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2014_W杯(22)・・さて、一発勝負に臨んだドイツ・・(2014年6月30日、月曜日)

でも、まず、フランス対ナイジェリアについて、簡単に。

終わってみたら、大方の予想通り、フランスが「2-0」の勝利を収めました。でも・・

そう、ゲームの「趨勢」自体は、まったくの互角だったんですよ。いや・・、部分的にはナイジェリアが主導権を握った時間帯も多かったのです。それも、人とボールがスムーズに動きつづける、とてもスマートな組織サッカーで。でも・・

そう、実は私も、フランスの順当な勝利だったと思っているのですよ。

その評価のバックボーンは、何といっても、ゴール前の「危険度」・・というか、相手守備ブロックのウラ・スペースを、「どのように」崩せていたのかという「攻略度」。

すみませんネ・・、この「攻略度」という表現もまた、筆者独自の「創作ワード」でした。

フリーランニング、勝負はボールがないところで決まる、サッカーはミスの積み重ね、よいサッカーはクリエイティブな「ムダ走り」の積み重ね、互いに「使い・使われるメカニズム」に対する深い理解・・等など・・。

そんな表現を見返すたびに、自分でも、うまく「創造」しているな・・なんて悦に入るわけです。スミマセン・・あははっ・・。

ということで、攻略度。

分かりにくいでしょうが、要は、どちらのチームが、ゴールになりそうな流れ(雰囲気)を、より強く醸(かも)し出せていたか・・というテーマです。

たしかにナイジェリアにもチャンスはあったし、シュート数ではフランスを上回っていたかもしれない。でも、本質的な意味合いで「決定的なチャンス」という視点では、フランスに一日の長があったと思っているわけです。

流れ・・とか、雰囲気・・とか、ワケの分からない「アン・ロジカル」な表現ばかり使ってしまって申し訳ありません。

このテーマについては、帰国してからビデオを見直し、そこで繰り広げられたギリギリの競り合いメカニズムについて、より具体的に「深掘り」できればと思いますよ。

例えば、クロスに込められた「意志のコンテンツ」とか、決定的なシーンでの、ボールがないところでの動きの質とか、その決定的シーンに、何人の選手が「意志をもって」飛び込んでいったか・・とか、「最後の半歩」が出ていたか・・とか・・ネ。

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さて、ということでドイツの勝負マッチ。ドイツにとっては雪辱戦ということになります。

実は(西)ドイツは、1982年スペインW杯のグループリーグ戦で、アルジェリアに土を付けられているのですよ。

また、資料によれば、過去の対戦成績は、アルジェリアの、2戦2勝とのこと。1964年にも西ドイツが、アウェーの親善試合に「2-0」で敗れたのだそうです。フ〜ン・・知らなかった。

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ということで試合。

始まって、すぐに思った。アルジェリアは、完璧に、ガーナのゲーム戦術をコピーした・・。

ボールを失ったら、一度(少し)もどり、ちょっと低い位置でディフェンス組織を整え、そこから「調整型の連動プレス&ショートカウンター」をブチかましていくんだよ。

その勢いは尋常じゃなかった。

彼らは、ガーナ戦を観て、「コレだっ!!」と確信したに違いない。そう・・

・・ドイツは、後方でのビルドアップをイメージしている・・だから「そこ」にターゲットを絞って連動プレスを掛けつづければ、必ず、ショートカウンターのチャンスが訪れる・・

そして、そんなゲーム戦術イメージが、まさに「ツボ」にはまる。

ドイツは、前半10分あたりまでに、立てつづけに2本も、カウンターの大ピンチを迎えた。アルジェリアは、個人能力じゃ、スピード、テクニックともに、ドイツに優るとも劣らないことを魅せつけたんだ。

そんなショートカウンターのピンチだけじゃなく、カウンター気味のアルジェリアの攻め上がりでも、彼らのドリブルでドイツ守備が翻弄され、そこから決定的 シュートをブチかまされたり、後方からのオーバーラップに、エジルが付いていけず、完璧にフリーでパスを受けた(オーバーラップしてきた!)アルジェリア 選手に、これまた決定的なシュートをブチかまされたり。

フ〜〜ッ

そんなアルジェリアに対して、ドイツは、まったくと言っていいほど、相手の守備ブロック内に入っていけない。

アルジェリアがブチかましつづける強力な連動プレスで余裕を失ったドイツは、後方からのビルドアップがままならなくなったんだ。

そんなゲームの立ち上がりにアルジェリア守備ブロックが放散しつづけた「意志のパワー(集中力)」は、レベルを超えていた。

だから、ドイツのチャレンジパス(タテパス)が、ことごとくカットされてしまう。それで焦ったドイツが、ミスパスを繰り返す。

そう、心理的な悪魔のサイクル。観ているこちらも、お恥ずかしながら、「これは大変なコトになった・・」と、フリーズ気味になっちゃう。

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とにかく、前半30分あたりまでのドイツは、完璧に「二流のチーム」に成り下がっていたんだ。

本当に、どうなることかと思った。でも前半も30分を過ぎたあたりから、アルジェリアの連動プレスの勢いに陰りが見えはじめてきたんだよ。

それまで、10メートル、20メートル、またたまには30メートルっちゅう全力フルスプリントを繰り返していた、チェイス&チェック(ドイツのボールホルダーへの寄せ!!)の勢いが、見るからにダウンしていったんだ。

そして、やっと、本当にやっと、ドイツが余裕を取り戻し、「自分たちのサッカー」を展開できるようになっていった。それだけじゃなく、その流れのなかから、何度か、本物のチャンスのも作り出せるようになった。

私は、そんなゲーム展開を観ながら、少し胸をなで下ろしながら思っていた。

フ〜〜ッ・・まったく〜・・。

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後半も、立ち上がりが前半のようになってしまうのではないかと心配したけれど、アルジェリアには、そんなエネルギーは残されていなかった。

要は、後半が、前半30分すぎの「ペース」で立ち上がったということです。

こうなったら、もちろん(余裕とスペースを得た!)ドイツのモノ。

ゲームのイニシアチブを握るだけじゃなく(前半はボールを持たされていたから、ボールキープの意味合いが全く違う!)、何度も、決定的チャンスを作るんだよ。

でも、ゴールを奪えない・・。

決定的なヘディングチャンスやシュートチャンスは、いったい何本あっただろうか。

それも、アルジェリア守備ブロックのウラを攻略するような見事な組織コンビネーションからのチャンスメイクだからね。

でも、決められない。とにかく、アルジェリアのGKは、本当に優秀だよ。

そして突入した延長。その前半2分に、待望の先制ゴールが決まった。

左サイドからのクロスボールを、シュールレが、ダイレクトシュート。

ヒールキックでカカトの後ろを通したシュート。それが、ちょっと変則だったから、タイミングを外されたアルジェリアGKも対応できなかった。

その後は、ちょっと緊張から解放された(!?)ドイツが、アルジェリアの攻勢を、落ち着いて守り切り、逆に追加ゴールまで挙げる・・という結末になった(まあ、延長後半のロスタイムにはアルジェリアに1点もぎ取られちゃったけれど・・)。

実は、本当に、気が気じゃなかったんだ。

お恥ずかしいハナシだけれど、後半に作り出した「あれ程の決定機」を決められないことで、「これは・・神様が・・」なんてネガティブなイメージを抱きはじめたんだよ。

だからこそ、めくるめく歓喜が格別だった。

ホント、何度も、歓喜と落胆の揺動を経験したけれど、この試合での揺動は、そのベストファイブに入るだろうね。

この試合は、私にとって、本当に、ものすごく深く、そして広い意味での「学習機会」になった。

もちろん、その最重要テーマは、ゲーム立ち上がりからアルジェリアがブチかましてきたゲーム戦術と、それにうまく対処できず、完璧に「混乱してしまったドイツ」という現象だったけれど、そこには、わたし自身の心理・精神的なネガティブ揺動という現象もあったんだよ。

フ〜〜ッ・・疲れた。

PS:あっ・・書き忘れた・・ドイツGKノイヤーのスーパーカバーリング・・何度、彼の「スイーパー役」に助けられたことか・・このノイヤーのプレーには、現代サッカーの新しい傾向が見て取れる・・よね。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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