湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第10節(2004年10月23日、土曜日)

 

確かに、今シーズンのベストマッチの一つでした・・(アントラーズレッズ、2-3)

 

レビュー

 

 レッズのカウンターをものすごく警戒したゲーム戦術で(守備ブロックの組織をなるべく崩さないように注意深く攻め上がるという戦術イメージで?!)ゲームに臨んでいるアントラーズ・・それに対し、例によって中盤からの積極的なボール奪取勝負を仕掛け、そのまま相手ゴールまで、個の能力を最大限に活かしながら素早く、ダイナミックに迫るレッズ・・といった構図ですかネ。ちょっと表現が稚拙とは感じるけれど・・。

 とにかく、素晴らしくエキサイティングでダイナミックな、見所てんこ盛りの魅惑マッチになりました。両チームともに守備ブロックが安定しているからこそ、彼らが抱える選手の「質」に準ずるように、よりハイレベルな戦いになっていく・・。私が観たなかでは今シーズンのベストマッチの一つです。

 「前半は両チームともに仕掛け合うという素晴らしい攻撃サッカーが展開された・・それは日本全国へのJリーグの素晴らしいプロモーションになったはずだ・・そして後半は、浦和レッズが、日本全国に対してその存在感をアピールした・・とにかくこの試合は、(サッカーの面白さ・魅力を最高のカタチでアピールできたという意味で)日本のサッカーにとっても、大いに価値のあるものだったと思う・・」。試合後のギド・ブッフヴァルト監督が、胸を張っていましたよ。もちろん彼は、この試合が、NHK総合放送の全国中継だと知っていたというわけです。たぶん選手たちもネ・・。ギドの言うとおり、素晴らしく魅力的なサッカーが展開されたこのゲーム。私は、我々サッカー関係者は、両チームに対して感謝しなければいけないと思っていました。

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 ゲームですが、内容的にもレッズが「順当に勝ち切った」と言えるものでした。レッズのサッカーが確実な発展をつづけているということです。もちろんその絶対的なベースは、受け身ではなく、あくまでも主体的で積極的(攻撃的)な守備意識。規制ディフェンスではなく、あくまでも解放ディフェンス! その浸透こそが、いまのレッズの躍進を支えているというわけです。今シーズンのレッズのキャッチフレーズ「規制から解放へ!」のベースも、もちろんクリエイティブな守備意識というわけです。

 でもゲームの立ち上がりは、レッズの意図(ゲーム戦術)に対して不安がつのっていましたよ。何せ、この二試合、二列目として攻守にわたって積極的に仕事を探し、効果的に実行しつづけた山田暢久が右サイドへ戻ったことで、見た目には、田中達也(左)、エメルソン(センター)、そして永井雄一郎(右サイド)のスリートップになっていたのですからネ。いままで希にしか機能しなかったスリートップ・・下手をすると、三人ともに最前線のフタに成り下がり、前線のスペースを自ら潰してしまうのがオチ・・なんて、心配ばかりが先に立ってしまったというわけです。でもフタを開けてみたら、誰も「最前線のフタ」に成り下がることはなかった・・。

 「イメージとしては、エメルソンのワントップ・・永井と田中には、攻め以外にも、アントラーズの中盤の底からゲームを組み立て仕掛けのコアになることの多いボランチコンビ、中田浩二とフェルナンドをしっかりとマークするようにという指示を与えた・・二人とも、素晴らしい仕事をこなしてくれたよ・・」

 私の「この試合での前線には、どんなプレーイメージを与えたのか・・スリートップというイメージなのか・・それともエメと田中のツートップで、永井の二列目なのか・・それとも・・」という質問に、ギドが丁寧に答えてくれたというわけです。ナルホド・・。

 私のメモには、最前線ゾーンで魅せつづける永井雄一郎の攻守にわたる高機能ぶりが、たくさん記述されていましたよ。例えば・・「スリートップには痛い記憶がある・・いや違うかな・・永井は前後左右にかなりフリーにプレーしている・・永井と田中のポジションチェンジも頻繁だ・・特に永井の守備意識の高揚が目立ちに目立っている・・これもサイドバックをやったことの効果?・・とにかく最前線の三人は、スペースをマネージするという視点でもうまく機能している・・そのことで山田のオーバーラップも(二列目を経験したこともあって?!)より創造的なモノに進化している・・だからこそ、誰も最前線のフタになることがない・・」等々。

 また田中の守備について、こんなメモがありました。「後半19分・・左サイドをドリブルで突破した本山へ、最前線から戻った田中達也が全力のチェイス&チェックで追いつめ、最後は抑え切った・・素晴らしい主体ディフェンス・・」。

 田中の積極&実効ディフェンスについては、ギドも、「この試合での田中は、ゴールだけじゃなく、守備でも大活躍だった・・見ただろう?・・とにかくヤツの守備プレーは素晴らしかったよ・・だからこそ攻撃でも素晴らしいプレーができたということだ・・」なんて意味のことを言っていました。

 そんな発言の至るところに、やはりサッカーの全てのスタートラインは守備にあり・・という大原則が含まれているというわけです。互いに使い・使われるメカニズムに対する深い理解と相互信頼をベースに、全員が(リスクチャレンジも含む!)攻守わたり、ボール絡み・ボールなしの状況において仕事を探しつづける・・。

 それにしてもレッズの中盤守備は素晴らしい。全員の意識が「有機的に連鎖」しているからこそ、全員が自信と確信をもって「前でボール奪取勝負」を仕掛けつづけられる・・ということです。そこで一人でも、本当にちょっとでも、アリバイプレーにはしったり、サボったりしたら、すぐにでも、その「ネガティブ・ビールス」がチーム全体に波及してしまう。そうなったら、リカバーに、ものすごいエネルギーが必要になってしまう。そう、サッカーが本物のチームゲームであり、一つ一つのプレー意図が、常に、有機的にリンクしていなければならないから・・。

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 鈴木啓太についてのメモ・・「鈴木啓太が魅せつづける素晴らしい中盤での穴埋め作業・・チェイス&チェック、カバーリング、ボールなしマーキング、ボール奪取勝負、インターセプト・・素晴らしく実効あるプレー・・味方に信頼され、頼りにされるはずだ・・完璧な「守備の起点」になっている・・だからこそ、長谷部や永井、両サイドの読みディフェンスがうまく機能する・・だからこそ、周りのオーバーラップに、後ろ髪を引かれない勢いがある・・」等々。

 長谷部について・・「後半39分・・エメルソンの右足から炸裂した才能ほとばしりシュート・・決勝ゴールになるかな??・・まあ、この安定したレッズ守備ブロックだったら残り10分くらいは守りきれるだろう・・守り切るという現象の意味・・それは、ギドがレッズが現役の頃、彼とのインタビューで話し合った・・その頃ヤツは、まだ日本人には、最高の集中力で守り切るというプレーは難しいと言っていた・・でも、今は違うだろう・・何せ、選手たちは全員が主体的に仕事を探しつづけられるようになっているのだから・・あっと、エメルソンのゴール・・素晴らしいシュートだったけれど、そのキッカケを作り出したのは、何といっても長谷部・・中盤での素晴らしいボール奪取から、ココゾの、タテスペースをつなぐ直線ドリブルで相手を十二分に引きつけた・・この試合では、そんな、吹っ切れた突進ドリブルを何度も披露した長谷部・・この試合でも、この若き中盤コーディネーターは、後方からのゲームメイク&チャンスメイクなど、大車輪の活躍を魅せつづけた・・本当に素晴らしい・・」等々。

 まあ、まだまだメモはありますし、試合後インタビューにおいてトニーニョ・セレーゾが「組織プレーでの連動がうまくいけば、運動量を抑えることができる(投資対効果レベルを、より効率的に上げることができる?!)・・」という興味深い発言があったなど、まだまだレポートのポイントはありますが、まあ、今日はこんなところで・・。

 



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