湯浅健二の「J」ワンポイント


2001年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第10節(2001年5月19日、土曜日)

「変化」を演出できないのでは、いくら勢いがあっても・・浦和レッズvsガンバ大阪(1-2)

レビュー

 今日は絶対に駒場へ行くぞ・・なんて思っていたのですが、またまた、どうしても外せないスケジュールが入ってしまい、二節連続で「テレビ観戦」ということになってしまいました。

 それにしても、テレビ中継の「技術」は上がっているな・・と感心しきり。ディレクターの方々だけではなく、カメラマンの方々も「試合を楽しみながら」仕事をしている証拠!? 「次へボールが動くところ」を予測したようなカメラワークなのです。とはいっても、やはりスタジアム観戦と比べれば「ボールのないところでのドラマ」をすべて把握できるというわけではないですけれどネ。やはりサッカーは「スタジアム観戦」が一番ということですかネ。ア〜〜、駒場へ行けなくて残念・・

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 ここのところレッズは、「前気味ストッパー」の石井が、最終守備ラインに吸収される時間帯が増えてきていると感じます。数試合前までは、「中盤の底」の仕事を十二分にこなしながらも、相手の「二列目」「三列目」が上がってくるような状況では、味方の最終ラインを追い越しても「最後」までマークを離さない・・そんな「クリエイティブで忠実、そしてダイナミック」な守備プレーが目立っていたのですが、ここのところ、どちらかというと「完全なストッパー」という時間帯が増えてきたと思うんですよ。

 もっと中盤での「自分主体のクリエイティブな仕事」をこなして欲しいと思っている湯浅なのですが、「かなり不安定な最終守備ライン」という現実を考えれば、この方が、サイド選手の押し上げも、より「積極的」になれるのかもしれません。何といっても、後ろが心配だったら(後ろ髪を引かれてしまったら・・)、最後の勝負シーンまで思い切り上がっていくにはかなりの決意が要りますからネ。

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 さて試合ですが、連敗中のガンバが、最初から飛ばします。初シュートは、ガンバのビタウ。とはいっても、ドニゼッチと土橋に「前気味ストッパー」の石井も絡むレッズの中盤守備ブロックから最終守備ラインにかけての「人数をかける」強固なディフェンスは、ガンバの単調な攻めということもあり、そうそう簡単には崩れません。まあ、相手守備を崩しきれないという点については、レッズも同様なんですがネ。

 ガンバ、レッズともに、攻撃でのクリエイティビティーに欠けるために、どうしても「攻撃での変化」を演出することができないのです。中盤でのドリブル突破チャレンジ、タメからのスルーパストライ(もちろん決定的フリーランニングとのマッチングが基本!)、仕掛けていくときの「テンポチェンジ」等々・・そんな「攻撃の変化」が・・。レッズでは、ここのところ「プレー内容」が格段にステップアップしている小野伸二の欠場が目立ってしまって・・

 あっ・・と、ゲームにもどりましょう。最初はガンバが勢いよく攻め上がったのですが、徐々にレッズも押し返し、ゲームが拮抗したものに変容していきます。そんな展開になった前半17分、唐突に先制ゴールが生まれます。ガンバが、切れ味鋭いカウンターからゴールを決めたのです。

 右サイドでボールを奪い返した遠藤から、タッチライン沿いにタテパスが通ります。ターゲットマンは、ニーノ・ブーレ。ハードタックルを仕掛けたレッズのストッパー、西野でしたが、うまくすり抜けられてしまって・・

 ニーノ・ブーレと井原との一対一。そしてニーノ・ブーレが、井原を右に外してズバッとシュートを決めたのです。

 その後の25分、今度は、右サイドから組み立てたガンバが、うまいタイミングで逆の左サイドへボールを動かします。そして最後は、稲本から新井場へパスが回り(センタリングを上げるのにボールをまったく止める必要がない完璧なファウンデーションパス!)、そこからのセンタリングを、「後方から走り込んだ」ニーノ・ブーレが、ドカンとヘディングシュートを決めます(西野にはブーレの動きは見えていたはずですが・・)。これでガンバが「2-0」とリード。

 その後レッズが押し込みつづけますが、どうしても「単調」・・。たしかに勢いはあるのですが、点が取れるような雰囲気をかもし出すことができません。ボールの動きが単調なだけではなく、ボール周りでも効果的な変化を演出することもできないから、「次の勝負所」には、明確に「先読み」できるガンバのディフェンダーたちが常に集中してきてしまうのです。もちろんそれには、決定的なシーンでの「ボールのないところでの動き(決定的パスを呼び込むフリーランニング)」が低調だからということもあるのですが、このことについては、もう限りなく何度も書きつづけましたから・・。まあとにかくこれでは、ガンバ守備ブロックを振り回したり、その「ウラ」を突けるはずがない・・ということです。

 この展開は、後半も「基本的」には同じ。たしかに「勢い」は、二倍、三倍にふくれ上がりはしましたが、最終勝負の仕掛けでの「クリエイティビティー(仕掛けの変化)」を演出することができない・・。だからガンバ守備陣にしても、「勢いだけ」をしっかりと受け止めればいいだけ・・ってな具合なんですよ。

 そして逆にガンバにペースを握られてしまったりして・・。押されているだけではなく、チャンスとなったらしっかりと攻め上がっていたガンバは、落ち着いた、立派な戦いを展開しました。後半に交代出場したキーマン、田中達也に対するマーク(意識)もしっかりと準備されていましたしね。ところで調子がよかった山田の交代・・、私は納得していないのですが・・

 そして試合は、一点は返したものの、結局はガンバに守りきられたレッズが、痛い星を落とすという結果に落ち着きました。

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 レッズの攻撃ですが、そこで何らかの変化が出てきそうな雰囲気を演出できていたのは、トゥットはもちろんですが、この試合では右サイドの山田くらいでしたかネ。

 山田は良かったですね。久しぶりに、「才能の片鱗」を感じさせてくれました。フィリップが観戦していたもあるんでしょうが、攻守にわたって、あれだけアクティブなプレーができれば、もしかしたら代表でもチャンスを与えられるかもしれません(ところで、どうしていつもあのくらいのアクティブプレーができないんだ!)。とはいっても、何度か(特に守備において)気の抜けたミスはありましたがネ・・。ねばり強く「チェックをつづけなければならない状況」で、淡泊なアタックを仕掛けて置き去り・・ってなシーンのことです。山田は、守備については、ダイナミック&クリエイティブ、忠実でねばり強い石井のプレーを見習いましょう。

 攻撃では、存分に「秘めたる才能」を発揮していた山田。秘めてばかりいるんじゃプロじゃありません。自己主張ですよ、自己主張。最近の小野のようにネ。

 やはりサッカーにおけるもっとも重要なファクターは「積極性」なんですよ。今週号のサッカーマガジンでも、「世界では、積極性という言葉に含蓄される深遠な意味を理解した者だけが生き残ることができる・・」という意味のことを書いたのですが、定型のないサッカーだからこそ、自分から仕事を探すという姿勢、また、使い、使われるという「組織プレーのメカニズム」に対する理解が、ステップアップのための唯一のベースだということです。

 それにしてもアドリアーノ。たしかに勝負所では怖い存在ではあります。それでも、そこに至るまでがヒド過ぎる。まったくといっていいほど、攻守にわたる「汗かきプレー」をやろうとしません。勝負シーンでの「決定的な仕事」だけがオレの持ち味なのサ・・。そんな姿勢で「生き延びる」ことができたのは、もう20以上前のサッカーなんですがネ・・。とにかく、彼の攻守にわたる「総合的な貢献度」と、彼の稼ぎがバランスしているなどとは全く思えない湯浅なのです。才能は十分なんですがネ・・



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