湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第33節(2006年11月26日、日曜日)

 

勝負は最終節へ!・・守備(意識)こそが絶対的に重要なテーマ!・・(FC東京対レッズ、0-0)

 

レビュー
 
 「この」レッズには、攻守にわたって「解放されたエネルギー」が満ちあふれている・・それこそが(前回レポートで触れた)勝者のメンタリティーの発露じゃないか・・プレッシャーを、リスクチャレンジなどの前向きの闘うエネルギーへと変換できることこそが、勝者メンタリティーの本質なのだ・・

 レッズの素晴らしい立ち上がりを見ながら、そんなメモを書いていた湯浅だったのですよ。それが、時間の経過とともに・・。

 「ホーム最終戦が、このような重要なゲームになったことに対して感謝している・・チャンスは何度も作り出したわけだから、それをしっかりと決めて勝ちたかった・・まあ、結果としてレッズの胴上げを阻止できたことには満足している・・」。そんなコメントからスタートした満足げのFC東京の倉又監督でしたが、つづけて、「この試合では、中盤のディフェンスがうまくいった・・特に、今野と梶山によるセンターゾーン守備がうまく機能した・・また、ワシントンにマンマークを付けたジャーンも、素晴らしい仕事をこなしてくれた・・また攻撃では、(そんな安定した守備から!?)特に、石川と徳永のコンビで右サイドを崩していくというのが、この試合でのテーマだった・・」といった興味深いコメントも出してくれました。

 なるほど・・。そのハナシのとおり、この試合でのFC東京は、ゲーム戦術(攻守にわたる選手たちの具体的プレーイメージ)が殊の外うまく機能していましたよ。それについては、レッズのギド・ブッフヴァルト監督も、「リーグ首位チームの鼻をあかしてやりたいとゲームに臨んできたFC東京も、基本的な実力ではトップクラスにある彼ららしく、積極的なプレーを展開した・・だから我々にとって、非常に厳しい試合になった・・我々の方が内容で上回る時間帯もあったけれど、全体としては、引き分けというのがフェアな結果だったのではないだろうか・・」と話していました。まあ・・そういうことだよね。

 素晴らしい立ち上がりだったレッズ・・でも結局は、中盤ディフェンスのせめぎ合いで押され気味になってしまった・・そして、石川と徳永による右サイドからの仕掛けに四苦八苦し、そこから何度かチャンスを作り出されてしまう・・ただ後半のレッズは持ち直し、何度も深いところまで仕掛けてチャンスを作り出した・・もちろん逆に、危険なカウンターも喰らったけれど、レッズの勝ちパターンに乗った「タイプの」決定機も作り出した・・ってな展開だったということだね。

 ここで(ガンバとの最終決戦に向かうレッズにとって)ピックアップしたかったポイントは、やはり「守備」。ディフェンスこそが、すべてのスタートラインであり、それこそが、ガンバとの最終勝負マッチにおいて絶対的に重要なテーマだと思っているのですよ。この試合の(特に前半!)ような、チェイス&チェックの遅れが目立つような受け身姿勢(待ちの姿勢が目立つ)ディフェンスではなく、常に自分たち主体でボール奪取勝負を仕掛けていくような(調子がいいときのレッズが展開する)積極プレッシングディフェンスのことですよ。

 言葉を換えれば、次のガンバ戦へ向けて重要になってくる作業は、守備意識の再確認&再認識と、その充実とでも言えるのかもしれない・・ということです。

 「最終節を迎えるにあたって、たしかにレッズは有利な状況にある・・勝ち点で三つリードしているだけではなく、得失点差でも五つもリードしている(要は、ガンバが3点差以上のリードで勝利しなければリーグ優勝はないということ!)・・ただ、その有利な状況が諸刃の剣になるかもしれないという危惧もある・・ガンバには、もう選択肢は何も残されていないのに対してレッズには余裕がある・・最終戦は、戦術がどうのではなく、確実にギリギリの心理戦になるはず・・そこで私は、そのような状況が、レッズに不利に働くという見方があるかもしれないと思っているのだが?」。そんな質問を、ギド・ブッフヴァルト監督にぶつけてみました。

 「いや、私はそうは(レッズの方が不利だとは)思わない・・勝ち点で3リードし、得失点差でも五つもリードしているというアドバンテージがある・・我々は、サポーターの厚い応援をバックボーンに、とにかくホームで強い・・様々な要素を総合すれば、我々の方が大きく有利であるというのは動かしがたい事実だ・・」。そう答えたギドは、「とはいっても、もし我々が今日の試合に負けていたら、ガンバは勝てばいいだけという状況になったわけで、そこでは、ちょっとハナシは違うものになっただろうけれど・・まあ、本当は今日決めておきたかったんだけれどね(笑)・・」と、余裕のコメントを残してくれました。

 でも私は、そんなギドのコメントを額面通りには受け取っていません。彼は、何度も、何度も体感しているのですよ。サッカーでの、ホンモノの勝負の怖さを・・。

 もちろん彼が、過度の緊張を強いるような雰囲気作りをするはずがないし、そんなことは無意味でしょう。ただ、サッカーの怖さを、何気なく、そして繰り返し「示唆」するような心理マネージメントは有効のはずです。何せ、示唆するのが、世界での究極の勝負を勝ち抜いてきたギド・ブッフヴァルトなんだからね。それに、レッズが絶対的に有利な立場にあることも明白な事実だしね。まあ、テーマは、リラックスした雰囲気と適度な緊張感のハイレベルなバランスってなところかな。

 でも最後に、私が、「守備」こそが最重要テーマだと思っていることだけは繰り返させてもらいますよ。それについては、先日、ギド・ブッフヴァルトと話し合った「The 対談の記事」も参照してください。

 ガンバとの試合では、必ず、押し込まれるという時間帯も出てくることでしょう。そこで、受け身に(消極的に)耐えようとすることほど馬鹿げた行為はありません。そんなことをすれば、ますます「心理的な悪魔のサイクル」の奈落に落ち込み、そこから這い上がれなくなってしまうかもしれない。

 とにかく、心理的な悪魔のサイクルというワナが口を開けたと感じたら、その次の瞬間には、一人の例外もなく全員が、ガンガンと「前からのディフェンス」を仕掛けていくべきなのですよ。

 爆発的なチェイス&チェック。鬼の形相のハードマーク。猛禽類のように鋭いインターセプトや、相手トラップを狙ったボール奪取勝負。苦しさを自らの意志で乗り越える「ボールがないところでの全力マーキング」。もちろん相手のキープレイヤーには、これ以上ないほどの、タイトな「オールコート・マンマーク」を仕掛けていく。

 相手の意志を完璧に凌駕し、萎縮させてしまうくらいに「強烈な勢い」のディフェンス。それこそが、心理的な悪魔のサイクルを跳ね返すための唯一の手段なのですよ。だからこそ、「それ」に対する(チーム全体の)イメージトレーニングが大事。もちろん、トゥーリオ、鈴木啓太、長谷部誠、山田暢久には、リーダーシップを握るためのイメージトレーニングも期待します。仲間を「ど突く」くらいの勢いで叱咤する心の準備を・・。

 久しぶりに、レベルを超えたエキサイティングな時間を体感できそうじゃありませんか。(ギドも記者会見で言っていたけれど)いまから楽しみで仕方ありません。

 



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