湯浅健二の「J」ワンポイント


2000年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第12節(2000年5月13日)

FC東京vsセレッソ大阪(1−2)

レビュー

 「いや、素晴らしいサッカーを見せてもらいましたヨ・・」

 「本当にレベルの高い好ゲームでしたネ・・」

 ライター仲間のフレッド・バーコー氏、マイケル・プラストウ氏との、試合後の立ち話。そこで彼らが異口同音に、この試合を高く評価していました。セレッソ大阪のサッカーについてです。もちろん私もまったく同感。セレッソのサッカーを見たのは、今シーズン初めてなのですが、彼らのハイレベルなサッカーに魅せられてしまった湯浅でした。

 セレッソで目立ったのは、西澤、ノ・ジュンユン、森島、そして西谷による、縦横無尽のポジションチェンジを基調にした「変幻自在」の攻撃、そして、田坂、ユン・ジョンファンで構成するダブルボランチの、攻守にわたる「バランス感覚」でした(もちろん最終守備ラインの考え続ける守備も良かったですが・・)。

 とにかく、これほど相手守備ラインを振り回すような、魅力満載の美しさで、危険な攻撃ができるチームは、今の「J」にはいない?!・・ってなことまで感じてしまいました。特に森島と西澤。基本的に右サイドから攻め上がるノ・ジュンユンと左サイドの西谷に対し、彼らは、本当にめまぐるしくポジションを変えます。

 その四人に、後方からユン・ジョンファンが効果的に絡み(田坂は基本的には前気味のリベロ・・守備主体プレーヤー)、ボールを、それこそ「めまぐるしく」動かしてFC東京の守備ブロックを振り回し、面白いように「決定的スペース」を突いてしまうのです。ある時は西澤が、次の瞬間には森島が、はたまた西谷が・・。特に彼らの、ボールを素早く扱った後の、これまた素早く効果的な「動き(ワンツーの動きや、次のスペースへのフリーランニングなど)」は、基本中の基本とはいえ、感動モノでした。

 また、ノ・ジュンユンの、ベテランらしい「落ち着いた」プレーも見逃せません。たしかに以前のような、タテへの「爆発的なドリブル突破」は減りましたが、それでも「ココゾ!」という決定的なフリーランニングやドリブル勝負は健在。それに、効果的な展開パス、「最終勝負シーン」での、「周りに勝負をさせる」ためのクリエイティブな「タメ」などのクレバープレーが加わったのです。

 セレッソの攻撃は、見ていて本当にワクワクさせられます。バックパスからのロングシュートあり、ドリブル突破あり、ピンポイントセンタリングあり、そして何といっても「素早いコンビネーション」あり・・。その変幻自在で多彩な攻撃は本当に魅力的。最高の賛辞ですが、それでも褒めすぎとは感じません。

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 前半36分。ノ・ジュンユン、森島の素早いパス交換から、最後は西澤へのラストスルーパスが出る。ピッタリとハマったが、FC東京、小峰のホールディング(うまく目立たずにファールは取られなかった?!)で防がれる。

 前半38分。右サイドのノ・ジュンユンから、最前線で決定的フリーランニングを仕掛ける西澤へ決定的パスが通る。そのまま西澤がシュート。惜しくも外れる。

 後半開始直後、43秒。ボールをうばったノ・ジュンユンが、そのまま、爆発的にタテの決定的スペースへ抜け出た森島へパスを通す。シュート!! 惜しくも・・

 直後の2分。ユン・ジョンファンが、ボールをうばってそのまま右サイドへドリブルで進んでセンタリング。西澤が落としたこぼれ球を、西谷がそのままシュート。同点ゴール!!

 後半11分。森島の決定的スペースへの飛び出しにタテパスが合う。ボールをしっかりとコントロールする森島に対して、後ろからの稚拙なファール。PK!! 西澤がキッチリと決めて勝ち越し!!

 西澤の「ポスト」と、そのウラからの森島の「飛び出しタイミング」。本当に素晴らしい。この二人で何度も、何度も「決定的な起点」を作り出してしまいます・・

 その後、闇雲に攻め上がるFC東京の攻めをしっかりと受け止め、何度も、何度も決定的なカウンター攻撃を「カタチ」にしてしまうセレッソ。20分(西澤)、31分(西澤の素晴らしいボールコントロールから、後方からダッシュしてきた森島へ・・フリーシュート・・惜しくもバーを越える)等々・・

 やはりカウンターは「才能」がベースなのです。セレッソの見事なカウンター攻撃に、彼らの「発想」のレベルの高さを感じました(とはいっても最後の時間帯には、コンディション不足なんでしょうか、チャンスなのに自らスピードをダウンさせてしまいましたがネ・・)。

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 この試合、FC東京には、アマラオがいません。また先制ゴールを決めた神野も、前半25分には、左足太股の二頭筋(太股の裏側の筋肉・・主に走るときに使います)を「肉離れ」させて戦列から離れてしまいます(肉離れが明白なのに、再びグラウンドに送り出した東京ベンチの判断には閉口!!)。

 そして東京の攻めに「変化」の予兆が感じられなくなってしまいます。彼らの攻めでは、チャンスを見計らった中盤からのドリブル突破が一つのアクセントになっているのですが(ツゥットや佐藤など)、この試合では、そのドリブル突破のチャンス状況さえも演出できないのです。これでは・・

 ただ東京の守備には見所はありました。それは・・サンドロ!! 彼の「身体的・戦術的な能力」だけではなく、守備における柔軟な発想に脱帽といったところ。周りのチームメイトたちが、東京の「変幻自在攻撃」に振り回されてしまう(足が止まってしまう)という不利な状況だったにもかかわらず、何度もサンドロが、絶対的なピンチを止めていましたからネ。

 FC東京の選手たちは、セレッソの破壊的な攻撃力に神経を使いすぎていたのかもしれません。ボランチの小池、浅利、また両サイドバックが、「ココゾ!」の攻撃参加を見せるシーンも本当に希。これでは厚い攻撃をしかけられませんし、ドリブル突破の「チャンス状況」を演出することも叶いません。

 押し上げれば(もちろん最後の時間帯での、サンドロまでも参加して最終守備ラインを開けてしまうような緊急状況は別ですが・・)、相手も必ずついて戻ってきます。そして今度は、中盤での(高い位置)でのボール奪取(セカンドボール奪取に対する優位性の確保)を繰り返せるようになってゲームのリズムを優位に展開できるようになるのですが・・。東京は、そのキッカケを見つけることができなかった?!

 やはり、アマラオのような、最前線での「起点プレーヤー」が必要なのでしょう。そこにボールがわたれば「自信をもって」押し上げていけるゾ!!と「確信」できるような・・

 「J−2」から昇格し、ダイナミックなプレーで旋風を巻き起こしているFC東京。この試合では波に乗れませんでしたが、そんな「悪いイメージ」は、この日の雨と一緒に流してしまい、気分を変えて、第三節のグランパス戦、第五節のジュビロ戦の(またはそれ以外のグッドゲームの)ビデオを見直しましょう。そして自分たちの潜在能力の高さを再認識し、自信をもって次の試合に臨みましょう。疑心暗鬼になることが最も危険。心理的な悪魔のサイクルに陥ってしまい、持てるパフォーマンスを「自ら」低下させてしまうだけです。

 ガンバレ、FC東京・・



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