湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2007年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第24節(2007年9月1日、土曜日)
- 内容的にも、アルディージャの順当な勝利でした・・(レッズ対アルディージャ、0-1)
- レビュー
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- この試合は、内容を踏まえても、アルディージャが勝ち点3をフェアに勝ち取ったゲームだったと評価すべきでしょうね。本当にアルディージャは、最後の最後まで(特に守備での)集中が途切れなかった。素晴らしく粘り強いサッカーを展開したアルディージャに拍手です。
そんなアルディージャの集中力に、レッズは、フリーで仕掛けていける選手をほとんど演出することが出来なかった。要は、うまくスペースを使うことができなかったということです。パスコンビネーションでも、ドリブル勝負でも・・。
それにしてもアルディージャの統率がとれたチーム戦術は見事だった。特にディフェンスがね。チェイス&チェックは言うに及ばす、そこで演出される守備の起点をベースに、その周りの味方が、次、その次と、どんどんボール奪取勝負シーンを脳裏に描写しつづけていると感じますよ。「起点」をしっかりと演出できるからこその、効果的な「予測ディフェンス」というわけです。
もちろんそれには、レッズの攻撃に、いつもの「組織的な勢い」がなかったという背景もあります。前半でも、後半でも、何度かは、チーム全体が「動きはじめる」兆しがあったし、実際に人とボールが活発に動くようになった時間帯もあった。でも、その流れを維持したり、高揚させることが叶わなかった。それもまた、アルディージャが展開する組織ディフェンスが殊の外うまく機能していたからに他ならないというわけです。
アルディージャの攻守のコンテンツについて、佐久間監督がこんなことを言っていた。「レッズの前戦の三人は、あまり組織ディフェンスの流れに参加してこないから、(しっかりと動けば)グラウンドの至る処で、数的に優位な状況を作り出せた・・最前線の森田は、フリーマンとして(しっかり動いてマークからフリーになり、最前線のターゲットマン&ポスト役として)うまく機能してくれた・・それもあって、うまくポゼッション(ボールを保持)できたし、ゲームをコントロールすることも出来た・・」。フムフム、まあ、そういう見方も理解できる。
たしかに前半のレッズは、アルディージャにコントロールされていた。そのことは、選手たちも敏感に感じ取っていたはずです。どうしたんだ・・うまくボールを動かせない・・フリーな味方へパスをつなげられない・・いや、フリーな味方自体がいない・・これじゃスペースを攻略するコトなんて出来やしない・・。そこでは、そんなフラストレーションの滞留を感じていましたよ。足が動いていないんだから、そりゃ当たり前だよ。ボールだけを動かそうとしたって、アルディージャの忠実な読みディフェンスの餌食になってしまうのがオチだよね。
それでも、先制ゴールを奪われた直後は、レッズの組織プレーに改善の兆しが感じられた。要は、ボールがないところでの動きの量と質が高揚していったということです。それでも、そんなポジティブな流れを維持することは叶わなかった。
この試合でのレッズの組織ダイナミズム(活力・迫力・力強さ)は、かなり低レベルだったということです。そして、人とボールの動きが有機的に連鎖しないことで足が止まり気味になり、足許パスをアルディージャの忠実でクリエイティブな読みディフェンス(組織的な守備)に潰されてしまうという悪循環に陥ってしまった。
私は、レッズがうまくペースを握れなかった一つの大きな要因として、このところの良いサッカーを(イメージ的にも実質的にも)牽引していた平川忠亮が出場しなかったことを挙げざるを得ません。平川が出場しないことは、ウイニングチーム・ネバー・チェンジという大原則にも反する。この試合での彼はベンチに入っていたから、ケガじゃなかったはずです。さて・・。
相馬崇人とのライバル関係を高揚させようとするオジェック監督の心理マネージメント!? さて・・。それでも、この試合での相馬のパフォーマンスじゃね。彼は、勘違いしている。自分は、足許パスをもらい、そこからのドリブル突破でチャンスメイクする「タイプ」なんだと思いこんでいる。もっと彼は、組織プレーでのスペース活用もイメージしなければならないと思うのですよ。
平川だったら、絶対にタテのスペースへ全力ダッシュで抜け出していくような状況でも、相馬は、立ち止まってパスを待つばかり。とはいっても、足許パスを受けたって(相手が一人でも)ドリブルで突破できるわけでもなかった。フ〜〜。
平川だったら、足許パスを受けるだけじゃなく、縦スペースへのフリーランニングも仕掛けていったはず。もちろんパスがこないことの方が多いわけだけれど、それでも、何事もなかったかのように、すぐに全力で守備へと戻っていくのです。そんな「クリエイティブなムダ走り」が、チーム組織プレーのリズムを高揚させないはずがありません。
それに対して相馬は、スペースへの「パスを呼び込むフリーランニング」をやろうとしない。もちろん確実にパスが出る状況では走るけれどね。(パスが来なかったときの守備への戻りも含めた)ムダ走りがイヤなんだろうか!? でもそれじゃ、自身が組織プレーの流れに乗れないだけではなく、チームにおける組織プレーマインドの向上に対する貢献という「重要な心理ミッション」だって果たせない。
それに、楽してカネを稼ごうという姿勢じゃ、不確実性ファクター満載のサッカーで成功を収めることなど夢のまた夢ですよ。彼の才能が素晴らしいことは誰もが認めるところ。だからこそ、そんなプレー姿勢が残念で仕方ない。今シーズンが立ち上がった頃は、積極的なプレーで期待させてくれたのに・・。
ということで平川忠亮。彼が魅せつづける、チーム全体の組織プレーマインドを高揚させて止まないクリエイティブなムダ走りこそが、この試合でレッズに欠けていた「何か」だったと確信する湯浅なのです。
また選手交代にしても、絶対に平川に違いないと思っていたら、小野伸二が登場したりする。そのときの状況は、とにかく「チームの動きを活性化する刺激」が必要だったのに・・。ボールの動きは、基本的には「人の動き」が牽引するカタチで活性化するものだからね。
オシム日本代表での羽生直剛。これまでに、何度も、何度も、後半に登場してゲームの流れをポジティブに変化させたことは皆さんもご存じの通りです。全力でのクリエイティブなムダ走りの繰り返し。そして日本代表のサッカーが、そんな羽生の動きに牽引されるようにダイナミックに変容していった。チーム全体の組織プレーマインドを活性化させる強烈な刺激・・。
逆を返せば、レッズが、ボールがないところでの動きをうまく活性化させられていれば(その流れを加速させられていれば)確実にアルディージャの守備を崩すことができたはずだと言えるかもしれない!? さて・・。もちろん、レッズの「動きの活性化」をうまく抑制したアルディージャの忠実な読みディフェンスには大拍手だけれどね。
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しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。本当に久しぶりの、ビジネスマンをターゲットにした(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」を参照してください。
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