湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・セカンドトステージの各ラウンドレビュー


第8節(2002年10月12日、土曜日)

期待していたのですが、ちょっと肩すかし・・(ヴェルディー対エスパルス=2-0)

レビュー

 さて、ヴェルディー対エスパルス。この試合での注目ポイントは、まず何といっても、エジムンドかいないヴェルディー。また三浦淳宏のスタメン復帰。ここのところ、小林大悟、田中隼磨、高木成太が抜け、中盤での忠実プレーをベースにしたダイナミズムを演出できないにもかかわらず、エジムンドが中心になった、ここ一発の「才能をベースにした局所的な仕掛け」で勝ちを拾っているという印象の強いヴェルディーですからね。

 中盤ダイナミズムの「コア」は、何といってもディフェンス。それが、メンバーが替わったことで、かなり低調なレベルを推移していると感じるのです。積極的なディフェンスとは、ボールチェッカーを「イメージのコア」にした「次のディフェンスアクション」が高質だということなのですが、どうも、ここ2-3試合のヴェルディーでは「相手のミス待ち」という姿勢が目立っているようで・・。要は、自分から仕事を探し、ボール奪取のために常にチャレンジしていくという姿勢のことです。サッカーは、「行かなければ(自分主体でボールに絡んで行かなければ)」まったくミスが目立たない(ミスだと認知されない)という世界ですからね。

 また攻撃でも、以前は活発だった、中盤の低い位置からの「クリエイティブなムダ走り」もカゲを潜め、「絶対的」な状況にならなければ、ボールがないところでの決定的アクションも活性化しません。まあエジムンドがいれば、彼にボールを集めて仕掛けていく(彼が良いカタチでボールをもったときが仕掛けのスタートサイン!!)という攻撃イメージだけは統一されていますがネ。でもこの試合では、その「攻撃での絶対的なコア」が欠けている。さて・・。

 対するエスパルスは、バロンとアン・ジョンファンのツートップ。右サイドのハーフには平松。そしてアレックスは、中盤上がり目の「左サイド」。澤登はベンチスタートです。

 これですよ。私は、アレックスの調子が上がらないのは、彼の「守備参加レベル」が低下していることに起因していると思っているのです。これは、苦悩がつづいた先シーズンの中田英寿にも言えます。中盤での「自分主体(インテリジェント)ディフェンス」が活性化するのに呼応して、彼の全体パフォーマンスが格段にアップしたことは事実ですからね。そして、ポーランド対日本代表の試合で「発想のブレイク」を果たした・・!?

 このことは、フラムの稲本にも言えます。私は、まだ彼が、持てるチカラを存分に発揮できていないと思っているのですが(以前のコラムを参照してください!)、彼も、中盤でのより積極的なディフェンスが、もう一つ上のステップへ上がるためのキーだと思っているのです。もちろん無闇に「下がりすぎる(深追いしすぎる)」のは逆効果ですがネ。要は「バランス」なのです。

 ちょっと余談が多くなってしまいましたが、とにかく、この試合でのアレックスの「全体パフォーマンス」がポジティブに変化するかどうかも注目ポイントなのです。

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 さて試合がはじまりました。そしてまず、「フ〜〜ッ」という溜息が出てしまいました。期待して観はじめたのに・・。とにかく緩慢なテンポの試合内容なんですよ。両チームともに、仕掛けていく・・という姿勢が「明確」に見えてこないのです。攻撃でも、守備でも・・。

 もちろん、両チームともに足許パスばかりだから、守備が破綻する(ウラを取られる)気配さえ出てこない・・、ということで、守備での見所が少ない・・。

 とはいっても攻撃では、仕掛け段階にはいったところでの、高い技術をベースにした「急激なテンポの変化」があることで、危険度ではヴェルディーに軍配が上がります。彼らの場合は、ボールを持った選手の「挑発キープ」によってエスパルスの選手をアタックモーションに誘い、瞬間的にその「逆」を突いてしまうドリブルやワンツー等で、急激にテンポアップするというのが典型的な「仕掛けスタートのサイン」ということです。たしかにヴェルディーは、局所的に崩していけるだけの「上手い選手」を多く抱えています。でも彼らがホンモノの「良い選手」かといえば、疑問符が・・。まだ彼らは、才能が「諸刃の剣」になってしまうかもしれないというレベルを超越できていないということです。

 ということで、セットプレー以外の「流れのなか」でチャンスができそうな雰囲気ではヴェルディーの方が上。まあ、ヴェルディー得意の「ゲームテンポ」にエスパルスが「はまって」しまったと言えるのかも・・。それでも、2点リードされた後のエスパルスの攻撃にも、攻め上がろうという意志の向上は感じるものの、ボールがないところでの動きが「有機的に連鎖」しないことで(ボールホルダーのパス出しが遅いことで)ボールの動きが本当に鈍重だし、ヴェルディー守備ブロックを崩せるだけのアイデアも感じない。エスパルスは、本当に重傷なのかも。

 アレックスにしても、まだまだ「心理的な悪魔のサイクル」から抜け切れていない・・。彼は、「オレは前線の選手・・」という意識に囚われ過ぎているようです。だから、攻守にわたるプレーに活気が出てこない・・。前述したように、攻撃でのダイナミズムの源泉は(自分独自のテンポで攻撃プレーを展開できるためのイメージ源泉は)、何とっても積極的な守備にあり・・なのです。彼ほどの選手なのですから、自らの(攻守にわたる)ダイナミックプレーでチームメイトに強烈な刺激を与え、沈滞し切ったエスパルスのムードをうち破っていかなければならないと思う湯浅なのです。(アン・ジョンファンもそうなのですが)チームの雰囲気に呑まれてしまい、グラウンド上の自己主張を忘れてしまったアレックス。ちょっと落胆です。



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