているのですよ・・」

 あっ・・そうそう、この試合では、後半は、かなり改善されたっけネ。前節のマリノス戦の「悪」イメージがアタマにこびりついていたということなのだろうか・・。「たしかに先週のマリノス戦は悪すぎたよね・・でも、まあこの試合は、少しは良くなっていたと思うよ・・」なんて、記者会見の後に後藤健生さんにも言われてしまった。

 たしかに全体的なゲームの流れからすれば、エスパルスが勝ってもおかしくないという評価が順当だとは思うけれど、もっと突き詰めた、決定的シュートの量と質という「実際的」な評価ポイントについては(後半にフロンターレが巻き返したこともあって)最終的には互角ということになったよネ。だから、まあ・・。

 とはいっても、ジュニーニョと中村憲剛という絶対的なリーダーが不在なのだから、フロンターレは、もっともっと動かなければ(攻守にわたる組織プレーの機能性をアップさせなければ)ならないというのは、確かな事実だと思いますよ。特に前半の出来は、前節のマリノス戦に匹敵するくらいヒドかったからね。

 前半のフロンターレは、守備も甘く、エスパルスと日本代表のエース、岡崎慎司に、二度、三度と、ロングパスを「決定的スペース」でコントロールされてしまったり、右サイドの藤本淳吾にも決定的スペースを使われてしまった(決定的フリーランニングに、後方からのスルーパスを合わされてしまった!)。

 とにかく、チェイス&チェックが甘いから次のボール奪取の勝負所のイメージをアタマに描写できず、後手後手にまわってしまうのですよ。そんなだから、次の攻撃に「勢い」が乗っていくはずがない。そして、例によっての「前後分断サッカー」に陥って足が止まってしまう。そんな展開じゃ、いくらチョン・テセが強力ブルドーザーだとはいっても、うまく「地ならし」出来るはずがない。

 とはいっても、たしかに後半は持ち直した。守備がよくなったことで、次の攻撃も、高畠勉監督がイメージする組織的なモノに近づいていったと思う。本当に良くなった。だから、試合後に高畠勉監督が抱いている「ポジティブなイメージ」はよく分かる。でもネ・・

 マリノス戦だけではなく、この試合の前半の内容を観たら、本当に、ちょっと心配がつのったのですよ。何せサッカーは「究極の心理ゲーム」だからね。小さな「怠惰マインド」が、すぐにでも、雪だるま式に巨大化してしまう。サッカーチームでは、イージーなマインド(怠惰ビールス)は、まさに光速のスピードで拡散していくモノなのですよ。だからこそ、チームの緊張感を、常に「剣が峰」の高みで維持しなければならない。高畠勉監督の手腕に期待しましょう。

 さてエスパルス。指揮を執りはじめて6年目に入った長谷川健太。とても優れたリーダー(パーソナリティー)へと発展し(脱皮し)つづけていると思いますよ。エスパルスのサッカーも、組織プレーと個人プレーが高みでバランスするなど、良くなっているしネ。そこで、今シーズンの彼にとってとても大きなテーマである「小野伸二」について質問してみることにした。

 どこの(サッカー)賢人の言葉だったですかネ・・天才がチームに加入してくることは、監督にとっての大いなるチャレンジャブル・シチュエーション(とても挑戦的な状況)である・・。

 「小野伸二についてお伺いしたい・・欧州のサッカーコーチは、彼のようなタイプを、局面プレイヤーと呼ぶことがある・・要は、攻守にわたる組織プレーでの貢献度はそんなでもないけれど、局面では、とても魅力的なプレーを展開できる選手というニュアンスだ・・彼の周りは、本田拓也、山本真希、兵働昭弘、藤本淳吾、岡崎慎司といったチームプレイヤーで固められている・・だから彼もそこそこ良いプレーが出来ているということなのだろうと思う・・とはいっても、攻守にわたって、彼の仕事量が1.5倍に増えれば、エスパルスのチームパフォーマンスは確実に二倍になると思うのだが・・」

 長谷川健太監督は、とても立派に、そして素敵にコメントしてくれました。あっと・・例によって(前出の高畠勉監督との会話も含めて!)ここで紹介するコメントは、彼らが語ったそのままではなく、「行間のニュアンス」も含めた実質的なコンテンツを私なりにまとめたものです・・

 「小野伸二は、とてもポテンシャルの高い選手・・だから我々も、そのポテンシャルをいかにうまく活用していくのか、また彼のパフォーマンスを、いかに高めていくのかというテーマに取り組んでいる・・そのためには、もちろん自由は与えるが、彼もまた、それに見合ったコトもやらなければならない・・幸い彼は、とても吸収力の高い選手だ(高い学習能力≒優れたインテリジェンス)・・決して、変なカタチで自分の主張を押し通そうとすることはない・・こちらが要求すれば、それに応えようと努力する姿勢をみせてくれるのだ・・彼も考えながらプレーしている・・でも、ちょっと考えすぎたり、気を遣いすぎたりするところがあるかもしれない・・だからたまに、もっと大胆にプレーしてもいいと思えるようなシチュエーションもある・・とにかく、小野伸二について、もっとも大事なポイントは、彼の吸収力が高いという事実だと思う・・だから、こちらも、もっともっと要求していかなければならないし、そのことが、小野伸二をマネージしていくうえで、もっとも重要なポイントだと思う・・」

 良いですね・・ホント・・。この試合での小野伸二は、多くの「局面」で、たしかに魅力的で効果的なプレーを展開できていたネ。たぶん彼も、「周り」のサポートがあってのグッドプレーだと理解していることでしょう。だったら・・もっと・・なんてコトも思うけれど、まあ彼についても「これから」だね。長谷川健太監督に期待しましょう。

 とにかく今シーズンの「J」では、中村俊輔、稲本潤一(稲本潤一は、もっともっと中盤でリーダーシップを発揮しなければダメだぜ!!)、小野伸二といった「出戻り組」が提供してくれる素敵な学習機会を堪能できそうじゃありませんか。フムフム・・

 



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