湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・セカンドトステージの各ラウンドレビュー


第12節(2002年11月9日、土曜日)

素晴らしい試合巧者ぶりでしたよアントラーズは・・(ガンバ対アントラーズ=0-2)・・前後分断システムの限界と、スリートップの可能性に対する期待との「相克」・・(ジェフ対レッズ=1-0)

レビュー

 この日は、ゲームの後に所用があり、書きはじめたのは深夜になってからでした。ということで、この両ゲームで中心的に感じたことだけを短くレポートすることにします。アップが遅れたこと、ご容赦アレ。

-------------------

 ではまずガンバ対アントラーズ戦から。

 この試合では、何といっても、アントラーズの試合巧者ぶりが目立ちに目立っていましたよ。ホームのガンバが攻め上がり、その攻めを余裕をもって受け止め、直線的なカウンターを仕掛けていくアントラーズといったゲーム展開。押し気味であるけれど、決定的チャンスを作り出すことがままならないガンバ・・。両サイドからの攻めはまあまあだし、何本か効果的なクロスは送り込みますが、マグロンと中山がうまく抑えられていることで、それをチャンスに結びつけることができない・・。マグロン&吉原という、「ポストと衛星プレーのコンビネーション」が欠けたことが大きかった!? でも中山の出来が悪かったということではありませんから、アントラーズの守備が老練だった・・とする方が妥当な評価でしょうね。

 それにしても、アントラーズが繰り出すカウンターの効果的なこと。そのゲーム運びを観ていて、「ガンバはホームだから、中盤からの積極ディフェンスを基盤に攻め上がってくるだろう・・ジックリと守り、できれば高い位置でボールを奪い返し、その時点でできているに違いない中盤のスペースを突いてカウンターを仕掛けていこう・・とにかくタテへのスピードをアップして直線的に・・」、そんな意図で、全員のゲーム運びイメージが統一されていた・・なんてことを感じていました。

 でも、意図的に「攻め上がらせる」なんてことは、世界中のどんなチームだって出来るはずがない。まあ、全体的な流れとしては、ホームのガンバが積極的に攻め上がり、アウェーのアントラーズが、「無理して」中盤ディフェンスで競り合わなかった・・ということでしょう。

 それにしてもアントラーズの攻めは、まさにカミソリの鋭さでした。エウレルと柳沢のツートップはもちろん下がり過ぎませんが、本山、小笠原は、守備に入ったら、しっかりと中盤の低いポジションまで引いてディフェンスにつきます。そしてボールを奪い返した途端に、その状況で参加できる者全員が、タイミング良く、直線的に、そして全力ダッシュで攻め切る。そう、そのカウンターに乗れる者全員が、後ろ髪を引かれることなく最終勝負シーンまで絡んでいくというイメージで押し上げていくのです。とにかく直線的に・・タテへのスピードを落とさないように・・。

 この試合では、両サイドの名良橋、アウグストの攻め上がりが素晴らしいアクセントになっていました。ちょっと前までは、サイドのスペースを、本山やエウレル、はたまた小笠原などが埋めてしまう傾向が強かったのですが、そんな彼らが、今では、「ヤツらを前へ送り出す・・」とか、「ヤツらを前へ来させる・・」というイメージでクレバーなサポートポジションに就くのですよ。

 また、ボールを奪い返したポジションが中盤の高いゾーンだったら(ガンバの中盤選手たちの重心が前へ向かっている状況でボールを奪い返したら)、例外なく、素早く最終勝負を仕掛けていきます。そう、そこからの一発ロングラストパスを多用して・・。

 伝統的な堅牢ディフェンスを基盤に、ボールを奪い返した地点、状況によって、瞬間的に「次の攻め方」について明確なイメージを描いてしまうアントラーズ。先日のナビスコカップ決勝もそうでしたが、やっとアントラーズの攻守にわたるプレーが有機的に連鎖してきた・・、選手たちのプレーイメージが明確にシンクロしてきた・・と感じたものです。

 最後に、中田浩二について一言。

 中田浩二の、攻守にわたる実効プレーが目立ちに目立っていたんですよ。ボールを奪い返すテクニックは、もう国際クラス。それに攻撃でも、神出鬼没の実効プレーを魅せつづけていました。組み立ての起点として正確で効果的な展開パスを回したり・・、自らが仕掛けのコアになって決定的スルーパスを放ったり・・、決定的フリーランニングで二列目から飛び出したり・・、はたまた危険な中距離シュートを放ったり・・。

 次のアルゼンチン戦では、稲本、小野、それに中田英寿までが来日しないとか。たぶんジーコは、中盤の底として中田浩二を使ってくるに違いありません。今から楽しみで仕方ないじゃありませんか。彼の、攻守にわたる実効クリエイティブプレーを観ていて、そろそろ、守備的ハーフから、本物のボランチという呼び方に変えなければいけないかな・・なんて感じていた湯浅でした。いや、本当に頼もしい。

--------------------

 さてジェフ対レッズ。

 ジェフがあまりにも早いタイミングで決勝ゴールを奪ってしまったために、ゴールが、その後のゲーム展開を大きく左右してしまいましたが、前半の15分くらいまでは、ジェフの意図がうまく機能していたと思っていた湯浅でした。

 個の勝負ばかりに固執するレッズのスリートップ。また前後が分断しているから、しっかりと勝負シーンに絡んでいくような後方からの押し上げがない。だからジェフ守備ブロックも、そんなレッズの仕掛けに対する明確なイメージをもってディフェンスを展開し、相手のマンマーク守備のウラを突くように、タテのポジションチェンジを多用して攻める・・。それが殊の外うまく機能していたと思っていたのです。

 一旦マークが決まれば、どこまでも付いてくるレッズの守備。だから、前線が戻ってタテパスを受け、後方からの選手を前へ「送り出す」・・そんな全体的な攻めのイメージが、うまく機能していたのです。それでも、やはりゴールの持つ意味は大きい。徐々にゲームが、押し込まれながらも厚いディフェンスブロックで守り、一発ロングパスのカウンターを狙うジェフという展開に落ち着いていきます。

 押し込みつづけるレッズ。それでも、コンビネーションで仕掛けていくという発想自体が希薄なレッズということで、ボールがないところでの動きが活性化しない。だからボールが活発に動かない。そして、単独ドリブル勝負ばかりを仕掛けていく。たしかにエメルソンやトゥットは、何度か、相手を振り切りはしました。それでも、そのイメージで守備についているジェフですからね、背後のカバーリングも万全だというわけです。これでは、ジェフの守備ブロックを崩せるはずがない。

 レッズが、本当の意味でジェフ守備ブロックを崩してチャンスメイクしたのは、前半に平川が、左からドリブルで突破したシーンくらいでしたかね(エメルソンのフリーヘッドと、トゥットのバックアップシュート!)。あっと、後半では、エメルソンの爆発ドリブル突破は一本ありましたがネ・・。

 レッズの場合は、ダイナミックな「効果的つなぎ役」がいない前後分断システムの限界と、抜群の「個」の可能性を秘めたスリートップに対する期待の「相克」・・ってな構図ですかね。まあ、いつも書いていることではありますが。

 ちょっと疲れ気味なので、一番強く感じたポイントだけに絞って書きました。まあ、ジェフ選手たちのクリエイティブな守備意識の高揚など、まだまだポイントはありますが、また機会を見てとポートすることにしすまので・・。アストン・ビラ対フラムの後半から稲本が登場してきたので、それを観てから寝ることにします。では・・



[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]