湯浅健二の「J」ワンポイント


2005年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第30節(2005年11月12日、土曜日)

 

内容でセレッソを凌駕したのに、勝ち点はゼロ・・まあ、それもサッカーだけれど・・(ヴェルディ対セレッソ、0-1)

 

レビュー
 「この試合の内容は褒められたものではないと思うけれど、(リーグ戦では)全体的に良いサッカーをやっているし、優勝争いを演じるなど結果もついてきている・・小林さんは、その要因をどのように表現するでしょうか?・・一つか二つのキーワードを中心に表現してくれませんか?」

 ちょいと挑発的に質問してみました。とはいっても私は、西澤、ファビーニョ、ゼ・カルロス、久藤清一といった主力を欠いていたことも含め、この試合でのセレッソのサッカー内容について、選手たちの意識レベルが減退していたとは思っていませんでした。相手の攻勢にしっかりと耐えながら、チャンスには、集中した仕掛けを繰り出していくなど、まさにそれは「セレッソのサッカー」だったのですよ。でも・・まあネ・・ヴェルディに3倍ちかくものシュートを打たれただけじゃなく、決定的シュートの量と質でも完全に凌駕されていたということで、出来は良くなかったというニュアンスを入れてみることにしたわけです(いつもの安定した守備ブロックからすれば、ディフェンスが崩されて多くの決定的ピンチを演出されてしまったことは大いなる反省材料!)。

 そんな私の質問に対しても、小林監督は真摯に答えてくれましたよ。そこでのキーワードは、守備意識。「合宿中から、攻撃の後にはディフェンスという意識が高まってきたことに手応えを感じていた・・そのベースであるメンタル面も強くなってきた・・そしてしっかりとした守備をベースに、攻撃にも広がりが出てきた・・」。まあ、そういうことなんでしょう。基本ポジションとは関係のない、自分主体で相手からボールを奪い返すプロセスに対して積極的&効果的に関与しようとする強い意志。それを、選手全員に深く浸透させられているということです。その意志の現出が、「攻撃の後には守備という意識・・」なんて小林さんが表現する「素早い攻守の切り替え」というわけです。もちろんセレッソの「個の才能」たちにしても例外じゃない。彼らは、攻守にわたるハイレベルな組織プレーを基盤に、タイミング良く個人勝負プレーを繰り出していくのです。優勝争いをするところまで上り詰めたのには、確固たる背景要因がある・・というわけです。とはいってもこの試合では、ヴェルディに試合全体の流れを牛耳られただけじゃなく、多くの決定的チャンスも演出されてしまったけれどネ・・。

 ということでヴェルディ。まあ、「これ」もサッカーだから仕方ないけれど、とにかく「結果」は理不尽なことになりました。何本あっただろうか、ヴェルディが作り出した完璧な決定機・・。まあたしかに、両チームを通じた最初のチャンスは、前半8分に飛び出したセレッソの見事な組織コンビネーションからのシュートシーンだったけれど(素早いボールの動きから、最後は黒部のグラウンダークロスを古橋が右足一閃!)、その後は、もうヴェルディの一人舞台だったのですよ。前半10分の、スルーパスに抜け出したジウの100%フリーシュート場面を皮切りに、平野の中距離シュート、ワシントンの右足シュートやヘディングシュート、ジウのヘディングシュート、後半に登場した玉乃の完璧なフリーシュート(相手をドリブルで翻弄し、ペナルティースポット手前で完璧なフリーシュートを放ったけれど、信じられないことにゴール左へ外れていった・・)等々。それでもゴールを割ることができず、最後は、セレッソのワンチャンスFKが見事な弧を描いてヴェルディゴール左隅へ・・。それにしても、古橋の見事なフリーキックゴールではありました。そして、ゲーム内容でセレッソを圧倒していたヴェルディが悔しい負けを喫してしまう。まあ、これもサッカーということだよね。

 この試合のヴェルディは、立派なサッカーを展開しましたよ。「我々は、このサッカーをつづけていかなければならない・・」。敗戦の将とは思えない、ヴェルディ監督バドンさんの力強い言葉も道理。セレッソの小林さんも認めていた通り、この試合でのヴェルディは、高い守備意識に支えられ、彼ら本来の「個のチカラ」を「組織」でも存分に発揮するという高質なサッカーを魅せつづけてくれたのです。仕掛けが中央ゾーンに集中してしまうという悪いクセが出ることもなく、しっかりとサイドからの仕掛けを展開するヴェルディ。「そうだよ・・その仕掛けイメージでチームが一丸になったら、アンタたちには敵はいないよ・・」なんてことを思っていた湯浅でした。それにしてもツキに見放されたヴェルディといったところですかね。

 また、この試合で魅せたヴェルディの好調サッカーには別の要因もありそうです。それは、ヴェルディが抱える「斜に構えた才能」たちが、守備と素早いパスの「つなぎ役」に徹していたことです。表現を換えれば、彼らが、不必要に上がっていって仕掛けプロセスをリードするというシーンが少なかったとも言えます。そのことが殊の外ポジティブに作用したかもしれないのですよ。要は、小林慶行とか林健太郎が、ディフェンスに徹するだけではなく、ボールを持っても、小林大悟や平野孝(玉乃淳)、またワシントンやジウにシンプルに(タテへ)つなぐプレーをイメージしていたことです。彼らが上がって仕掛けプロセスに参加した場合、多くのケースで「無為なスピードダウンや逃げの横パス」ということにつながり、チームの仕掛けリズムを(シンクロしていた仕掛けイメージを)崩してしまっていましたからね。

 とにかく、バドンさんが言うように、このゲームで魅せた高質なサッカーを「そのレベル」で継続できれば、確実に「リーグ残留」も見えてくるはずです。まだ4試合「も」残っているのですからネ。あっと・・次の対戦相手はレッズじゃありませんか。これは面白くなった。ガンバとの大一番に惜敗し、再び勝ち点差「7」をつけられてしまったレッズだけれど、こちらも「まだ4試合もある」わけだからネ。この時点では、優勝争いにしても「降格リーグ」にしても、とにかく「追いかける方」が有利なのですよ。最後は(自分主体で)自由にプレーせざるを得ないサッカーだからこそ、守りに入った方は、確実にパフォーマンスダウンという心理的な罠にはまってしまう危険と対峙しているというわけです。これまた来週が待ち遠しくなりました。

 



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