湯浅健二の「J」ワンポイント


2008年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第15節(2008年7月5日、土曜日)

 

レッズは、脅威をしっかりと機会として活用しなければならない・・(レッズ対FC東京、2-0)

 

レビュー
 
 レッズの勝利については、偶発的な結果だった(ツキに恵まれた)とは決して言いません。

 FC東京の(忠実でダイナミックな組織ディフェンスをベースにした!)怒濤の勢いに、前半15分過ぎあたりからと、後半の多くの時間帯で押し込まれる展開がつづいていたとはいっても、そのなかでFC東京が、レッズ守備ブロックを「振り回して」クリアな決定機を作り出したかといったら、そんなシーンはほとんどなかったわけだからネ(都築龍太が指先ではじき出したスーパーセーブシーンあたりがハイライト!?)。

 とはいっても、FC東京が、攻守にわたって、相変わらずハイレベルな組織プレーを展開していたのは確かな事実でした。ムーヴィングサッカー!? なかなか魅力的だし、観ていて楽しいことこの上ありません。それに、勝負所では、メリハリのある実利的&実際的なゲーム戦術を徹底するなど、しっかりと結果も「引き寄せて」いるしネ。とにかく城福監督は、優れたプロコーチだと思いますよ。

 それでも(前述したように)レッズの守備ブロックを崩し切れなかった(ウラのスペースを突いていけなかった)ことだけではなく、前半立ち上がりの15分くらいまで、FC東京の守備ブロックが、レッズの攻撃に繰り返し「振り回された」ことは確かな事実でした。

 立ち上がりの15分間、レッズは、本当に素晴らしいコンビネーションベースの仕掛けを魅せつづけたのですよ。それは、本当に「久しぶり」といった感触でした。まさに、溜飲が下がるとは、そのことでした。

 そこでは、何といっても、復帰した田中達也の「ボールがないところでの動き」が秀逸だった。ボールの動きを「誘発」する刺激的なムーヴィング! そんな「刺激」によって、周りも(ボールがないところで)動き出すのですよ。

 私は、レッズが前半立ち上がり15分間くらいまでに魅せつづけた仕掛けには、サッカーの本質的な魅力が詰め込まれていると感じていました。

 素早く正確なボールコントロールで相手を翻弄し、そこから「常にタテ方向」への仕掛けのパスが飛ぶ・・もちろん、間髪を入れない爆発パス&ムーブ・・そして「ツーのリターンパス」を出した者も、続けざまに爆発バス&ムーブ・・そんな「全力ダッシュ」が、ボールを媒介にして、有機的に連鎖しつづけ、FC東京ディフェンスブロックのウラスペースを攻略していく・・。あ〜、溜飲が下がる。

 そんな魅力的な(ダイレクト)コンビネーションが有機的に連鎖しつづけるなかで田中達也が抜け出し(もちろんタテのスルーパスが出る!)、そこからの折り返しをエジミウソンがダイレクトでキャノンシュートをブチかますのですよ。先制ゴ〜〜ル!!

 でも、その後がネ〜〜。要は、中盤の攻守にわたるダイナミズムが減退していったということです。

 守備では、相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対する「寄せ」が遅く、また間合いが詰め切れていない・・だから守備の起点が「明確」に演出できず、相手にボールをキープされ、効果的に展開されてしまうといった「受け身の展開」がつづいてしまう・・。また攻撃でも、サポートアクションが減退していったことで、攻めが「前後分断」になってしまう傾向が見られるようなっていく。

 両サイドバックも、守備がうまく機能していないことで、前半立ち上がりのようには思い切ってオーバーラップしていけない。ということで、ポンテ、エジミウソン、田中達也の三人が孤立気味になってしまうシーンが続出するようになっていくのですよ。立ち上がりの展開からは想像できない「後ろ向き」の展開に落ち込んでいくレッズ・・!?

 それでも、守備ブロックがうまく機能しつづけたことで(トゥーリオも中盤での『抑え』にしっかりと奔走していた!)、前述したように、簡単にFC東京にチャンスを作られてしまうというわけではありませんでした。

 とはいっても、観ている人たちは、レッズが展開した、立ち上がりの爆発的な仕掛けイメージが強烈だったことで(!?)そんなゲーム展開の「変容」を、ネガティブに(後ろ向きに)」感じていたことでしょう(実際にはゲーム展開が落ち着いていったということなのかもしれないけれど・・)。

 実は、私も、そんなゲーム展開の「変容」をネガティブに捉えていたのですよ。「何だ・・最初の勢いはどうした・・もっと前から、積極的にボール奪取にチャレンジしていけヨ!・・何で相手に対するマークが甘くなっちゃうんだヨ!・・どうして前戦のサポートに上がっていかないんだヨ!・・それじゃ、ジリ貧だぞ・・」なんてネ。

 後半の立ち上がりは、ちょっと持ち直したけれど、結局FC東京の勢いに押し込まれる展開がつづくことになった。そのなかで、田中達也が、足を痙攣(けいれん)させたことで永井雄一郎と交代し、ポンテも、ケガを負ったことで梅崎司が登場することになった。

 ポンテだけれど、確実に、太もも二頭筋の筋肉繊維の断裂(肉離れ)でしょう。まあ、4-6週間は難しいだろうね。もちろん、正確なことはまだ何も分かっていないだろうけれど、私の経験則では、たぶん・・ネ。ネガティブで、スミマセン。

 とにかく、言いたかったことは、アレックス、ポンテ、高原直泰といった、今シーズンのパフォーマンス・キャリアー(主力)として期待された選手が次々と脱落していくような「脅威」を、しっかりと「機会」として活用しなければならないということです。

 エジミウソンの(覚醒ベースの!?)パフォーマンスアップ・・細貝萌が魅せつづける本物のブレイクスルー(大躍進)・・永井雄一郎や梅崎司の「攻守にわたるホンモノの組織プレーへの覚醒」・・田中達也の復活・・鈴木啓太の復帰と順調な(!?)パフォーマンス・リカバリー・・などなど。

 それこそが、トップチームの「インフラ」なのですよ。これから、ACLや日本代表のゲームが加わってくるわけで、そのときこそ「見劣りしない選手層の厚さ」という「インフラ」の底力が問われることになるからね。一時期のアントラーズのパフォーマンスダウンの原因は、明らかに「そこ」にあったわけだから・・。

 そして「脅威と機会は表裏一体」というお話しは、もちろん「トゥーリオ」へとつづいていく。

 聞くところによれば、先週のトレーニングで、トゥーリオが最終ラインに下がり(リベロ)、中盤の鈴木啓太のパートナーとして細貝萌が復帰したということでした。期待していたけれど、やはりまだ細貝萌の状態に不安が残るということで「従来型」にしたのでしょう。

 先日の「コラム」で書いたように、わたしは、トゥーリオは、最終ラインのリーダーに戻るべきだと思っているのですよ。そして「前気味のリベロ」として機能する。それは、レッズのスリーバックの場合、どうも人数が「余り気味」になる傾向があると感じるからです。相手フォワードに対して、タイミングよく「一人余るカタチ」を演出できればいいわけで、その意味で、今のレッズ最終ラインはちょっと慎重すぎるかもしれないと思うわけです。

 だからこそ、トゥーリオ。前気味のリベロというイメージでプレーすれば、最終ラインだけではなく、中盤ディフェンスでも高い実効レベルで貢献できるだろうし、攻撃でも、
相手守備にとって「見慣れないヤツ」として、効果的な攻撃参加も仕掛けていけるに違いありません。そう・・日本で行われたW杯予選のオマーン戦で大久保が挙げた二点目のアシストシーンのようにネ。

 でも(このところのように)はじめから中盤では、いまの彼では、コンディションが不足気味です。この試合で、前半の20分過ぎから(中盤ディフェンスでの抑えが効かなくなったことで!?)FC東京にゲームをコントロールされてしまったのも、レッズの攻撃シーンで、後方からのサポートが足りないことで「前後分断」になってしまったのも、ある意味、トゥーリオに因るところ「も」大きかったと思っているわけです。

 もちろん「その現象」の背景には、鈴木啓太のパフォーマンスの戻りが「遅れ気味」だという事実もありました。トゥーリオが、守備的ハーフとして「レッズの復活」に大いに貢献したときは、疲れを知らない「汗かきアクションの権化」細貝萌がパートナーだったわけだからね。

 とにかく、レッズの総合力アップは「これから」ということです。ポンテが復帰し、高原のパフォーマンスも以前のように充実してくれば、レッズの「インフラ」は強固なものになるでしょう。そう、ACLに向けてネ・・。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 



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