湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


 

第15節(2004年6月26日、土曜日)

 

全体的に良いプレーが出来ている今だからこそ、「次のステージ」へ向けた発展イメージの浸透を・・レッズ対FC東京(2-1)

 

レビュー

 

 私が6月11日にヨーロッパへ出掛けてから、レッズは1分け2敗。でも数字の結果を見る限り、内容的には決して悪くない。

 第12節アウェーでのグランパス戦でも、3-0というスコアにしては、シュート数はまったくの互角だし、コーナーキックの数ではグランパスを上回っている。特に第14節の、ガンバとのアウェー戦では、エメルソンが、ドカン・ドカンと二ゴールを決めてリードしたにもかかわらず(最後は逆転されてしまったけれど)、その後もしっかりとシュートチャンスを作り出していたことが記録されている(ホームのガンバが12本なのに対し、アウェーのレッズは18本のシュートを放った!)。ツキに見放されていた? さて・・。

 ということで、ファーストステージ最終節のFC東京とのゲームをビデオで確認することにしました。

 見はじめてすぐに、今朝のオランダ対スウェーデンのゲームコンテンツがイメージに重なってきてしまいました。そして、「何だ・・どうしてそこでチェイシングやチェックの勢いが減退しちゃうんだ!!」なんて憤ったりして・・。

 たしかに全体的にはダイナミックなサッカーになっているように見えても、局面では、まだまだ気抜けシーンが目立つと感じていたのです。ギド&ゲルトのコンビになってから、解放されたリスクチャレンジプレーという(ギドは前からプレスを掛けていくサッカーなんて表現しているけれど・・)魅力的サッカーに変身したレッズ。幸運なことに結果もついてきています。でも、もっと出来る・・。強いオランダの攻撃を最後まで抑制しつづけたスウェーデンの感動的な積極プレーが、レッズ選手たちにまったくできないなんてことがあるはずない・・なんてネ。

 決してレッズのゲーム内容が悪いわけじゃないのです。いや、全体的には、私のイメージ通りの積極的なダイナミックサッカーを展開しているのです。逆に、そんなポジティブな流れにある今だからこそ、もっともっと発展イメージを先鋭化させる努力をつづけなければならないということが言いたいのですよ。世界との「最後の僅差」を縮めていくために、「グラウンド上の小さな出来事」に気をつけ、それを一つひとつ修正していく努力を・・。

 最終的には自由にプレーせざるを得ないサッカーでは、やはり、「姿勢」が大事です。極限まで自らの可能性を突き詰めていこうとする、主体的で哲学的な姿勢。くり返しますが、レッズ選手たちのプレーが悪いわけでは決してないのですよ。でも私が、彼らのプレー姿勢に「突き詰める」という極限の意志がまだまだ不十分だと感じていたことも確かな事実だったのです。これも、ヨーロッパ選手権という「素晴らしい刺激」によって、わたし自身の発展志向が活性化されたということなのかも・・。

 例えば山田信久。本来のプレーコンテンツを取り戻してきているようで、攻守にわたってある程度は積極的なプレーを展開しているけれど、どうも「ココゾ!の場面」でサボる(気力が抜けてしまう!)傾向は、まだまだ改善されていない。

 例えばこんなプレー。オーバーラップしてドリブル勝負したけれど、ちょっとしたミスからボールを奪い返されてしまう・・ただ、ボールをもった相手選手は、まだまだ自分の守備範囲・・すぐにディフェンスへ入り、全力ダッシュで追いかけたら確実にボール奪取アタックができるタイミングなのに・・でも山田のアクションは完全に弛緩してしまい、結局は様子見になって置き去りにされてしまう・・。そんなプレーを観ながら、攻守の切り換えは、自らの意識の高さと意志のみが行動ベース・・という普遍的なテーマを反芻していました。

 そんな「局面での気抜けプレー」という課題が見え隠れしていたのは、この試合で攻撃ブロックに入ったアレックスも同じ。彼の場合は、基本タスクをディフェンスに戻した方が絶対にいい。それでなくても攻守わたるボールなしのプレーダイナミズムに課題を抱えている彼なのに、前線へ置いたら、守備でのイメージが空っぽになってしまうだけではなく、全体的な運動量も減退してしまう・・。

 私が言いたいことは、前任者からチームを受け継ぎ、選手たちのマインドを解放したギド&ゲルトのコンビだけれど、今度は、選手たちの主体的な意識の高さ(≒インテリジェンス)が問われるということ。もちろんコーチングスタッフによる心理マネージメントが基盤だけれど、やはり最後は、選手たちの自覚しかないというわけです。

 何度も繰り返しますが、この試合でレッズが展開したサッカーが悪いというわけじゃ決してないのですよ。しかし、そこからもっと上を目指していくという発展志向が明確に見えてこなかったことも確かなことだった・・。

 ちょっと私の評価基準が不安定になっているのでしょうか。この2-3週間で、私の評価基準イメージは、確実にヨーロッパ選手権レベルへとシフトしてしまいましたからね。でも、それでいいのだ・・と思い直してレポートしているというわけです。ドメスティックのレベルにとどまり、これくらいでいいや・・なんていう姿勢ほど人間のマインドを腐らせるものはありませんからね。とにかく上昇志向、発展志向に対するモティベーションこそが私の使命だなんて、大それたタスクイメージを反芻しているのです。

 それにしても、長谷部と山瀬の守備的ハーフコンビは、キャパが高いですよね。これだったら本物のボランチコンビと呼べるところまで発展していけるかもしれない・・。そこには酒井や鈴木という強力なライバルたちもいるから、モティベーション基盤も十分だし・・。

 とにかく、いまのレッズを観察することほど、わたし自身にとって有意義な学習機会はないと再認識していた湯浅だったのです。セカンドステージが今から楽しみで仕方ありません。

 



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