湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第23節(2006年9月16日、土曜日)

 

アントラーズ、エスパルス、そしてレッズ・・(エスパルスvsアントラーズ、1-2)(レッズvsサンフレッチェ、2-1)

 

レビュー
 
 前節のパープルサンガ戦で、アントラーズのアウトゥオリ監督が怒り心頭に発していたとか。そのゲームでは受け身で消極的なプレーに終始したアントラーズ(わたしもビデオで観たけれど、ちょっとヒドかったネ・・)。まあ、もしそのことを聞いたとしても、アウトゥオリさんご本人は、「感情的になるなんてこと、あるわきゃない!」とアタマから否定するのだろうけれどね。

 ということで、この試合では、パープルサンガ戦で「ネガティブな消極マインド」に支配されていたアレックス・ミネイロと柳沢敦は、ベンチスタートということになりました。そしてアントラーズが、闘う意志がほとばしるようなダイナミック攻撃サッカーを展開してくれた。

 「アレックスと柳沢がベンチスタートだったのは、(たぶん)心理マネージメントの一環だったと思う・・その甲斐あって良いサッカーが展開できていたと思うが・・」と、質問を投げかけてみた湯浅でした。もちろん、「監督は色々なことを考えなければならない・・ナビスコ第二戦のこともあるし、若い田中とダ・シルバにもチャンスを与えることで、オプションを広げなければならない・・」と、煙に巻こうとするアウトゥオリさん。

 アントラーズ内部での心理マネージメントコンテンツは知る由もない湯浅だから、アウトゥオリさんの、メディアに対する「慎重」な姿勢の背景にどのような発想があるのかは分からない。まあ、選手のネガティブな部分については、極力、外部に出さないというのが彼のポリシーなんだろうね。私は、クレバーにメディアを活用するのも監督のウデだと思っているのだけれど・・。

 ところで、アレックス・ミネイロと柳沢敦。2-0となったところで先発の二人(ダ・シルバと田中)と交代出場しました。ただ彼らは、2-1とエスパルスに迫られたにもかかわらず、そこでも気合いの入らないプレーに終始する。「何やってんだ・・そんなぬるま湯プレーじゃプロの資格なんてないぞ!」なんて、ちょっと憤っていた湯浅でした。

 もちろん私は、最前線からの積極チェイス&チェックや、ボールがないところでの爆発フリーランニングなど、目立たないところでのプレー姿勢(意志コンテンツ)を観察していたわけです。それが、まさにぬるま湯(アリバイマインド!)だった。もちろん自分がボールに絡めるシーンでは(目立てるし、そこが直接的な評価につながるから!)少しは闘う姿勢をみせていたけれどね。とにかく、気持ちを入れ替えたギリギリの闘うプレー姿勢を期待していた湯浅は、心底ガッカリさせられたものでした。

 このゲームについてだけれど、試合前には二つのことをイメージしていました。一つは、このところ、攻守にわたって素晴らしいダイナミックサッカーを展開しているエスパルスを(これまではビデオ観察がメイン)、スタジアムでとことん堪能できるということ(長谷川さんは本当に良い仕事をしている)。両サイドの藤本と兵藤が展開する攻守のダイナミックプレー・・この二人がリードする「両サイドバックとのタテのポジションチェンジ」・・中盤の絶対的なリーダー伊東輝悦と枝村の、前後左右のバランシングプレー・・などなど。興味が尽きませんでした。

 そしてもう一つが、前節でのアウトゥオリさんの「怒り」が、どのように試合内容に反映されるのかというポイント。そして、皆さんもご覧になったとおり、アントラーズの「変身コンテンツ」が観戦のコアになったわけです。

 忠実でクレバー、そして全力ダッシュを積み重ねていくダイナミックな中盤ディフェンスを基盤にゲームを掌握するアントラーズ。攻撃でも、人とボールがよく動くアクティブサッカーを披露します。本当に、アントラーズのイメージが大きく変わった。これほど魅力的でダイナミックなサッカーを展開できるなんて。

 とはいっても、そこはエスパルス。なかなか堅実な守備ブロックが、アントラーズの攻撃を確実に受け止めてしまうのです。試合後の記者会見で長谷川監督が、ちょっと守備ブロックが「深すぎた」ということを述べていたけれど(だから二列目スペースでチャンスメイクされた!?)まあ全体的には着実に機能していたと思いますよ。

 アントラーズが流れのなかでチャンスを作り出したのは、(前半14分や22分)新井場のオーバーラップシーンくらいでしたかね。脇目もふらずに走り上がる新井場・・そこへ、野沢や深井から、正確なスペースパスが飛ぶ・・ってな素晴らしいチャンスメイクでした。でもそれ以外では、ウラを突いて、エスパルス守備ブロックを崩し切るというシーンはほとんどありませんでした。アントラーズが挙げた2ゴールにしても、両方ともロングシュートがツボにはまったものだったからね。

 そして後半になってからは、エスパルスが本来のダイナミックサッカーで押し返していくのです。「残念です・・あと一点が入らなかった・・良い流れだったけれど、逆にロングシュートで突き放されちゃったし・・」。長谷川監督の弁だけれど、彼の無念はよく分かる。そして最後は、「とにかく、この試合で見えてきた反省ポイントを修正して、次のレッズ戦に臨みます」と前を向いていた。彼の言動からは、自分が良い仕事をやっているという自信を感じます。いいね、自信と確信に満ちたプロコーチは。ポジティブなオーラの放散を感じますよ。

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 ところで、この強いエスパルスと次節で当たるレッズ。今節のサンフレッチェ戦では、あまり良いところがありませんでしたね。国立でのエスパルス対アントラーズ戦の後、愛車のオートバイで埼玉スタジアムへ駆けつけた湯浅だったけれど、フラストレーションがたまるゲーム展開に、ちょっと閉口気味でした。

 たしかに立ち上がりのレッズは、何度かチャンスを作り出したけれど、その後は、素晴らしく忠実なダイナミックディフェンスと、人とボールがよく動く組織的な攻撃を繰り出していく「攻守にわたって素晴らしくコレクティブ」なサンフレッチェの前に、まさにタジタジといったサッカー内容に終始してしまうのです。

 仕掛けにしても、足が止まった状態から(足許パスから)仕掛けていくゴリ押し勝負ばかり。これじゃ、サンフレッチェ選手たちが展開する、全力の「粘り腰ディフェンス」に簡単に潰されてしまうのも道理。まったくといっていいほどフリーでチャンスメイクできないレッズ選手たちなのですよ。まあ、「ボールがないところでの動き」が目立って緩慢になっていたから、それも当然の成り行きだったけれど。ホントに、フラストレーションがたまったものです。

 そんなジリ貧の展開のなか、満を持して山田暢久が登場してくるのです。後半20分。これで、前節のトリオ(酒井、長谷部、山田暢久)が揃ったわけだけれど、この試合では、この三人に、ポンテも加わったから、中盤のダイナミック・カルテットってな布陣になりました(最後は永井雄一郎のワントップ)。また、それによって両サイド(アレックスと平川)のプレーも格段にアクティブになったことは言うまでもありません。とにかく、山田暢久が登場したところから、レッズのサッカーが急に活気づいたのは確かなことでした。そして、それまで1-2本だったシュートも、5本、6本、7本と積み重ねられるようになっていく。

 このシュートだけれど、山田が3本(そのうちの一本が決勝ゴール)、長谷部が2本、そしてアレックスとトゥーリオが1本ずつ。中盤の「動き」が活発になったからこその縦横無尽のポジションチェンジ。まさに、二列目、三列目の饗宴ってな具合でした。

 それにしてもレッズは、よく勝った。次は、前述したように、素晴らしいサッカーを展開する清水エスパルスだからね。この試合での反省を踏まえ、気を引き締めてゲームに臨まなければいけません。

 



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