湯浅健二の「J」ワンポイント


2000年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第1節(2000年6月24日)

FC東京対マリノス(3−0)

レビュー

 ロスタイム。右サイドでボールを奪ったFC東京の右サイドバック、内藤が、大きく前線へフィードします。最初に追いついたのはマリノスの波戸。後ろからは、アマラオが迫っています。

 「あっ、波戸は目測を誤っている・・」。そう感じた瞬間、大きく「滑りながら」跳ね上がったボールが、波戸の横をすり抜けていってしまいます。そこには、同様に、波戸の目測の誤りを「感じて」走り込んでいたアマラオが・・。そのまま、ドリブルに移ります。もちろん波戸は、必死に戻ってきますが、アマラオの「ドリブルのコース取り」のうまいこと。波戸が追いかけるコースの「前へ」巧みにドリブルしながら、波戸を押さえてしまいます。

 そして飛び出してきた川口をあざ笑うかのような「ループシュート」。ボールは、飛び込んできた川口の身体を、フワッと越えてゴールへ転がり込んでいきました。3-0!!

 それは、この試合の内容を象徴するゴールではありました。

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 この試合、渋滞に巻き込まれて遅れたために、ツゥットが挙げた先制ゴールのシーンを見逃したのですが、ライター仲間によると、「マリノスがボールを奪い返し、さあ攻撃だ・・と前へ行こうとした瞬間、小林がボールを奪い返してツゥットへわたり、そのまま強引な突破からシュートを決めたもの・・」ということでした。

 前へ「重心」が移っていく瞬間における「最前線のチェイシングからのボール奪取」。そんなツゥットの姿勢に、今のFC東京の勢いを感じます。

 試合は、完全に、マリノスがゲームを支配「させられて」います。

 ボールはキープしているけれど、まったく東京の守備ブロックのウラを突けないのです。いたずらに横パスをくり返すマリノス。ボールの動きのテンポも遅い。各ステーション(選手)で、例外なくボールの動きがストップしてしまうのです。そして少しキープしてからの仕掛けの意図のない「展開パス」・・。これでは、東京の「忠実・堅実守備の網」に引っかかってしまうのも当然といった展開です。とにかく、一人としてフリーになっているマリノス選手がいないのですからネ・・(少し間合いを空けて、パスを出させてアタックするという東京の守備の意図も秀逸!!)

 ゆっくりとしたキープは、基本的には「ワナ」であるべき。たしかに中村のキープには、「タメ」の意図が見え隠れしますが、周りがそれに呼応しない・・これでは・・

 この試合では、まずFC東京の守備のことを触れなければ・・

 彼らは、基本的には「コンベンショナルなフォーバック」です。ただ、その前にいるダブルボランチ、小池と浅利が、交代に「前気味リベロ」というイメージでプレーします。

 マリノスの攻めがまだ中盤浅いゾーンの場合(この時点では、マリノスのツートップ、外池とエジミウソンは、東京の最終守備ラインのセンター、サンドロと小峯と2対2!)、この二人(小池と浅利)は「高い位置」で守備につき、マリノスが最前線へボールをつないだ場合は、一人は確実に最終ラインに組み込まれます。また、マリノスの二列目が、最前線を追い越すフリーランニングを仕掛けていったときには、確実に、本当に確実に「最後まで」マークし続けるのです。

 たしかにマリノスは、前半では二〜三本、後半早々には二本の決定的シュートチャンスを作り出しました。それでも、東京の守備があまりにも堅実なために、「普通だったら」確実にフリーシュート! という場面でも「誰か」は、そのシューターにギリギリのタイミングでマークに入っています。特に後半2分、右サイドからの崩しからの、東京ゴール前へのラストパスの場面では、後方から爆発ダッシュで走り込み、ダイレクトでのシュート体勢に入った外池(だったと思いますが・・)にも、小峯(だったと思うのですが・・)がギリギリのタイミングでアタックできていました。

 とにかく東京の「首尾一貫したディフェンス」に大拍手の湯浅なのです。

 彼らの中盤守備は、最初は「受け渡し」しますが、一度マークが決まったら、とにかく最後まで、本当に最後まで、しつこくマークをし続けます。「チームコンセプト」が確立し、確実に機能していることを感じます。

 また東京の攻撃もインプレッシブそのもの。主に、アマラオ、ツゥット、増田、小林が絡むカウンター攻撃は別にして、ここが勝負所・・という状況では、後方から、何人もの選手たちが押し上げてくる波状攻撃が特筆モノなのです(この押し上げには、ボールを奪い返した者は確実に最後のシーンまで絡んでいく等のチーム内の決まり事があるに違いない!)。決して彼らは、「次の守り」を意識し過ぎて後ろ髪を引かれる心理状態に陥ることがありません(タテのポジションチェンジがうまく機能していることで、全体的なポジショニング・人数バランスが崩れない・・そして選手たちもそのことを確信している!)。それが素晴らしい。たしかに短い時間帯ではありましたが、何度彼らの、「ココゾの、組織的な波状攻撃」に目を見張らされたことか・・

 ココゾ! の攻めの勝負所をわきまえている東京の選手たち・・。そんな「コンセプト」の結実を見たのが、本当に「夢のような・・」という形容がピッタリの、東京の二点目の場面。

 中盤で、アマラオを経由した「ダイレクトパス」がつながり、最後は、カーブを描きながら「後方から」決定的スペースへ走り抜けた小池に、ツゥットから「夢のようなダイレクトでのスルーパス」が通ったのです。最後尾にいたマリノスの小村は、中央のアマラオ(だったと思いますが・・)につられて逆モーションになってしまって・・。落ち着いて、飛び出してくる川口の右を抜くシュートを放つ小池。彼の、この試合における「攻守にわたる素晴らしいパフォーマンス」を象徴するゴールではありました。

 忠実・堅実なソリッド守備からの、「カウンターと勝負所の波状攻撃」。見応え十分じゃありませんか。FC東京、若く聡明な大熊監督の「優れた仕事」にも拍手を送っている湯浅でした。

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 さて今日はこれから、ヨーロッパ選手権の準々決勝をレポートしなければ・・。ちょっと疲れ気味ですが、ここまできたら意地でも全試合レポートに挑戦しようとしている湯浅でした(フランス対オランダ、デンマーク対チェコはまだですが・・)。ご期待アレ・・



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