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2013_ナビスコ決勝・・典型的な決勝コンテンツだった前半・・そして書きたいテーマがテンコ盛りになった後半・・(レイソルvsレッズ、 1-0)・・(2013年11月2日、土曜日)

「・・最後になったが・・相手のレッズ監督、ミハイロ・ペトロヴィッチについて少しコメントさせて欲しい・・」

「・・たしかに勝ったチームの方が目立つのは仕方ない・・でも、ミハイロも、本当に素晴らしいチームを作っているということを言いたかったんだ・・あれだ けの選手たちを(クセのある選手たちを!?)うまくまとめ、とても整理されたサッカーをやっている・・あのような素晴らしいプロコーチと一緒に、同じリー グで仕事ができていることを誇りに思う・・」

これは、質疑応答がおわってから、(あまり見たことはなかったけれど・・)ネルシーニョさんが、ご自分から語った内容です。それを聞いて、とても素敵な気持ちに包まれた。

互いに、ギリギリの状況で仕事をしているからこその連帯感!? 私も、現場のプロコーチの一人として、その発言に感動したし、とても共感した。まあ、彼らも「戦友」っちゅうことだね。

ところで試合・・

皆さんも観られた通り、レッズが、とても悔しい敗戦を喫した。

幻の同点ゴールになった後半のオフサイドシーンだけれど、それについては、記者会見の後で、イタリア人ジャーナリスト、チェーザレ・ポレンギさんに、その決定的瞬間の写真(まさに真横から取れられた写真!)を見せられた。

ナルホド〜〜・・と、納得せざるを得なかった。

まあ、ネ・・、後半レッズが作りだした「あれほど」の決定的チャンスを、全て決め切れなかった・・という事実からすれば、自業自得とも言えるけれど・・

でも、彼らが作りだしたチャンスシーンでは(特に、両サイドからの仕掛けシーン)、私は、ゴール前で繰り広げられている両チームの「ボールがないところでのせめぎ合い」に目を奪われていた。

特に、ボールがないところでの、レイソル選手たちの「アクションの量と質」。

要は、あんな危急シーンでは、誰もが「ボールウォッチャー」になってしまっても仕方ない・・という基本的な視点に基づいた観察と分析。でも・・

そう、レイソル選手たちは、自分がマークすべきレッズ選手を決して離さなかっただけじゃなく(マークを外されても必死の勢いでリカバーする!)、全員が、最高の集中力で、次、その次の「最終勝負スポット」を意識しつづけていたんだよ。

強烈な「闘う意志」・・ネルシーニョの、プロコーチとしての「ウデ」が垣間見える!!

そんな「強烈な意志」を絶対的なバックボーンに、アタマのなかが空白になって足を止めてしまうような選手は、一人も見受けられなかったんだ。

誰もが、『自らの守備イメージタンクに導かれるように、自然に、そして素早く!!』アクションを起こしていったり、自らの(意志ベース!)判断と決断で、危ないスポットへ急行したりしていた。

また、究極のテンションに支えられているからなんだろうね、相手やボールの『偶発的な』動きや変化にも、ギリギリのところで「ついて行けて」いた。

ちょっとした感動だった。

蛇足だけれど、金を払ってスタジアムに足を運ぶなら、「ボール周りのアクション」だけじゃなく、そんな、ボールがないところでのギリギリの「せめぎ合いドラマ」にも舌鼓を打つのも、おつなものでっせ。

もちろん、テーマを決めた観戦も、入場料にオツリがくる・・

例えば、大人ダブルボランチのプレー「だけ」に目を凝らすとか・・センターフォワードの動きとボール絡みプレー経過を観察する(次を予測する)とか・・

観戦のやり方は、本当に千差万別です。

まあ、そんな観戦ができるのも、イレギュラーするボールを足で扱うという不確実なファクターが満載されていることで、最終的には、自らの判断と決断で「自由」にプレーせざるを得ないサッカーの面目躍如ってなことなんだろうね・・

あっと・・前半・・

そこでは、典型的なファイナルというゲーム内容が繰り広げられたっけね。

互いにリスクを冒して(まあ・・フッ切れた勢いで!?)攻め上がっていくまでの積極性は魅せず、(守備ブロックを完璧に安定させるカタチで!)、常に、次、その次のディフェンス・バランスをアタマに入れてプレーしていたっちゅうことです。

だから、たしかにレッズが、全体的なゲームの流れではイニシアチブを握っていたけれど、そんな彼らにしても、シュートチャンス(その流れ)は本当に限られたモノだった。

そのことについては、お互い様だったわけだけれど、そんななかで、唐突に、そう唐突にジョルジュ・ワグネルにシュートチャンスが巡ってくるんだよ。

左サイドからのミドルシュートチャンス。

もちろんジョルジュは、(止めたら潰されると!?)迷わずにダイレクトで「ドカンッ!」と、ミドルシュートをブチかます。

そのシュートは、わずかにゴールを外れていったけれど、そんなチャンスシーンを観ながら、「そうそう・・そんなワンチャンスを、いかにゴールに結びつけるのかが、このゲームのキーポイントなんだよ・・」なんて思っていた。そしたら・・

そう、前半のロスタイム。

これまた、まさに「唐突なタイミング」で、レイソル右サイドバックの藤田優人が、逆サイドへ向けて、正確なサイドチェンジクロスを送り込んじゃうんだ。

そのとき私は、お恥ずかしながら、逆サイドの状況にまでは目がいっていなかった。そう、そのゾーンで、レイソル工藤壮人が、まったくフリーになっていたんだ。

そこに勢いのあるクロスボールが飛んできた。それも、とても素早いタイミングで送り込まれたラストクロス。

だから、レッズ守備は、まったく対応することができず、工藤壮人にフリーヘディングシュートを許してしまった。

その、この試合で唯一のゴールシーンだけれど、そうなったら、もう誰にも、そのヘディングシュートを邪魔することなんてできなかったに違いない。

そのラストクロスが、普通のタイミングで送り込まれたら、最後の瞬間に「身体を寄せる」などの対応もできたとは思うけれど・・

とにかく、「唐突な雰囲気」を振りまいた藤田優人のサイドチェンジクロス。それで勝負ありだった。ちょっとビックリした。

そして後半は、もうレッズが「イケイケ」。対するレイソルは、前述したように、最高の集中力で、その勢いをはね返す。

そこで繰り広げられた「せめぎ合い」は、ホントにエキサイティングだったぜ。もちろんレッズファンの方々にとっては、残念至極だっただろうけれど・・

誰もが、「アッ・・ゴールだっ!!」なんてフリーズする場面でも、最後は、レイソル選手が(身体のどこかが!)立ちはだかるんだよ。

その守備には、ちょっと感動した。

最後に、とても面白い質問が、両監督へ飛んだ。

テーマは、何らかの(チームとしての)タイトル・・

ミハイロ・ペトロヴィッチには、「これで、またまたタイトルを逃したわけだけれど・・」なんていう質問が飛んだんだよ。

「そういう質問がくると思っていたよ・・まあ、このような舞台で勝てない監督なんていうレッテルを貼られちゃうのかもしれないけれど、でも、ゼロックスでも、J2でもタイトルを取ったことはカウントされないのかい?」

「そうだね〜・・考えてみたら、私が去った後にサンフレッチェが優勝を遂げちゃったしね・・もしかしたらレッズでも私が去った後にタイトルが舞い込んでく るかもしれないな(笑)・・(まあ、それは冗談として!?)私は、このチームで必ずタイトルが取れると確信しているんだ・・そのことだけは言わせてもらう よ・・」

・・だってサ。

まあ、たしかにミハイロは、これまで「頂点タイトル」とは無縁だったけれど、それでもサ、彼の仕事ぶりを見てりゃ、そんな流れが、近いうちに大きく変わるに違いないと思えてくる。

また、ネルシーニョに対しては・・

・・ネルシーニョさんは、毎年、何らかのタイトルを取っているのですが、タイトルを取るのに必要なことは何ですか?・・

そのとき私は、ミハイロのときと「同じ人」が質問したかと思っていた。でも実は、違ったらしい。

そんな質問に対してネルシーニョは・・

・・その質問には、シンプルに答えることができるよ・・その、最も重要なバックボーンは、何といっても、選手との信頼関係なんだ・・もっと言えば、選手 と、互いにレスペクトできる関係というかネ・・それさえしっかりとしていれば、選手は、必ず、自分たちのミッションに、全力で取り組んでくれるはずだ・・

いいね〜〜・・ネルシーニョ・・

私は、そのコメントを聞きながら、今シーズンの「事件」に思いを馳せていた。

そう、ネルシーニョの辞意撤回事件・・

それを乗りこえられたのも、ネルシーニョと選手たちの間に、しっかりとした信頼関係があったからに他ならない。

信頼関係・・

それも、互いに、(社会的な立場ベース≒上下関係など・・とは無縁の)裸の人間としてレスペクトし合える信頼関係のことだよ。

真摯な「パーソナリティーの対峙」・・

それだね。

私は、「ダブルH&ワンC」なんて言い方をするんだけれど、「それ」があれば、本当の意味の信頼関係を構築できるはず。

それらは・・honest・・humble・・compassionate(considerate)・・

ということで、また〜・・

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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