湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・セカンドトステージの各ラウンドレビュー


第5節(2002年9月21日、土曜日)

コンテンツ満載のエキサイティングマッチでした・・(ウェルディー対マリノス=1-1)

レビュー

 私はまず、注意深く、両チームの「構図」を追っていました。

 まずヴェルディー。中盤の底の「山田」は、明らかに前気味リベロというイメージでプレーしている(相手が決まった後の忠実なマークからすれば前気味ストッパー!?)・・他の二人の高木と小林大悟は、両サイド中盤でのディフェンスをベースに、前の三人を忠実にバックアップするというイメージ・・この中盤の三人トライアングルを基盤に、両サイドの相馬と田中隼磨が、交代で、タイミング良く押し上げる・・彼らが押し上げたときには、最終勝負シーンに積極的に絡んでいくという積極イメージをもっている・・この試合で先発した玉乃は、攻守にわたり、エジムンドと、実質ワントップの平本の周りでの「衛星プレー」を心がけている・・エジムンドは、例によって、攻撃だけを念頭に「自由」にポジションを移動させている・・等々。

 対するマリノス。この試合では、守備的ハーフ遠藤の代わりに奥が「中盤の底」をベースにプレーする・・点取り屋ウィルのパートナーは坂田・・そして清水が二列目という基本布陣だが、坂田と清水は頻繁にポジションをチェンジしている・・マリノスには、ヴェルディーのような「明確なチャンスメーカー(エジムンド)はいない・・その代わり、奥、上野、はたまたドゥトラ等が、交代に二列目に入っていく・・彼らの真骨頂である「ペナルティー角エリアでの基点の演出」は、ヴェルディー守備陣の「守備のゲーム戦術」がうまく機能しているために、ままならない・・この試合では、ウィルが二列目に下がるというシーンが目立つ(後方からの球出しに対するフラストレーション!?)・・等々。

 さて・・。

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 ゲームのコンテンツは高質ですよ。互いに技術がしっかりとした選手が集まっていますからね。でも前半は、ちょっとカッタるい試合展開ではありました。

 ヴェルディーは二連敗したとはいえ、前に何度も書いたとおり、攻守にわたる全体的な運動量の向上をベースに、チームワークがうまく機能しはじめていると感じます。内容的には「ソリッド」なサッカーを展開しているにもかかわらず、ツキに恵まれず結果につながっていない・・ということです。

 対するマリノスは、やっとファーストステージの「良いゲーム展開に対する明確なイメージ」が戻りつつあり、ゲーム内容にも強さが蘇ってきていると感じます。

 ということで、ゲームの内容自体は、(見方によっては!?)見所十分の面白いゲームだというわけです。

 立ち上がりの20分くらいは、堅い守備ブロックをベースに、マリノスが押し気味というゲームの流れですが、「生命線の両サイドを抑えられている」ことで、うまく決定的チャンスを作り出すことができません。対するヴェルディーも、エジムンドがうまく機能していないことで(運動量が少なく、ボール絡みのプレーにもまだ冴えが見られない)、チャンスは、両サイドの攻撃参加と平本の突破力に頼る・・という展開です。もちろんたまには、エジムンドも、シンプルなパス回しでチャンスを演出してはいますがネ・・。

 前半32分。一発のタテパスで坂田が抜け出し、そのこぼれ球が、うまく、後方から押し上げた奥へのラストパスとなって、マリノスが先制ゴールを挙げます。このシーンでは、ヴェルディーの弱点の一つである、最終ラインの「ここぞの忠実マーク」に明確な課題が見えました。どうも「まだ」ヴェルディーの最終ラインは、「ライン・ブレイク」に対する感覚が確実ではない・・またブレイクした後も、そこからのマークが甘い・・。後半4分には、単純な一発タテパスに、簡単に決定的スペースを突かれてしまいます(走り抜けたのは坂田!)。

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 それにしてもマリノスのディフェンスは強い。最終のスリーバックだけではなく、中盤ディフェンスも、「読み」ベースの、タイミングの良いアタックが冴えわたります。だから、セットプレーの「次の守備」に対するイメージも確固たるものがあると感じます。「セットプレー後の最初の(相手の)展開でボールを奪い返すことこそ、最大のチャンスにつながる・・」。何度マリノスが、セットプレーからの、そんな「ダブルチャンス」を作り出したことか・・。

 後半も、マリノスの実効ディフェンスが冴えわたり、ヴェルディーを押し込んでいきます。後半20分くらいまでは完全にマリノスペース。ヴェルディー選手たちの心理が「悪魔のサイクル」に入りかけていると感じたモノです。それでも・・

 後半の20分くらいから、中盤守備が不安定なことで押され気味だったヴェルディーが、ペースを盛り返しはじめます。それには、後半から交代出場した桜井の働きが大いなる刺激になっている・・と感じました。彼は、前線だけではなく、中盤全体までも守備範囲にしていると感じます。彼の、攻守にわたる大いなる貢献度は、称賛に値します。そんな実効ある積極プレーをつづければ、周りも、パスレシーバーとして積極的に桜井を捜すようになるのも当然の成り行きでした。またエジムンドにしても、二列目を彼に任せ、より最前線に張り出すようになっています。

 後半24分。ヴェルディーが同点ゴールを奪います。交代した桜井からの一発タテパスでエジムンドが抜け出し(本当は、エジムンドの「パスを呼び込む動き」が演出したラストパス!)、そのままGKまでもかわして「ゴールへのパス」を決めたのです。エジムンドが魅せた、素晴らしい決定的フリーランニング。サッカーって、本当にシンプルなもんだよな・・なんて感じていました。もちろん、ボールをもってからゴールを決めるまでのエジムンドのプレーは「まさに・・」という見事なものでしたがネ・・。

 そうか、「シンプル」か・・。

 試合の展開とは関係ないのですが、ここで一言、マリノス攻撃についてコメントを・・。マリノスの攻めは、守備ブロックが安定しているということで(守備への戻りが早く、ブロックのポジショニングバランスがしっかりしている ≒ 直前シーンで前線に残った選手たちにしても、高い位置でのボール奪取をイメージできる!)、守備ブロックの選手たちが、ボール奪取後のロングサイドチェンジや、一発ロングラストパスなどを(要は、長いパスベースの一発カウンターパスを)「最初」にイメージしていると感じます。もちろん、逆サイドでフリーになっている選手や、最前線の選手たちも、しっかりとシンクロしたイメージをベースに、常に「ウラスペース」を意識している。まあ、前述した「セットプレー後のダブルチャンス」と同義ですがネ。

 そして、そんな「一発」が叶わない場合は、ペナルティーエリア角ゾーンへボールを運ぶという組み立てイメージで攻撃を仕掛けていくというわけです。

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 ゲームですが、同点後は、サッカー内容で、ヴェルディーが上回っていきます。もちろんその背景には、マリノス中盤の守備ダイナミズムが減退していったということ「も」ありますし、ヴェルディー中盤でのボールの動きが活性化したことで、マリノスの中盤守備がうまく回転しなくなったという視点もあります(彼らがイメージするボール奪取ができなくなった!)。

 延長でもこの傾向は変わらず、結局ヴェルディーが「惜しいポイント」を逃した・・という印象が残りました。

 最初にも書きましたが、技術のしっかりしたチーム同士の対戦ということで、特に後半からは、エキサイティングなコンテンツ満載という内容にゲームが「発展」していきましたよ。観戦にきた人たちは得をした・・。



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