湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第8節(2004年10月3日、日曜日)

 

次のレッズ戦で本来のダイナミックサッカーに戻ることをターゲットにしているマリノス(?!)・・(マリノス対レイソル、0-1)

 

レビュー

 

 中盤での忠実で激しいダイナミック守備をベースに、人とボールがよく動くハイレベルな攻撃を展開するレイソル。それに対して、どうもうまくペースをアップさせられないマリノス。前半のシュート数では、レイソルが圧倒していましたよ(レイソルが、マリノスの二倍以上のシュートを放っていた!)。

 ペースアップがうまくいかない?! 要はマリノスが、中盤でのレイソルの積極ディフェンスに人とボールの動きを抑えられて足が止まった状態に陥ってしまったということです。そんなだから、マリノスの仕掛けが、どうしても「個のチカラ頼り」になってしまうのも道理。アン・ジョンファンが仕掛けるゴリ押しのドリブル勝負が必要以上に目立ってしまって・・。まあ、ドゥトラの不在に代表されるけれど、どうも「仕掛けイメージを引っ張るキーパーソン」に欠けている・・ということでしょう。

 この試合でのマリノスも、前回のレポートでも書いたように、後方での落ち着いたパス交換によって「最終勝負イメージの準備」を整え、一瞬フリーになった後方のボールホルダーが一発ロングラストパスを通そうという必殺の仕掛けを意図していたと感じられました。もちろんそこでは、その最終勝負イメージを共有した最前線のパスレシーバーの動き出しも大前提なわけですが、でもそんな最終勝負は、レイソル守備ブロックも先刻ご承知のようで、最前線での飛び出しに対するマーキングだけではなく、中盤でのパス出しステーションもしっかりと意識して抑えていました。

 私は、マリノスが逆に、これまでの試合で何度かうまくいったこともあって(?!)、一発ロングパス勝負という仕掛けイメージに固執し過ぎているという部分もあると感じていました。それが、忠実で積極的なディフェンスをベースに、動きのある組織プレーを基盤に攻め上がるというオーソドックスなサッカーが影を潜めてしまった要因の一つだと感じていたということです。

 ということで、全体的なゲームの流れを牛耳るレイソル。でもチャンスにおけるゴールの可能性の大きさという視点では、やはりマリノスも存在感を発揮していましたよ。要は、個のドリブル勝負とセットプレーに、レイソルを上回る絶対的な迫力があるということです。流れのなかでうまく仕掛けられないマリノスでしたが、特に前半では、何本か、セットプレーからチャンスを演出していたし、アン・ジョンファンやユー・サンチョル達が仕掛ける個の勝負にも大きな可能性が秘められていた・・。ということで、ここでも逆の見方をしておかなければなりません。要は、それがあるからこそ、全体的なサッカーのペースを、「オーソドックスなプロセス」でうまくアップさせられないとも言えるということです。

 そんなマリノスでしたが、後半19分に、那須との交代で佐藤由紀彦が登場してから、プレーリズムが大きく好転します。それまで左サイドだった遠藤が本来の守備的ハーフ位置へ戻り、右サイドの田中隼磨が左サイドへ回ります。そして佐藤由紀彦が本来の右サイドから仕掛けていくという布陣。ようやくチーム全員が、マリノス本来の「組織による仕掛けイメージ」を共有できるようになったということです。そして、ダイナミズムが倍増した中盤ディフェンスと人とボールの活発な動きをバックボーンに、まさにオーソドックスなプロセスによってマリノスのゲームペースが格段にアップしていくのです。そして見ている人々に、「やはりマリノスは底力がある」と再認識させてしまう・・。

 でも結局は、そのペースアップが結果につながることはありませんでした。逆に、鋭いカウンターからレイソル玉田に決勝ゴールを奪われて痛い敗戦を喫してしまうのです。このゴールシーンでは、オーバーラップして決定的クロスを送り込んだ波戸にも0.5点をあげなければいけません!

 今のマリノスのサッカー内容は、久保やドゥトラといった仕掛けイメージのキーパーソンたちの離脱もあって、本来のチカラの「60-70%程度」といったところでしょう。たぶん彼らは、二週間後のレッズ戦を、完全復調を果たすためのキッカケとなるターゲットマッチと位置づけているはずです。さて、いろいろな意味を包含するその勝負マッチが楽しみになってきた・・。

 



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