湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第28節(2006年10月22日、日曜日)

 

平山相太がカゲの主役を演じた(!?)大逆転ドラマ・・(FC東京対ガンバ、3-2)

 

レビュー
 
 ものすごい大逆転ドラマが完結したFC東京対ガンバ。もちろんサッカーだから何でもアリだけれど、「あんな」ゲームの流れからすれば、あのエキサイティングプロセスは誰も予想していなかったに違いない。

 (■事後注釈:最初の文章は日本語になっていませんでした・・疲れていた!?・・ということで書き直しました・・また「あんな」のニュアンスは、ある時点までは、大逆転劇が起きる兆候さえ感じることができないほど勝負の流れがガンバにあったという意味です・・分かりにくくてスミマセン)

 とはいっても、この試合でのテーマは、まず何といっても平山相太ということになるでしょう。オランダのヘラクレスを解雇されてFC東京に鳴り物入りで移籍してからというもの、メディアで目立ちまくり、U21代表にも選ばれ、その代表のトレーニングマッチで先発までしている。

 でも私は、高校時代、オランダ時代を通じて、これまで一度も、彼の「プレー姿勢」をポジティブに捉えられたことはありませんでした。そのこともあって、これまで一度も、彼に注目したレポートを書いたことはありません。要は、まったく興味が湧かなかったということです。でもこの試合では、平山が大逆転ドラマの「カゲの主人公」になったのだから取り上げないわけにはいかない。

 身体が大きいだけじゃなく、テクニックや戦術能力、はたまたシュート感覚でもそこそこのポテンシャルはある・・ただ、アクションイメージがポストプレーに集中しすぎているという側面がある・・だから、相手を背負った状態で、足を止めてタテパスを「待つ」というシーンばかりが目立つ・・逆に、流れのなかでスペースへ走り込んでパスを受けようとするシーンは希・・そして最終勝負場面では、決して無駄走りをすることなくシュートポジションに入り込み、そこでも「待つ」・・

 ・・たぶん彼は、ホンモノの全力ダッシュというものを経験したことがないのかもしれない・・最終勝負というリスクチャレンジへ向けた強烈な意志・・それがハチ切れんほどに充填された全力ダッシュ・・もちろん守備においても、攻撃においても・・でも平山の場合は・・

 ・・とにかく、ディフェンスがまったくお座なり・・チェイスはするけれど、本気じゃないから、そのアクションに合わせて「次」を狙おうとするチームメイトにとっては邪魔なだけの存在になっている・・まさにアリバイ守備・・また攻撃でも、ボールがないところでのアクションの量と質が、あまりにもお粗末・・まあ、子供の頃からターゲットマンとしてしかプレーしたことがないのだから、それも仕方ないことなのかもしれない・・互いに使い、使われるというグループ戦術的なイメージは、まさに稚拙・・これでは、チームメイトから信頼されるはずがない・・逆に、チームメイトたちにとっては、何でアイツが?という、ディ・モティベーションになってしまっている可能性もある!?・・

 これだけ平山相太のことをケナすんだから、もちろん湯浅は、反面で期待はしているのですよ。とにかく彼は、まず、必死に守備をすべき。最前線からの全力ダッシュのチェイス&チェックを繰り返すだけではなく、ボール奪取チャンスではスライディングを仕掛けるなど、味方の次のボール奪取勝負イメージをリードする。そう、ガンバの播戸やジェフの巻のようにネ。そして攻撃でも、ポストプレーだけではなく、もっともっとスペースを活用するというイメージを持つのですよ。要は、クリエイティブな無駄走りの積み重ねという発想。そんな基礎的なイメージを体現できるようになって初めて、持てるポテンシャルを発展ベクトルに乗せることができるのです。楽してカネをを稼ごうとする姿勢ほどの「毒」はない。最終的には(主体的に)自由にリスクへチャレンジしていかざるを得ないというのがサッカーの本質だからね。

 ということで、この試合での平山も、ご覧になった通り、まさに「最前線のフタ」としてしか機能できていませんでした。もちろんその背景には、ガンバ守備が、彼のポストプレーに狙いを定めていたという側面もあるけれどね。平山がいるあいだ、ガンバ守備は、本当に守りやすかったでしょうね。

 その平山相太が、後半9分に、シャープなドリブルや鋭いコンビネーションを武器にするすばしこい仕掛け人、馬場憂太と交代するのです。そしてFC東京のサッカーが見違えるほどダイナミックに変身していく。それは、人とボールの動きが何倍にも増幅したといった感じ。フタが取れて、選手たちのイメージが爆発した!? まあ、「2-0」でリードされていることで失うモノが何もないということも、その爆発の威力を何倍にも高めたということなんだろうね。

 「平山が交代したとき、ちょっとイヤな感じだったね・・それまで、彼をトップに置いた東京の攻めはかなり上手くコントロールできていたから・・」。ガンバ西野監督の弁です。

 ところで西野さん、(失礼は承知で書くのですが・・)以前と比べてビックリするくらい記者会見での受け答えが明瞭になっているという印象を持ちました。「前半の途中から引きすぎの傾向が強くなったと感じた・・攻撃への意識が乏しかった・・だからハーフタイムでは、このままでは危ないゲームになると指摘した・・そのこともあって、後半の立ち上がりは効果的なカウンターも出てきた・・ただ結局は、守りきりたいという意識の方が先行してしまった・・中盤でタメを演出できない・・攻撃のリズムが不足・・攻撃に対する自信を失っているのかもしれない・・等々」。西野さんについて、ちょっと認識を新たにしていた湯浅でした。

 そんな西野さんが、ちょっとイヤな感じを持った平山の交代。そしてゲームが、彼が心配していた通りに大逆流していった・・。

 それにしても、東京の一点目を決めた今野泰幸。わたしは、彼の、攻守にわたる全力プレーに対し(もちろんその高い実効レベルも含めて)心からレスペクトしています。このゴールにしても、決して最後まで諦めない彼の「自己主張マインド」が結実したものだと表現します。「くるかもしれない」パスを予想し、全身全霊で準備する今野・・パスが出るだろうスペースへ向けて全力ダッシュを仕掛ける今野・・そして、勇気をもってギリギリの勝負を仕掛けていく今野・・。素晴らしい・・。

 あっと・・、もちろん、同点ゴールを自ら決めただけではなく、石川の大逆転ゴールまでも演出した鈴木規郎についてもコメントしなければ。彼は、東京ファンの間では「ノリカル」と呼ばれているそうな。もちろん、レアル(ブラジル代表)のロベルト・カルロスをもじったニックネームですよ。同点ゴールはホントに凄かった。まさに、ロベカルのキャノンシュート!! このゴールシーンは、ビデオに撮ってあるのだけれど、永久保存版にしよう。何かアタマにくることがあったら見る。それで、嫌なことも忘れ、アタマがスッキリするに違いない。あははっ・・。

 まあ、この試合については、こんなところですかね。二日もつづけて素晴らしいエキサイティングマッチを観られて、本当に大満足の湯浅でした。

 ところが、気持ちよいはずの帰り道に、急に雨が降りはじめたのですよ。インターネットでチェックし100パーセント雨はないと確信していたのに・・クソッ!・・なんてネ。ということで、久しぶりの雨中ライディングということになってしまった。とはいっても、危険きわまりない夜の濡れた路面でのライディングだけれど、今日は、ビックリするくらい愛車が言うことを聞いてくれました。後での整備が大変だけれど、まあ良い週末だったよね。さてこれからブンデスリーガについて、久しぶりにスポナビへ寄稿しなければ・・。

 



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