'93-'99通算ゴールゲッター分析(この分析では、総合ゴール数=10点以上、出場試合数=49試合以上の選手のみを対象にします)


'93-'99通算「総合ゴールランキング」


 過去7年間の総合ゴールランキングです。カズが(まだ)トップですが、'98年シーズンに大きくゴール数を伸ばしたゴン中山、そして'99年シーズンで活躍し、スペインのバリャドリードに移籍した城が迫ってきています(城はこのランキングにとっては不利ですが、世界に飛翔すれば関係ない・・)。また、古巣のヴェルディーへ戻った武田も、キャリア後半での「通算ゴールキング」の座を虎視眈々と狙っています。

 現時点で五位につけている福田は、レッズが「J−2」に降格してしまったため、2000年シーズンは記録に加算されないという苦しい状況です。とにかく早く「J−1」に戻り、通算ランキングに挑戦して欲しいものです。

 このランキングでは、当然「試合数」が多いプレーヤーが有利なのですが、「途中」外国へ出ていたカズが、「以前の貯金」で、まだ「通算キング」の座に居座っているのは立派。ランキングを見てみると、アルシンド、スキラッチ、ベッチーニョなど、懐かしい名前が見られます。また昨年までの通算ランキングでは、まだ「17位」につけていた稀代の天才、ディアスが、今回では「21位」に後退したのがチョット寂しい・・。彼の、天賦の才としいかいいようがない「ゴール前(シュートチャンス)での落ち着き」には、鳥肌が立つ感動を覚えたものですからね。

 もちろんサッカーはチームゲーム。「才能」だけで何とかなるというものではありません。チームの総合力も、ストライカーとしての能力を発揮するためのベースですから、チカラのあるチームにいるゴールゲッターが有利なことは事実です。

 さて次は、出場試合数をベースにした「一試合の平均ゴール数」。こちらの方が、より正確な比較ができます。


'93-'99通算「一試合平均ゴール数ランキング」


 '93-'99通算「一試合平均ゴール数ランキング」です。これが、ゴールゲッターとしての「クオリティー」をはかるための現実的な数字です。絶対ゴール数を比較するのでは十分ではないことは前に述べたとおりです。

 さて結果ですが・・現在はブラジルのコリンチャンスで活躍するエジウソンがトップをキープするなど、昨年までと、基本的には変化はありませんが、ここでも城が大きくランクを上げたことが目立っています。ただトップ「10」に入っている日本人は、8位の呂比須だけ。昨年は10位だった中山は、ケガで出場できなかったことがたたり、13位までランクを下げています。やはり、ベストテンに入っているのは「世界クオリティー」のストライカーたちでした。

 そんな彼らの成績のウラには、血のにじむ努力があることを忘れるわけにはいきません。何度も、何度も繰り返すシュート練習はもちろん、どこで決定的なパスを受けるのか・・というイメージトレーニングから、実際に、決定的なスペースでボールを受ける練習。それは、「ここにボールがくるに違いない・・」という確信と同時に、自然と身体が動いてしまうレベルまで高まっています。

 よく「ゴール前の嗅覚」という表現を聞きます。分かりにくいことこのうえないのですが、その本当の意味は、「ここにボールがくる・・」、「ここでボールをもらうんだ」という確信から、そのスペースへ爆発的なダッシュで走り込むような忠実なフリーランニング(パスをもらう動きのこと)、そして決定的なチャンスでも「クール」に、そして正確にゴールを決められる精神的な強靭さの総体なのです。ディアスの「クールな決定力」がなつかしいですよね。

 嗅覚とか動物的カンなど、生まれつきの才能のように言われますが、実際には、反復練習で培われた「能力」のことだというわけですが、一度、平均ゴール数でトップにランクされた選手たちの、そんな「能力」だけに注目して試合をみてみましょう。きっと今までとはまったく違った「サッカーワールド」が目の前に展開するに違いありません。


'93-'99通算「ゴール決定率ランキング」


 ただここで視点を変え、シュートのうち何本ゴールに入ったかという結果をあらわす「ゴール決定率」を見てみると、急に日本人選手が上位に顔を出してきます。この傾向は、昨年までの総合成績でも同じでしたよね。

 ただ、急にトップに躍り出たポポビッチは、基本的にはディフェンダー。彼が(少ないシュートにもかかわらず)かなりのゴールを挙げているのは、「ボールを奪い返した者は、誰でも攻撃の最終シーンまで絡んでいく!」というサンフレッチェの、「積極的なカウンター戦術」の表れと考えるのが自然のように思います。

 決定力不足といわれる日本人選手。それが、このランキングでは多くの日本人が上位に顔を出してくる・・。それにしてはおかしな結果です。その本当の意味は、シュート自体が少ない、つまり日本人選手はシュートへのトライに消極的ということです。

 「決定的なチャンス」にしかシュートを打たない。それがこの結果の意味です。リスクにチャレンジすることに消極的。リスクは責任をともないますから、責任回避の精神構造といえるかもしれません。

 「個」ではなく集団・・。敷かれた「レール」から外れることは許されない・・。そんな日本的な文化背景は、プロスポーツにとっては「負の体質」です。もちろん、イチかバチかの無責任なシュートを打ちまくれといっているのではありません。チャンスがあれば『エゴイスト』に徹し、自信と責任感をもち、積極的にシュートにトライすべきなのです。それが、優れたゴールゲッターの最も重要な資質であることは世界の常識。それがあって初めて、極度に緊迫したゲームでも「ワンチャンス」をものにすることができるのです。



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