湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第14節(2007年6月9日、土曜日)

 

今回はもう少し踏み込んで、「レベルを一つ超えた余裕のある個のチカラ」というテーマを・・(マリノス対ジェフ、1-0)

 

レビュー
 
 この試合でも、ジェフにスポットを当てながらディスカッションを展開していくことにします。そこで中心になるテーマは、個のチカラ。

 これまでジェフに関するコメントでは、攻守にわたる優れた組織プレーのコンテンツにしては、どうもうまく結果を出すことができていない・・ツキにも見放されている・・とはいっても、安易なミスが原因の「もったいない失点」も多すぎるという戦術的な課題もある・・なんていうニュアンスがメインでした。

 ただし、この試合については、もう少し踏み込むことにしました。ということで、「タラレバ」のニュアンスも含まれます。ご容赦アレ。要は、攻守にわたる組織プレーがしっかりしていたとしても、やはり個のチカラが「それにオン」していなければ結果を出すのは難しい・・ということです。

 今シーズンは、坂本、阿部、マリオ・ハースが移籍してしまい、そしてこの試合では、ケガの佐藤勇人もまだ出場できません。しっかりとした組織プレーを基盤に、ディフェンスラインを積極的に押し上げる攻撃サッカーを展開しようとするジェフだけれど、やはり何かが足りないのですよ。そう、個のチカラが・・。

 この試合では、攻撃的なプレッシングサッカーのマリノスに対して、がっぷり四つの攻撃サッカーで対抗しました。とはいっても、たしかに前半の流れは悪かった。ガンガンと攻め上がってくるマリノスを、機能性が改善した組織ディフェンスでしっかりと受け止めるジェフ。でも次の攻めでは、いつもの、ボールがないところでの飛び出しの勢いが見られない。だから、巻とか新居とか、両サイドの水野や山岸が、孤立した勝負を強いられてしまうのですよ(たしかに山岸や水野は、何度かは素晴らしい個人勝負を魅せていたけれど・・)。

 いまのジェフでは、「個の局面勝負」で打開していくのは難しい。水野にしても山岸にしても、はたまた羽生にしても、やはり個人勝負という視点では明確に限界が見えるのですよ。それを言っちゃオシマイだよ・・。そんな声が聞こえてきそうだけれど、私が言いたいことは下記のようなコトなのです。

 昨シーズンまでは、重要なポジションに「しっかりとした余裕のある個のチカラ」がいた・・だからこそ、水野や山岸、はたまた羽生や巻の「組織プレー能力」が素晴らしく活かされただけではなく、そんな優れた組織プレーを基盤に、彼らが秘める個人勝負の能力も本来のチカラ以上の実効レベルを魅せるケースも多かった・・ということです。要は、(普通の)選手たちの個のチカラを最大限に発揮させるためにも、「レベルを一つ超えた余裕のある個のチカラ」が必要だということが言いたいのですよ。

 それでも後半には、ジェフの組織プレーが、いつもの良いリズムを取り戻しはじめましたよね。(一人の例外もなく)全員が、攻守にわたって積極的に仕掛けはじめたら、もちろんチーム全体が良いリズムにシフトアップしていくというわけです。まあそれも、マリノスが先制ゴールを入れるまでだったけれどね。

 ちょっと難しいハナシになるけれど、ここでは、「レベルを一つ超えた余裕のある個のチカラ」を擁している場合、彼らの局面での個人勝負も、チームを良いプレーリズムに「乗せる」大いなるキッカケになるということが言いたかったのですよ。

 後半のジェフは、たしかにチーム全員が「シンクロ」した状態で積極的になったことでプレーリズムが高揚していった(ハーフタイムでのアマル・オシム監督のモティベーションが成功した!?)けれど、「余裕の個のチカラ」がいる場合は、それにプラスアルファーの「リズム高揚パワー」が備わるということが言いたかったのです。

 まあ、次の試合からは佐藤勇人が復帰するということだから、「チーム一丸となったリズムアップ・メカニズム」の機能性は再び高揚するとは思うけれどね・・。

 さてマリノス。前半は、良かったですよ。前から仕掛けていくプレッシングサッカーが本領を発揮した。そこでは、組織プレーと個人勝負プレーがうまく高みでバランスしていました。人とをボールが良く動くなかで、機を見計らったドリブル突破チャレンジがポンポンと出てくるのだからね。素晴らしかったですよ。

 オフサイドになった「幻のゴール」は、幻なんかじゃなく明らかに現実のゴールだったし(マリノスには不運)、それ以外にも、大島のヘディングシュートがバーに当たったり、後半には吉田の放ったミドルシュートがバーに阻まれたりと、攻撃をしっかりとフィニッシュまでもっていけてました。でも後半は・・。

 「後半はリズムが単調になって足が止まった・・プレスとポゼッションの使い分けに課題がある・・ポゼッションを意識してプレーが一旦落ち着くと、途端に足が止まる・・また下がって落ち着いたときにも、足が止まる傾向がある・・そして、その鈍重な流れから抜け出せなくなる・・本来は、そこから再びチームが一体になってリズムアップできなければならないのに・・」。早野監督の弁です。

 まあ、たしかに一度落ち着いたリズムから、機を見計らって急激にペースアップしていくのは難しいよね。よほど強いパーソナリティーを備えたリーダーが必要になる。「落ち着け! いま、ゆっくり!!」と、落ち着いたポゼッションサッカーに入り、そして相手がそのペースにはまった頃合いを見て、再び、急激にテンポアップしていくのです。「いまだ!! 前から行け〜〜!!」ってなもんです。まあ、山瀬功治がリーダーとしてもっともふさわしいけれど、効果的にリーダーシップを行使していくのには、さまざまな技術がいるし、強いパーソナリティーも必要だからね。さて、マリノスでは、誰が早野さんのエクステンションハンド(右腕)になるのだろうか・・。

 



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