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2016_J2_第18節・・これほどの「ゲーム内容の逆流現象」は希・・その「変容」から最高の学習機会になった・・(ジェフvsヴェルディ、2-2)・・(2016年6月12日、日曜日)

・・あ〜あ・・このまま終わっちゃうんだろうな〜・・もう帰ろうかな〜・・

ジェフ千葉が、リードを「2-0」としたとき、そんなことを真剣に考えてしまった。

いま思うと、「もしアソコで帰ってしまったら、大変な機会損失になってしまうところだった・・」なんて、冷や汗が出てしまう。

そうなんだよ・・

そこから、ゲームが、まさに180度といってもいい程の「大変容」を遂げたんだ。そしてゲームが、これ以上ないほどのエキサイトメントへと「成長」していった。

ところで、ジェフが、リードを二点に広げるまでのゲーム展開。

もちろん様々な視点はあるだろうけれど、私の眼には、例の「小さなトコロ」もふくめて、様々な意味合いで、ジェフがゲームをコントロールしていた・・と写っていた。

ジェフは、先制ゴールを奪ったスーパーな仕掛けプロセスだけじゃなく、前半でも、後半の立ち上がりにも、2度、3度と、サイドからの仕掛けから決定的チャンスを作り出したんだよ。

それは、最後の瞬間に(シュートブロックのために!)飛び込んだヴェルディ選手の「足先」に当たったり、蹴られたシュートがGKの正面に飛んだり・・といったビッグチャンスだった。

ヴェルディにとって、「ツキ」以外では凌(しの)ぎようがない大ピンチがつづいたんだ。

でもツキはそこまで。後半8分には、これまた素晴らしい右サイドの展開から、ヴェルディゴール前に入り込んだ船山貴之が、ダイレクトでシュートを決めた。

とにかく、船山貴之に「あの決定的スペース」に入り込まれた時点で、勝負ありだった。

ジェフの2点目は、ヴェルディ選手のミスからボールを奪われて喰らったカウンター一発のドリブルシュートだった。

そんな、まさに「ジリ貧」のゲーム展開を観ながら、冒頭のようなコトを考えていたというわけさ。

もちろん私は、関塚隆さんが率いるジェフ千葉も応援している。だから、「ゲームを最後まで見届けなければ・・」なんていうマインドも、アタマの片隅にはあった。

でも、今シーズン「J2」における私の「テーマNo 1」は、ヴェルディなんですよ。

だから、先日のFC岐阜戦、そしてこの試合と、内容が良くないゲームを目の当たりにしたことで、チトめげてしまったという体たらくだったんだ。

ただそこから、「ゲーム内容の大変容」っていう魅惑的な出来事が起きてしまったわけさ。

もちろん私は、その変容を、とても素敵な学習機会だと感じていた。

・・ということで、ここからは、その変容のバックボーン要素を探っていくことにする。

まず何といっても、2点目をブチ込まれた次の瞬間に冨樫剛一監督が実行した、二人の選手の同時交替という「刺激」に目を向けなきゃいけない。

杉本竜二の代わりに高木善朗。高木大輔の代わりに、ドウグラス・ヴィエイラ。

そして「そこ」からヴェルディのサッカーが、大きく、大きく活性化していく。

グラウンドの現象としては、もちろん、守備の内実(ダイナミズムと実効レベル!)が何倍にも増幅したという事実を挙げなきゃいけない。

だから、ボール奪取の頻度と、その奪取位置が大きく好転するのも道理。

そして次の攻撃で、「あの」ドウグラス・ヴィエイラが抜群の存在感を発揮するというわけだ。

足が速いドウグラス・ヴィエイラだから、アバウトなタテへのロングフィードでも、しっかりと「タメ」られる。だから、後方のチームメイトたちも、迷わずサポートへ上がっていける。

ところで、両チームの「ディフェンス内容の逆転」だけれど、もちろん「その背景」には、ヴェルディが、「もう行くしかない・・」という切羽詰まった状況に追い込まれたコトもあるさ。

選手たちは、「フッ切れた心境」で、前からプレスをブチかましていくしかなかったんだよ。

だから、そんなチームのマインド高揚と、選手交代が、ピタリとマッチしたという捉え方できる。

そして、もう一つ。今度はジェフからの視点。

そう、ジェフ選手たちの、「二点をリードした・・」という気の緩み。

たぶん彼らは、二点をリードしただけじゃなく、「それまでのヴェルディの攻め」だったら、余裕で抑え切れると感じていたに違いない。

それほど、ヴェルディの攻撃に覇気がなかったんだ。だから、ジェフ選手たちが、ヴェルディの攻撃を甘く見るのも頷(うなづ)ける。

それが、チェイス&チェックとか、協力プレスでの忠実でダイナミックな集散アクション、カバーリングアクションに代表される、守備ハードワークにおける「意志のチカラ」を減退させた!?

まあ、そういうことなんだろうね。

そしてゲームが、完璧にヴェルディのペースにはまり込んでいっちゃう。

そんなゲームの流れは、同点になり、ヴェルディのベテラン平本一樹が退場になった後も、大きく変わることはなかった。

たしかにジェフは、勝つために攻め上がろうとはしていた。でも、その仕掛けイメージが、チーム全体で「統一」されることはなく、そのアクションにも一体感を感じることはなかった。

だから、ジェフの攻撃アクションも、中途半端。

それじゃ、決勝ゴールを奪うためのチャンスを作り出せないだけじゃなく、ヴェルディ攻撃の勢いを十分に抑えられるはずもない。

________

ということで、最後に、この「特異なゲームの流れの変容」について、私の見方をまとめます。

その「逆転現象」のバックボーンは・・

・・ヴェルディが仕掛けた、ベストタイミングの選手交代(冨樫剛一監督は、勝負所での、この選手交代をはじめから意図していた!!)・・

・・失うモノがなくなったヴェルディ選手たち・・彼らの「前からプレス」への意志が統一され、最高潮に増幅されていった・・

・・そして、ボール奪取が機能しはじめ、その後の仕掛けでも、ドウグラス・ヴィエイラの存在感ある実効プレーによって、全員が、積極的にサポートしつづけた・・

・・そんな積極マインドが、チームに充満したからこそ、ジェフにボールを奪われてからのディフェンスにも、パワーとダイナミズムを存分に発揮できていた・・

・・それは、タダでさえマインドが受け身になってしまったジェフ選手たちの「不安な心理」をかき立てるのに十分な(ジェフにとっての!)ネガティブ要素だった・・

そんなコトを考えながら、不確実な要素が満載だからこそ、サッカーが「究極の心理ゲーム・・」という普遍的コンセプトを噛みしめていた筆者なのであ〜る。

注釈:試合後の記者会見で、私の発言で失礼があったら、お許しください・・ネ・・関塚さん・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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