湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第5節(2006年3月25日、土曜日)

 

守備こそが躍進パワーの源・・(マリノス対レッズ、1-3)・・相変わらず素晴らしい積極チームプレーを展開したジェフだったけれど・・(ジェフ対アントラーズ、0-1)

 

レビュー
 
 どうも皆さん、いろいろとあったもので、アップが遅くなってしまいました。何せ今日は、横浜とフクアリのハシゴ観戦なんて、しゃれ込んじゃいましたからね。それに、フクアリからの帰路では、道を間違えて30分以上も右往左往しちゃったし。ほんと、久しぶりに疲れた。

 横浜でのエキサイティングマッチの後(記者会見もしっかりと最後まで参加!)、一路フクアリへまっしぐらのつもりだったのですが、その途中で大渋滞に巻き込まれ、到着するまでに1時間半もかかってしまいました。羽田から「トンネル経由で木更津へ」という選択肢もあったけれど、大した渋滞じゃないだろうとタカをくくり、そのまま「湾岸ルート」を突っ走ったのですよ。でも、羽田から大井方向へ10キロ、習志野バリアの手前で5キロ、そして千葉の宮野木ジャンクションあたりでも5キロと、それは、それはもの凄い渋滞に巻き込まれてしまったのです。クルマの列が鈍重にストップ&ゴーを繰り返すという本格的な渋滞。自動車のワキをすり抜けていくのは大変に気を遣う作業だから、フクアリに到着した頃には、まさに心身ともにガタガタってな体たらくだったのです。もちろんキックオフにも間に合わず。フ〜〜ッ・・。

 蛇足の書き出しでしたが、皆さんにも私の今の状態を(強制的に?!)知っていただくことで、少しは疲労感が軽減されたりして・・あははっ・・。では、まずレッズ対マリノス戦からテーマを抽出します。それは「守備」。もちろん、快勝したレッズのディフェンスのことですよ。

 試合後の岡田監督が、こんなニュアンスのコメントをしていました。「レッズのディフェンスは素晴らしかった・・ボールへの執着心にあふれた素晴らしい守備・・彼らが展開する効果的なプレス守備に、マリノス選手たちの足が徐々に止まっていった・・攻めでもう少し出来ることを体感させてやれなかったことが残念・・強いチームを相手にしたら簡単にゴールは奪えない・・そのことを選手たちが分かってくれればいいと思う・・等々」。

 まさにおっしゃる通り。レッズが展開する、積極的にボールを奪いにいくプレスディフェンスは、昨シーズンにも増してダイナミックになっていると感じます。「ワシントンについて・・? たしかに素晴らしいゴールは入れたけれど、彼については、最前線からの効果的なディフェンスを特に賞賛したい・・」。ワシントンのポジショニングは上手いけれど、彼に対してどんな指示を出したのか? そんな質問に対する答えはそっちのけで、ギド・ブッフヴァルト監督は、ワシントンの守備での貢献を力説していました。いや、ホントにいいね。

 「レッズのディフェンダーは、我々のシュート場面で、常に二人、三人と身体を投げ出してブロックにきていた・・その忠実な粘りディフェンスが素晴らしかった・・そんなプレー姿勢は、本来はウチ(マリノス)の特徴だったはずなんだけれど・・」。マリノス岡田監督が、チョロッと、そんなことまで口にしていましたよ。前述した、「強い相手だったら簡単にゴールは奪えない・・ウチの選手たちは、そのことを分かったはずだ・・」といったニュアンスの発言も含め、岡田監督は、メディアを活用して、選手たちへの厳しいメッセージを発信していたっちゅうことなんだろうね。そんな岡田監督の「ぶっきらぼうな発言」に、さすがの策士ぶりを読み取っていた湯浅でした。

 レッズの守備だけれど、本当に発展していると感じます。要は、選手たち全員が、「すべてのスタートラインは守備にあり・・」というサッカーの大前提を、ここ2シーズンの成功体感とともに心底理解しているということです。もちろん「それ」のほとんどは汗かきプレー。だから「それ」をやらせることは容易ではない。でもレッズ選手たちは、「それ」を、主体的に、そして全精力を傾けて遂行しようとする。ハイレベルな守備意識・・。そこに、ギド・ブッフヴァルト監督のウデを感じる湯浅です。

 彼は、常に積極的なディフェンスを要求しつづけます。ボールへの(次のパスレシーバーへの)チェイス&チェック・・それによって演出される「守備の起点」をベースにした、次、その次のボール奪取アクション・・そして、それらのアクションを着実に「有機連鎖」させるためのイメージトレーニング・・等々。とにかくレッズの守備は、「忠実な汗かきプレーの積み重ね」という視点で、発展しつづけていると感じます。

 だからこそ、次の攻撃にも勢いを乗せられる。小野と長谷部が演出するタテのポジションチェンジ・・トゥーリオのオーバーラップ・・鈴木啓太が魅せつづける最高の穴埋め作業(もちろん、チェイス&チェックやインターセプトアクションも抜群)・・両サイドバック(ギドのイメージでは、限りなくサイドハーフ!)がチャレンジしつづけるサイドゾーンを深くえぐる仕掛け・・。それら全てが、「実効を伴った高い守備意識」に対する相互信頼を絶対的な基盤にしているのです。

 多くの才能あふれる選手たちを抱えるレッズだからこそ、まず、全員の積極ディフェンス姿勢を深化させる・・。やはりギド・ブッフヴァルトは、良い選手が集まったチームを「本当の意味で強くするためのエッセンス」を分かっている。

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 ここからは、ジェフ対アントラーズ戦を簡単にレポートします。

 全体的な内容としては、攻守にわたって抜群にダイナミックな積極サッカーでチャレンジしつづけ、ゲームの全体的な流れを掌握していたジェフだったけれど、結局はアントラーズの個のチカラにねじ伏せられてしまった・・といったゲーム。試合後のイビツァ・オシム監督のコメントが全てを的確に言い表していました。

 「わたしが想像した以上に良いゲームだった・・まあ、勝つためには、運も必要ということだ・・」なんていうふうに切り出したイビツァさん、次には、「とにかくジェフは、勝利に値する立派なサッカーを展開した・・選手たちは、よく走り、よく闘った・・でも結果は・・」と、ジェフが展開したサッカーを高く評価していました。

 まさにおっしゃる通り。わたしが観はじめたのは、前半20分を過ぎたあたりだったのですが、すぐに、ジェフが展開する積極サッカーに目を奪われましたよ。ガンガンと前からプレッシャーをかけてボール奪取勝負にいく・・チャンスを見計らった仲間たちが、躊躇せずに勝負の輪に加わってボールを奪い返してしまう・・そして次の瞬間には、例外なく、前方のスペースへ飛び出していく・・その勢いたるや、まさに「世界」・・また逆に、ボールを失った次の瞬間には、全員がフルスプリントで戻っていく・・。そこには「無為に足を止めている選手」などいない。まさに、チーム・・。

 ただ、そんな立派なサッカーを展開していたのに、結局は負けてしまった・・。そのことについてイビツァさんは、こんなニュアンスのことを言っていました。「選手の質に差があった・・個人的なチカラの差・・最終勝負シーンでの繊細なプレーの内容に差があった・・スルーパスや勝負プレーの内容に差が見えていた・・それは(勝負にとって)非常に大事なこと・・」。

 要は、最終勝負での質の差によって勝負が決まったということです。最終勝負シーンを演出する「量」など、チーム戦術的な内容では、完全にジェフがアントラーズを凌駕していたんだけれど、結局は「個のチカラの差」によって勝負を決められてしまったということです。

 良いサッカーを展開し、しっかりとゴールチャンスを作りつづけたにもかかわらず、結局はアントラーズの「個の局面勝負」にやられてしまったジェフ。ちょっと残念でした。ということで、私の疲労感も、輪をかけて・・ってなことになってしまった次第。疲れたから、今日はここまでにします。

 



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