湯浅健二の「J」ワンポイント


2000年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第10節(2000年5月3日)

フロンターレvsジュビロ(1−5)

レビュー

 前節のエスパルス戦では、正しい「ベクトル上」にいることを感じさせてくれたフロンターレ。この試合でも、ゲーム開始15分くらいは良いペースで試合を進めます。前へのリスクチャレンジも上々。そして6分には、CKからのこぼれ球を、最後は寺田がけり込んで先制ゴールまで奪ってしまいました。

 対するジュビロの出足はカッタルい・・。福西がいない、中山と高原もいない。ということで、最前線で「ココゾ!」の決定的フリーランニング(ボールがないところでのリスクチャレンジ)を仕掛ける選手がいません。ラドチェンコの動き出しは鈍重で、いつも戻り気味に動いて足元パスを要求します。また前節に決勝ゴールを決めた清水にしても、まず「足元パス」を受け、そこからドリブルなどで突破トライをするタイプ。これではジュビロの攻撃に変化がつかないし、中山や高原の爆発フリーランニングに慣れている周りの選手たちも戸惑い気味・・

 ジュビロらしい、「最後の決定的フリーランニングとラストパスのタイミング」が合ったのは、やっと29分。中盤で、藤田が、中央へボールを持ち込んだ瞬間、左サイドのスペースへ、後方から奧がフリーランニングで走り込んだのです。もちろん藤田から、サイドチェンジ気味の決定的パスが通されます。まったくフリーの奧。それでも、直接シュートを逡巡した(ちょっとトラップミスもあった!)ために、結局はディフェンスに引っかかってしまいます。

 最終ラインに福西がいないこともあるのでしょう、ジュビロ監督のハジェブスキーは、フロンターレ攻撃のコア、アルバレンガに、三浦文丈をピッタリとマークにつけます。三浦は、頭の良い選手。マークをキッチリとこなすだけではなく、チャンスがあれば、どんどんと攻撃に参加していきます。左サイドから、右サイドから、はたまた中央から・・。彼の、クレバーで積極的な攻守プレーに感心しきりの湯浅でした。これこそベテランの味・・ってもんじゃありませんか・・

 ただ試合は、前半の中盤あたりから完全にジュビロペースになってしまいます(フロンターレの攻撃から勢いが失われていったことも要因!)。ただ、ボールは支配しているものの、フロンターレ守備ブロックのウラを突けないジュビロ。たまに清水のドリブル、奥の、後方からのドリブル、はたまた藤田のタメからのラストパス狙いや爆発的な決定的フリーランニングなどでチャンスの芽はできかかるんですがネ・・ってなことを思っていた矢先の、前半ロスタイム。三浦文丈がやってくれました。

 後方から、フロンターレゴール前に空いたスペースへ爆発的に走り込んだのです。すかさずパスを通す藤田(素晴らしいタイミングのパス!・・やっとイメージがシンクロした!!)。そのままドリブルで突き進む三浦(以前のスーパードリブラーのイメージが復活?!)。その瞬間に、西沢、塩川のサンドイッチに遭って飛ばされてしまいます。PK!!

 後半早々にも、タテパス一発に反応した清水が(川口だったかも・・)、まったくフリーでパスを受けたところを、フロンターレGK、菊池に倒され、またまたPK!! この二つのPKを、藤田が冷静に決めてジュビロが逆転です(試合内容からすれば順当・・)。

 フロンターレでは、まずなんといっても鬼木とペドリーニョのダブルボランチがチームの中心になります。彼らが、前線のアルバレンガと「三角形」を形成して攻撃を組み立てます。前述しましたが、前半の15分くらいまでは、前節の「良いサッカーに対するイメージ」を持続し、自信溢れる攻撃を展開していたのですが・・。

 フロンターレでは、ストッパーの西沢と、左サイドの塩川のディフェンスに納得がいきませんでした。なんといっても、「最後の勝負の場面」で、(その時点で自然と)決まってくる、自分がマークする相手に最後まで付いていかなかったり、簡単に「ウラ」にフリーランニングされたりと、とにかく集中力のカケラもないようなプレーが目立ってしまって・・

 前半の30分を過ぎたあたりから私は確信していました。全体的には持ちこたえているフロンターレだけれど、この二人のところから守備ブロックが破綻する・・と。そして案の定、最初のPK、そして二点目のPKも彼らのマークミスから・・ということになってしまいます。特に二点目などは、(塩川はオフサイドを狙っていたのでしょうか・・そんなことよりもまず忠実にマークすればいいのに!)簡単に清水(川口だったかも・・)をフリーにしてしまって・・。これでは・・なんて思ったモノです。

 逆転され、懸命に攻め上がるフロンターレですが、ジュビロの守備ブロックがチャレンジを受けた・・という印象は皆無。逆に、ラドチェンコ、そして川口に、次々と「順当なカウンターゴール」を決められてしまいます。

 後半40分には、川口の「カウンター突破」を無理矢理止め、PKを取られただけではなく、倒した寺田も退場・・。これで、ジュビロの闘将、藤田の、珍しい「PKハットトリック」が完成しました。

 フロンターレが見せた、前半最初の頃の「仕掛けマインド」(前節のエスパルス戦から継続?!)。それはポジティブなトレンドです。ただジュビロにペースを奪われてからは、前後のバランス(人数的、ポジショニング的)が崩れてしまっただけではなく、決定的なフリーランニングなどの「積極リスクチャレンジ」もカゲをひそめてしまって・・

 とにかく、ボールがないところでのリスクチャレンジ(決定的スペースへのフリーランニング)がなければ良いサッカーなど望むべくもありません。意を決して攻め上がれば、必ず相手も付いてもどってきます。そして、何らかの「フィニッシュ」までいったり、途中でボールを奪い返されても、そこからの積極的なチェイシングで相手の攻めをスピードダウンさせれば、簡単にはカウンターを決められないモノです(この試合では、攻め上がりが中途半端だったから、簡単に、そして確実にカウンターを決められてしまった!)。

 フロンターレは、まず守備から立て直さなければ・・。とにかく「中途半端」が一番いけないことは世界の常識。自信をなくした選手たちの「積極マインド」を再生する仕事は大変ですが、ここからの建て直しに、ゼッカ監督の本当の手腕が問われるのです。「消極ビールス」が蔓延したら、それこそ「悪魔のサイクル」から抜け出せなくなってしまいます。とにかくまず攻守にわたる「積極プレー」を合い言葉にして欲しいモノです。



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