湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第8節(2004年10月2日、土曜日)

 

今のレッズの強さは本物だ・・(ジェフ対レッズ、0-4)

 

レビュー

 

 ホントにレッズの最終ラインは強いな・・。後半早々に「2-0」とリードしてからは、レッズの守備とジェフの組織的な仕掛けコンテンツに目を凝らしていました。そして、そんなことを感じていたというわけです。もちろんそれは、ジェフが仕掛けてくる攻撃の内容が決して悪くなかったからに他なりません。

 失うモノがなくなったジェフが、攻守にわたってギリギリのプレッシャーをかけつづけてくる・・にもかかわらず、守備ブロックが振り回されることなく、ミッドフィールドで守備の起点をうまく演出しつづけるレッズ(山田、酒井、そして鈴木啓太に拍手!)・・だからこそ、最終ラインの強さが際立った・・。

 永井、アルパイ、トゥーリオ、ネネ、そしてアレックス。最終ラインを構成する五人のうちの四人は「新戦力」です。だから、移籍してきた外国人(外国生まれ)選手によって強くなったなんていうことも指摘されているとか。たしかに補強はうまくいきました。レッズマネージメントに拍手です。とはいっても、良い選手が入ってきても、すぐにチームが強くならないこともサッカー的な真実です。そこが、本物のチームゲームであるサッカーの隠し味ということですが、だからこそ、選手たちの能力やパーソナリティーをうまくマネージしているギド・ブッフヴァルトとゲルト・エンゲルスのコンビにも大きな拍手をおくらなければならないということです。

 試合後の記者会見。そこで、ギドに対してこんな質問をしてみました。「田中達也や永井雄一郎といったフォワードの選手をサイドバックに使っているが・・それは、守備ができなければサッカーなんて出来ないというアナタの姿勢のデモンストレーションなのか?・・彼らにはどんな指示を出していたのだろうか?」。それに対しギドが、「ナビスコカップのときは、アレックスは代表で平川はケガだったから田中達也しかいなかった・・またこの試合では、村井を抑えるというタスクを永井雄一郎に与えたのだけれど、彼は本当によくやってくれた・・とにかくオレは攻撃的なサッカーがやりたい・・(本来とは違った守備的なポジションをやることで?!)選手たちも色々なコトを学べるに違いない・・」なんてコトを答えていました。

 ちょっと私の質問の仕方が悪かったかも。「彼らをサイドに使うことで、守備に不安はなかったか?」とシンプルに聞いておけば、もっと明快な答えが返ってきたに違いない(反省!)。とにかくギドが、攻撃的なサッカーをやりつづけようとしていること、そして守備ができない選手は、ギドが考える攻撃的なブレッシングサッカーにとって大きなマイナスだと考えていることだけは確かです。そんな確固たる守備意識こそが、「ポジションなしのサッカーという理想」に近づいていくための大前提ですからネ。考えてみたら、山田信久、田中達也、永井雄一郎、長谷部等々、ギドによって、より広範なタスクを与えられた選手も多い・・。フムフム・・。

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 それにしても(最終ラインも含めて)レッズは強い。ジェフの名将、イビチャ・オシム監督が、試合後の記者会見でこんなことを言っていました。「両チームとも同じようにしっかりと走れるチーム・・しっかりとボールを動かせるチーム・・そんなチーム同士の対戦となったら、やはり個人的に能力が高い選手がいる方が有利だよ・・そんなチームに勝つためには奇跡が必要だな・・とはいっても、前節のレイソル戦で失った我々のレギュラーフォワードがいれば状況は違ったものになっていたに違いない・・何せ、我々のフォワード連中も、エメルソンに負けじ劣らずの俊足ぞろいだからね・・」等々。

 とにかく、そんなに高いとは言えないレベルの個の能力たちを、あそこまでハイレベルなグループに仕立て上げたイビチャ・オシム監督の手腕に対しては、心からの敬意を表している湯浅なのです。この試合でも、(たしかに、オシム監督が言うように、いくつかのミスはあったにせよ・・)ジェフが展開した組織サッカーが高質だったからこそ、逆にレッズの強さが際立ってしまった(彼らの特徴ある強みが引き出されてしまった?!)という視点もあるでしょうしネ。

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 この試合でも山田暢久は、攻守にわたって素晴らしい「覚醒プレー」を展開しましたよ。自分から積極的に仕事をさがしつづけるプレー姿勢・・。素晴らしい。だからこそ、中盤パートナーである酒井と鈴木啓太のプレーも、攻守わたってどんどんとアクティブになっていったという視点もありました。そこに、山田の守備能力に対する信頼感があったということです。

 覚醒した山田は、このまま新境地へと発展しつづけることでしょう。一度、積極的に仕事を探すというエキサイティングな経験をしたら(その、深く哲学的な楽しみに触れたら!)、決してそこから逃れられないものなのです。そして試合中やトレーニング中に、「あの」山田暢久の口から「なんでもっとしっかりディフェンスしないんだ〜〜っ!!」なんていう怒鳴り声が飛び出す・・。それこそ本物の自己主張です。観ていて心地よいことこの上ないじゃありませんか。

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 ちょっとここで視点を変えようと思います。それは、ボール奪取ポイントから最前線への直線的な仕掛けが素早いなど、タテパスからドリブル勝負へのスムーズな流れを主体にしたカウンター攻撃があまりにも危険だから印象に残りにくいけれど、レッズが展開する組織的な「遅攻」にも見所がある・・というポイントです。

 人とボールの動きが、以前から比べれば格段にアクティブになっているし、そこで交わされる素早いタイミングのシンプルパスもいい。そのように、しっかりと人とボールを動かしつづけることで相手守備の薄いゾーンへ効果的にボールを運べるからこそ、良いカタチでドリブル勝負に持ち込めるというわけです。もちろんそこには、パスでの最終勝負とドリブル勝負というオプションもある。

 とにかく、山瀬と長谷部が抜けても、才能を覚醒させることで十分にバックアップしてしまう今のレッズは、たしかに強い。相手が守備を固めてくることで攻めあぐんだとしても、爆発ドリブル勝負や必殺のセットプレーという武器に対する「確信レベル」が高いから、まったく動じることなく自分たちが志向するダイナミックなブレッシングサッカーを実行しつづけられるのですよ。この試合でも、ポスト直撃という最初のチャンスはセットプレー(CK)からでしたよね。そのシーンの後、レッズのサッカーが格段に落ち着きを魅せたと感じました。もちろん「ダイナミックな有機連鎖が高みで安定している」という意味での落ち着きですけれどネ。

 さて、このレッズは、どこまで突っ走ることができるのか。「たしかにレッズは良いチームだけれど、修正しなければならないポイントもある・・」。イビチャ・オシム監督が、そんなことを言っていました。さて・・。質問しようと思ったら、もう記者会見が終わっていました。まあ、何度かあったウラを突かれたシーンとか、素早いボールの動きに守備ラインが振り回されたシーンとか・・そんなポイントをイメージした言葉なのかもしれません。今度イビチャさんに会ったら、彼がイメージする「レッズ攻略法」を聞かせてもらうことにします。

 



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