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2016_日本代表・・いろいろな「課題」と「成果」が入り交じった勝負マッチだった・・(日本vsアフガニスタン、5-0)・・(2016年3月24日、木曜日)

よ〜しっっっっ!!!

そのとき、思わずガッツボーズが出た。

そう、日本代表の追加(2点目)ゴールのシーン。後半13分のことだ。

中盤でパスを受けた長谷部誠。

もちろんパスを受ける前にも、そしてボールをコントロールしてからも、しっかりと視線を上げて周りとのコミュニケーションを取っていた。

そのとき長谷部誠は、パスを受けてコントロールし、周りを見ながら、一瞬、「さて・・」なんていう落ち着きのオーラを放散したんだ。

一瞬だよ、一瞬。でも、その「間」がよかったんだよ。

それによってアフガニスタン守備ラインの足とイメージが、ほんの少しだけ落ち着いたことで、「様子見」の雰囲気になったんだ。

でも実際は、「コト」は激しく動きつづけていた。

そして次の瞬間、長谷部誠から、最前線のトップセンターにいた金崎夢生へ、角度のあるタテ(足許)グラウンダーパスが、正確に送り込まれた。

それが勝負の瞬間だった。

そのパスが出されたとき、金崎夢生には、相手ディフェンダーの誰も「寄せて」いなかった。そう彼は、まったくのフリーだったのだ。

それもまた、長谷部誠が演出した、ちょっとした「間(タメ)」の効用だった。

そして同時に、もう一つの「効用」も花開いていたんだよ。

長谷部誠が、タテのグラウンダーパスを出した瞬間。日本代表の「3人目」もまた、爆発スタートを切っていたんだ。

そう、ゴールを決めた清武弘嗣。

彼は、自分をマークすべき相手ディフェンダーの「鼻先スペース」を横切り、相手最終ラインのウラに広がる決定的スペースへ飛び出していたのだ。

つまり・・

長谷部誠の、タメからの(金崎夢生への!)決定的な「ワンのパス」がグラウンド上を転がっていたとき、三つのアクションが同時に進行していたということだ。

一つは、金崎夢生の(次に自分が出す最終勝負パスへのイメージ構築も含めた!!)パスレシーブの準備アクション。

二つ目が、ゴールを決めた清武弘嗣の、斜めに、相手最終ラインとGKとの間に広がる決定的へ斜めに入り込む「爆発スタート&スプリント」。

そして三つ目が、次のパスレシーバーである金崎夢生へプレスをブチかまそうとするアフガニスタン守備ブロックの寄せアクションだ。

そのとき金崎夢生へは、二人半のアフガニスタン選手が寄せ、走り込む清武弘嗣には、自分の眼前を横切られたアフガン選手がタイトにマークしようとしていた。でも・・

そう、結局、金崎夢生は、ダイレクトで、寄せてくる相手ディフェンダーのアタマを越える、素晴らしいロビングパスを送り、そのパスを、決定的スペースへ走り込んだ清武弘嗣が、目の醒めるようなダイレクトシュートを決めたっちゅうわけだ。

ちょっと、「5秒間のドラマ」的に書いた文章が長くなってしまって申し訳ないけれど、それでも、このゴールこそが、ゲームのハイライトだったんだから、いいでしょ。

ところで、金崎夢生がロビングで送り出した「ダイレクトパス」と、清武弘嗣がブチかました「ダイレクトシュート」で用いた「ダイレクト」という表現だけれど・・

やっぱり、サッカーじゃ、ボールを「止めないで蹴る」ダイレクトのパスやシュートは、本当に、特別なコノテーション(言外に含蓄される意味)を内包しているんだよ。

だから、そのプレーを「ワンタッチ」なんていう低級な用語で表現するのだけは我慢できない。

このことについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」を参照して下さい。

そう、とにかく、ボールを「止めないで蹴る」パスやシュートには、本当に、戦術的に特別な意味合いが秘められているんだよ。

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ということで、その他のテーマ。

ハリルホジッチ監督も言っていたように、このゲームは、メンバーと戦術タスクを大きく変更して臨んだことで、前半の組織コンビネーションは、とても悪かった。

何せ、タテパスを出しても、それが「次」、「その次」とスムーズに展開していかないんだから。

まあ、それには、とても優秀なクロアチア人監督セグルトに率いられたアフガニスタン守備ブロックが、強烈な意志とイメージング力で、日本の組織コンビネーションを、ことごとく抑制した・・ということもある。

でも、ここでは、やっぱり日本を主体にして分析&評価しなきゃいけない。

そう、前半の彼らには、ボールがないところでの動きの量と質に課題があったんだよ。

まあ、コンビネーションイメージが、しっかりと「シンクロ」していなかったということだね。

だから、ボールがないところでの(パスレシーブの)動き出しに迷いが生じていたっちゅうことなんだろうね。

そんな、チト鈍重な前半だったから(もちろん岡崎慎司の先制ゴールは素晴らしかったけれど・・)、冒頭で長々と描写した(!)、組織コンビネーションベースで(3人目のフリーランニングが美しく決まった!!)2点目の追加ゴールが、ものすごく嬉しかったんだよ。

それだけじゃなく、ハーフナーのアタマという武器を活用するため、積極的にハイボールを放り込ませ、その「イメージ」がうまくシンクロして金崎夢生が奪った5点目ゴールのシーンとか、後半になって機能しはじめた、素早い人とボールの動き・・等など、得たモノも多かった。

最後に・・

このゲームでも、またまた体感させられたのだけれど、やっぱり日本には、本物のドリブラーはいない・・ですよね。

私が言いたいのは、シュートを打つという攻撃の目的を達成するために決定的スペースを攻略していくプロセスというテーマのことだよ。

そのスペースを攻略していくプロセス(その傾向!)には、大きく分けて2種類ある。

一つは、勝負ドリブルで相手を抜き去ってスペースへ侵入していくような単独の勝負プレー。

そしてもう一つが、組織パスコンビネーションというわけだ。

そして日本の場合は、やはり、スペース攻略プレーのほとんどが、組織パスコンビネーションに拠る・・ということになるわけだ。

前半の出来がよくなかったのも、「そこ」に原因があったと思う。

そう、3人目、4人目の、ボールがないところでの「パスレシーブの動き」が、うまく「はまらなかった」から、前半のサッカーが寸詰まりになってしまった。

でも後半は、「その点」で、大きな改善が見られたというわけだ。

ということで、この試合では、いくつかの「ネガ・ポジテーマ」があったわけだけれど、もちろん「それら」は、日本代表にとって、とても貴重な「学習機会」っちゅうことになるでしょ。

何せ、監督は、「あの」ストロングハンド、ハリルホジッチだからね。

あっと・・

今日の彼のコメントのなかで、(私が!)もっとも重要だと思ったモノを書き忘れることだった。

それは・・

彼もまた、チーム作りのにおける最も重要なファクターが、選手たちの自主性(=意志)の進化&深化にあると考えているんだよ。

だから彼は、選手たち同士で話し合う(ディスカッション&ディベートする)ことを積極的に推奨しているんだ(彼のハナシから、そう理解した!)。

もちろん、監督マター(監督の仕事)では、しっかりと、責任感と勇気をもって決断するよ。

でも同時に、選手たちの自主性も、大いにプロモート(推進)したいと言っていたんだよ。

例えば、こんなニュアンスのこと・・

・・監督から、選手たちに対して、色々なコトを「提案」する・・それに対し選手は、その提案に自分たちなりの「工夫」をミックスしていくことで「自分たちのモノ」にする・・

・・そんなプロセスがあるからこそ、実際のゲームでも、強い意志をもって、主体的な闘いを展開できる・・

・・とにかく、攻守にわたる最終勝負シーンでの「やり方」については、結局のところ、選手たち自身が考え、決断し、勇気をもって行動していくしかないのだから・・

いいね、ハリルホジッチ。

さて次は、勝負のシリア戦だ。楽しみだね。

もう夜中の2時を回ってしまった。眠い。乱筆、乱文、失礼。ではまた〜

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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