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2015_東アジアカップ(その3)・・この気候環境は変えられない・・さて、次の韓国戦をどのように戦おうか・・(日本vs北朝鮮、1-2)・・(2015年8月2日、日曜日)

・・スピリットと、一つのユニットとしての機能性・・我々は、その面で、日本に優っていたと思う・・

北朝鮮キム・チャンブク監督が、記者会見で、そんなニュアンスの内容をコメントしていた。

同じポイント(フィジカル)について、キム監督の前に記者会見に臨んだハリルホジッチ監督は、逆に、それを「明確に認識している・・」旨のコメントをしていたっけ。曰く・・

・・しっかりと準備をしてきたつもりだったが、フィジカルが強い相手に、十分に抗していけなかった・・とても落胆しているが、それもまたサッカー・・この結果をしっかりと受け止め、次に備えて準備を整えたい・・

ちょっと、ビックリだった。

同じ気候条件なのに、これほどまでにフィジカルで(厳しい気候条件での走りと闘う姿勢の量と質で!)差がついてしまうとは。

それにしても、北朝鮮はタフなチームだ。

もちろん昔からの共通認識ではあったけれど、昨今の対戦では、日本の優れた技術と戦術能力が完璧に凌駕していた。だから、ついぞ「そのコト」を忘れがちになっていた。

そして今日。それに対して、改めて敬意をいだかざるを得なくなったというわけだ。

でも、そんな「敬意の念」がアタマをもたげてきたのは、後半になってからだったよね(まあ・・前半の30分あたりから、北朝鮮が、反抗への確信レベルを徐々にアップさせていったけれど・・)。

皆さんもご覧になった通り、前半の半ば過ぎまでは、日本代表が、ゲームの流れのコノテーション(言外に含蓄される意味)で、一日以上の差を魅せつけていたんだよ。

前半3分に、右サイド遠藤航のクロスを、武藤雄樹がスーパー(ピンポイント)先制ゴールを決め、その後も、ゲームの流れをしっかりとコントロールしつづける日本代表だったんだ。

そして何度も決定的チャンスを作り出す。

そこまでは、誰もが日本の勝利を信じて疑わなかったに違いありません。でも・・

そう、徐々に、北朝鮮の確信レベルがアップし、逆に(自身の動きが明確にダウンしはじめていること=エネルギーの減退=を体感した)日本選手たちの不安がつのっていったんだ。

そう、心理的な悪魔のサイクル。

そうなったら、日本チームのプレーが(特にボール奪取プロセスでのトライの内容が!)縮こまっていくのも道理でしょ。

サッカーの基本は、何といっても守備。そのボール奪取プロセスで北朝鮮にイニシアチブを握られ始めていたんだから何をか言わんやだった。

それは、心理的なビールスではない。明らかに、チーム全体に蔓延しつづけていた「不安の連鎖」だった。

そして選手たちの、攻守にわたる勝負(リスクチャレンジ)のマインドも失われ、ゲーム全体を北朝鮮に支配されていったというわけだ。

そんな展開は、前半のゲーム内容からすれば、想像だにできないコトだったでしょ。

でも、それは現実だった。

またベンチも、そんなゲーム展開の「ジリ貧プロセス」を抑える手立てが遅れた・・と思う。

前半から、攻守ハードワークの量と質が伴わず、期待された「個の勝負プレー」でも満足なパフォーマンスを魅せられていなかった宇佐美貴史。

彼の交代は、後半の10分を過ぎてからだったし、同じように、最前線でのポストプレー(=タメの演出)がままならない(だから押し上げにも勢いを乗せられない!)川又堅碁の交代もゲームも残り15分というタイミングだった。

また私は、「攻守の仕事をダイナミックに探しつづけるプレー姿勢・・」という視点で、谷口彰悟のパフォーマンスにも満足していなかった。

「あれ」だったら、この試合で右サイドバックに入り、攻守にわたって気を吐いた遠藤航の方が(また、闘う意志では誰にも負けない米本拓司も!!)、良かったに違いない。

こんなハードな気候条件だからこそ、「闘う意志」が問われる。

その意味で、戦術能力に長け、スマートなプレーを標榜する(!?)谷口彰悟は、逆に(!?)、ミスキャストだったのかもしれない。

そんな(パッシブな!?)谷口彰悟に対して、守備的ハーフパートナーの山口螢のハードワークぶりばかりが目立っていたっけ。

その山口螢だけじゃなく、攻守にわたるハードワークと、攻守の勝負どころでの素晴らしい「実効パフォーマンス」を魅せつづけた武藤雄樹も、素晴らしい代表デビューを果たした。

彼がブチ込んだ先制ゴールだけれど、たぶん代表デビュー戦としては最速ゴールだったんじゃないかな。

とにかく、彼がブチかました全体的なハードワークと実効パフォーマンスからすれば、まさに勝ち取った「栄冠」だった。

また、忠実なマーキングやボール奪取勝負だけじゃなく、何度も、ギリギリの最終勝負スライディングタックルを決めた槙野智章。

たしかに、北朝鮮の決勝ゴール場面では、味方との守備コンビネーションのタイミングが合わずに、ほんのちょっと「遅れて」しまったけれど、全般的なパフォーマンスは、賞賛に値する。

とはいっても、そんな彼らでも、チーム全体のパフォーマンスダウンを食い止めるまでには至らなかった。

まあ、残念だが、仕方ない。

これで、彼らの「やらなければならないコト」が決まった。もう後がないのだから・・。

そう、脅威と機会は、常に表裏一体なんだよ。

ガンバレ〜・・ハリル・ジャパン・・

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ところで韓国。

女子も男子も、強い。ホントに、強い。

この蒸し暑さの中で運動量が落ちないこともそうだけれど、とにかく彼らは、「攻守の戦術的な基本」を、主体的に、そして忠実に「こなし」つづけるんだ。

その底流に、伝統的な「強固な意志と勇気」があると感じる。

でも彼らは、決して特別なコトをやっているわけじゃない。

守備にしても、クレバーでスマートなポジショニングバランスを絶対的ベースに、忠実なチェイス&チェックが、周りの守備アクションと、有機的に、そして効果的に連動しつづける。

また攻撃にしても、素早く、広い「人とボーの動き」をベースに、常に「次のスペース」を意識しながら、勝負アクションを(=勝負イメージ)をシンクロ(連動)させつづける。

もちろん、チャンスとなったら、勇気をもってドリブル勝負にも挑んでいく。決して彼らは、失敗を恐れない。そう、勇気と意志の爆発。

日本は、こんなに強い男女の韓国と、中二日で対峙する。

もう何も失うモノはない。とにかく彼らには、フッ切れた、勇気が込められた「意志のサッカー」を期待します。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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