My Biography


My Biography(41)_アパートの隣人ヨーコさん・・でもその前に、(W杯後の!)連載リスタート遅滞への言い訳をちょっとだけ・・(2014年8月28日、木曜日)

■帰国してからのアクシデント(頸椎ヘルニアの再発・悪化)・・

どうも皆さん、本当にご無沙汰してしまって。

まあ、HPコラムでは、もう何度も書いているから、ここで反復する必要はないと思いますが、取り敢えず・・。

そう、頸椎(けいつい)ヘルニアによる神経痛。

ブラジルW杯がはじまる3週間前あたりから悩まされはじめ、W杯を通して苦しめられた。でも、W杯が終了し、帰国する頃には、完治を意識できるほどに回復していたんですよ。

でも帰国してからがいけなかった。

直ぐに、いつもの生活ペースをスタートしようとしちゃったのです。そう、単車を乗り回まわしての移動に、毎日のトレーニング(早足ウォーキングに筋力トレーニング)。

特に、腹筋のシットアップトレーニングが落とし穴だった。

両ヒザを曲げ(もちろん足の支持は無しだよ!)、両腕を後頭部に回してヒジをピンと張った状態で繰り返すシットアップ。

まあ100回程度だけれど、そこでは、シットアップした頂点で、上半身を、鋭く左右に振る動作を付け加えるんですよ。

でも、それがいけなかった。

ガバ〜ッ、ピッ、ピッ・・ってな感じのリズム。でも、この、頂点での急激な上半身の「振り」がいけなかったんだ。

あるとき、「ピッ、ピッ」ってな軽快なリズムで、上半身を左右に振ったとき、「うなじ」に、ピッっと痛みが奔ったんですよ。そう、頸椎ヘルニアの再発・悪化。

もう大ショックだった。そして落ち込んだ。

何せ、10週間も苦しめられていたんだからね。その神経痛が「ぶり返し」ちゃったんだよ。そして、苦しみも復活した。フ〜〜ッ・・

・・視線を上げるために首を反り返らせることが出来ない(首を持ち上げられない!)・・だから単車に乗れない・・歩くときも、うつむかなければ、肩胛骨から腕にかけて痛みが奔る・・

・・だから電車での移動でも苦痛が伴う・・またスタジアム観戦でも、異様な格好をしなければグラウンドを見ることができない・・記者会見でも、イスの背もたれへ身体を押しつけなければ(要は、ふんぞり返らなければ!)壇上へ視線を向けられない・・フ〜〜ッ・・

そんな、こんなで、(今でも!)落ち込んでいるっちゅう体たらくなんですよ。

でもここにきて、徐々に完治へ向かっていることを実感できることから元気も取り戻しつつある。そう、希望こそが、思考と行動の(生きるための!)唯一のエネルギー・・ってな感じ。

ということで、コラムを書く心理エネルギー(セルフモティベーション推力)も、徐々に高揚させられるようになってきたっちゅうわけです。

でも、面目ないけれど・・

W杯の前までのように、1週間ごとのアップ(火曜日はコアコラム、水曜日はバイオグラフィー)・・っていうのは、ちょっと厳しい。

だから、二つの新連載は、ランダムにアップする・・ということにさせてください。

ということで、これからのバイオグラフィー展開。

まず、アパート隣人「ヨーコさん」の話題。

以前にも登場したから覚えてらっしゃる方もいるでしょ。そう、パン職人とパティシエの、ドイツ国家ライセンス(マイスターライセンス)を取得するために頑張っていた、スーパーな大和撫子。

そこから、ケルン体育大学の風景、日本人最初のプロ奥寺康彦、紆余曲折のコーチングスクールチャレンジといったストーリーへと展開させていく予定です。

では・・

■スーパーパーソナリティー、アパートの隣人ヨーコ・・

「そうなんですよ・・あの2代目は、ちょっと無神経というか、意地悪というか・・でも、まあ、それが現実ですから・・」

ヨーコさんは、優しい微笑みを浮かべながら、あくまでも冷静に、自分の職場について語る。

落ち着いた雰囲気のヨーコさんは、私よりもかなり年上のハズ(実際の年齢は知らない・・)。

中肉中背の、日本的な美人。常に笑顔は絶やさないけれど、肝心な所での凜(りん)とした言動からは、彼女の芯の強さを感じる。そう、人間的な(大人の!?)余裕。

そんなヨーコさんは、ドイツの国家マイスターライセンスを目指し、パン屋とケーキ屋さんで修行を積んでいた。

パン屋だからね、朝は早い。それも、3時ころのスタートだから半端じゃない。顔を合わせる機会が少なかったのも当然だった。

私の場合、平日の夜は、サッカーのトレーニングや勉強(ドイツ書籍との格闘!?)、はたまたウリとの飲み屋(クナイペ)ミーティングなどがあったし、彼女の夜はとても早いから、すれ違いになるのも自然の成りゆきだったというわけだ。

また週末にしても、私はサッカーのゲームで朝から出掛けることが多かったし、彼女も、オペラやコンサートといった文化的な活動で、家にいないことの方が多かった。

それでも、たまには、夕食を共にすることもあった。

そのためには、互いに努力して時間を作り出さなければいけなかったわけだけれど、まあ、お互い、興味があったということなんだろうね。

イヤイヤ、男女間の興味というのではなく、あくまでも、人間として、戦友として。

彼女は、私が、「普通の」日本人留学生とは毛色が違うと、すぐに感じたと言っていた。要は、具体的な目的意識をもち、それに全力で邁進しているという雰囲気があふれていたんだそうだ。

また私にしても、手に職をつけるという目的で異国へ渡り、そこで全力を傾注しているヨーコさんの生き方に、とても興味を惹かれていた。

彼女は、日本の大学を卒業し、一度日本の会社に勤めてからドイツへ渡った。

「そうなのよ・・大学を卒業して就職したんだけれど、そこじゃ、女子は単なる女の子としか見てないし、ビジネスキャリアという視点じゃ、まったく先が見え なかったんだよね・・それに、総合職じゃ、まったくキャリアにならないじゃない・・私は、そんな便利屋はイヤだったのよ・・」

そう語っていたときのヨーコさんの表情は、まさに凜(りん)としていたものだ。

彼女は、日本社会の凝り固まったメカニズムから「解放」されるために、何としても経済的に自立したかった。そして、突き詰めれば、そのことが男性をも解放すると考えていた。

だからこそ私は、彼女に対して強い興味(シンパシー)を抱くようになったんだ。

私が、ヨーコさんに強く共感したことには、バックボーンがあった。

■中ピ連・・

私が学生に成り立ての頃、女性を、社会的に「解放」する(まあ、女性に対する差別撤廃!?)というムーブメントが盛んになった。

女性の社会的地位を向上させる活動。アメリカ合衆国からはじまったウーマンリブ(Women's Liberation)とも呼ばれる女性解放運動。それである。

そのなかでも、中ピ連は目立った存在だった。

正式な名称は、中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合。フ〜〜ッ・・長い。

彼女たちは、妊娠という生物学的な現象の「主権平等性」を、女性が取り戻すために、ピルを解禁せよ・・と主張していた。

ここでは、その哲学的バックボーンや活動内容にまで入り込むのではなく、私が、そのムーブメントをカゲでサポートしていたことを伝えたかった。

具体的には、中ピ連と関係する(女性による)支部組織を、その告知活動や集会のマネージメントなどでお手伝いしていたというわけだ。

その最たるモティベーションは、その支部組織を引っ張っていた女性リーダーに興味を惹かれたことだった。美人で弁が立ち、行動力も抜群の30代半ばのキャリアウーマン。カッコ良かった。

彼女と出会うキッカケ。それは、私が陸送のアルバイトをしていたとき(以前のコラムを参照してください)、その支部メンバーの一人を、ヒッチハイクで乗せたことだった。その彼女から、リーダーを紹介されたというわけだ。

最初は、面食らった。

そのパーソナリティーたるや、この人は本当に日本人女性なんだろうかと、自分の目と耳を疑うほど強烈だったんだよ。

その彼女もまた、ヨーコさん同様に、常に、こんなことを言っていた。

女性の地位が向上して社会的に解放されたら、それは、男性の解放にもつながる・・。

彼女が放散する、抜群の説得力(言葉のパワー)もあっんだろうね、彼女とディスカッションするたびに、深く共感させられたモノだ。

だから、その組織に、時間が許す限り入り込んでいくようになった。

数少ない男性の一人だったけれど、まだハイティーンという若さや、私の素直な態度もあって、彼女たちから煙たがられることもなく、貴重な経験を積ませてもらったっけ。

■でも、あるとき、こんなコトが起きた・・

私は、その組織で「泳がせて」もらっていたなかで、日本社会が(いや全世界が・・)、女性という存在(社会的な価値!?)を、有効に活かせていないことに気付かされていった。でも・・

それは、そのムーブメントに関わりはじめて数ヶ月後のことだった。

ある中年の女性が支部に駆け込んできて、職場で不当な扱いを受けたと訴えたのだ。

彼女は、自分が女性だから、うまくいかなかったビジネスについて、上司から不当に問題を指摘され、なじられたという。でも、同じビジネスに関わっていた男性の同僚は、まったく批判されることがなかったというのである。

その職場には、同じ支部に属する別の女性も働いていた。また、その彼女の紹介で、駆け込んできた女性の同僚(男性)にもハナシを聞くことができた。

そして、よくハナシを聞いてみると、誰が考えても、彼女の怠惰な仕事の態度が原因の失敗だったことが分かったのである。私も、ハナシを聞いていて、「そりゃ・・単なるワガママだろ・・」と感じた。

そしてリーダーの女性が、駆け込んできた女性に対して、もっと冷静に、そして素直に事実を見つめるべきだと意見したのである。

その瞬間、女性の態度がガラリと変わった。

「アンタ達は、女性の味方だと思っていたのに、実際は、逆なのね・・アンタ達も、男性社会の回し者じゃない・・」

そんな彼女の罵声に、誰もが呆然と黙り込んだ。でもリーダーは黙っちゃいない。

「アナタね〜、よく考えて・・私たちが、正当な主張をするためには、少なくとも、社会人としてのルールは守らなければいけないのよ・・そう、義務を果たすということね・・また、たまには、男性以上に厳格に、義務を果たさなきゃいけない場面だってあるんだよ」

彼女の言葉は止まらない。

「女性としてのプライドを大事にしなきゃいけないということだけれど、そのためにも、このケースじゃ、まずアナタが、自分の至らなさを詫びなければいけな いんじゃない・・そして全力でミスを挽回する努力をするのよ・・それでもまだ、アナタの男性上司が、アナタのことを不当に扱うんだったら、自然と彼は、職 場での立場を失っていくでしょ・・」

それは、本当に明白なケースだった。

駆け込んできた彼女は、自分の非はアチラに置いておき、まず最初に、上司や同僚の男性から批判されたことに腹を立てていた。

そりゃ、本末転倒だろう。

まず、自分に課せられている社会的な義務を十分に果たしたところから主張をはじめなければ、説得力なんて無きに等しいよな。

でも、駆け込んできた彼女は、入ってきたとき以上の勢いで、「捨て台詞」を吐きながら支部を飛び出していったっけ。フ〜〜ッ・・

その後も、そんな(過剰な被害者意識の!?)ケースが増えていった。

駆け込んでくる女性たちの多くは、社会的な義務を果たそうとすることなく、エゴイスティックに権利ばかりを主張するのだ。

そして結局リーダーの女性は、「ムーブメントの主体(女性たち)の多くがこんなレベルじゃ・・」と、活動の継続を諦めてしまったのだった。

そのときほど、様々な歴史の賢人が示唆しつづけた「内なる敵」を強く意識したことはなかった。

本当に、とても貴重な学習機会だった。

■そして、ヨーコさん・・

彼女が、私よりもかなり年上だったこともあったんだろうね、「女性の自立が男性を解放する・・」という言葉を聞いたとき、瞬間的に、前述の女性リーダーのことがアタマに浮かんだというわけだ。

ところで、冒頭の、「無神経だけれど、それも現実だから・・」というヨーコさんの言葉。

要は、彼女が、職場で、かなりイジメられていたということだ。

もちろん物理的な暴力などはあり得ないけれど、でも、意地悪な態度とか言葉とか、精神的にかなり重荷になるようなこともあったと聞く。

「そうなのよね・・自分が言ってもいなかったことを、後から、どうして言われたことをやっていなかったんだって文句を言われたり、自分のミスを私のせいに したり・・でもサ、今の店主は2代目でネ、たまに先代のオトーサンが、そんな息子の態度を戒(いまし)めてくれたりするんだよ・・」

ヨーコさんのハナシがつづく。

「その背景には戦争体験があったのかもね・・だから、日本人に対してはシンパシーがある・・小さなサポートだったけれど、私にとって、どれほどの癒しになったことか・・どんなに辛くてもサ、そこに、少しでも正義があるって意識できることほど心強いモノはないよね・・」

(つづく)

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ところで、ブラジルW杯に、後藤健生さんと「スカイプ」を介して繰り返したディスカッションをまとめた、ライブ感あふれる「ナマ対談本」が出来上がりました。

その新刊については、「こちら」をご参照ください。

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これまでの「My Biography」については、「こちら」を見てください。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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