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2013_J2_第29節・・深い「意味」を内包していた最後の時間帯での攻防・・(横浜FCvs京都サンガ、 1-0)・・(2013年8月18日、日曜日)

山口素弘の表情は、冴えなかったネ。

 でも、久しぶりの勝利であることは、まぎれもない事実なんだから、胸を張っていいんじゃないの・・。とはいっても、やっぱり彼もサッカー人(現場の人!?)なんだよ。だからこそ「内容」を突き詰めたい・・だからこそ、内容と結果を、できる限り高い次元で一致させたい・・

 そう、チャンスの量と質も含めたサッカーの内容では、サンガの大木武監督も、胸を張ってコメントしていた通り、サンガが上回ったんだ。でも、横浜も、最後まで立派に「虎の子」を守り切ったよね。それもまたサッカー・・っちゅうことだね。

 ということで、ちょっと、こんな意地悪な質問をしてみることにした。

 「ところで山口さん・・勝ったから聞くのですが・・1点リードで迎えた最後の10分間のことです・・」

 その瞬間、山口素弘の表情に微妙な変化が見て取れた。やはり彼も、最後の10分間に起きたピンチの連続が脳裏に残っていたっちゅうことなんだろうネ。

 「山口さんが日本を代表する(冷静な頭脳派の!?)プレイヤーだったからこそ聞くのですが・・例えば、サンガがクロスボールを放り込んでくるシーン・・そこで、実際の(ヘディングなどでの)競り合いに参加できない選手たちの次のアクションについて聞きたいんですよ・・」

 「そんな危急シーンでこそ、次、その次のディフェンスをしっかりとイメージできなければならないじゃないですか・・たしかに大きなところでは対応できて いたと思う・・でも何度かは、後方から押し上げてくる相手の3人目、4人目に、まったくフリーでこぼれ球をシュートさせてしまった・・」

 「競り合いに参加できない選手は、そんなときこそ、周りをしっかりと冷静に観察し、次の危ない相手選手をケアーすべきですよね・・そのポイントについてコメントをいただけませんか?」

 ここでの論点は、危急状況だからこそ、『主体的で!』冷静な観察力と決断力、そして勇気をもった素早い能動アクションが求められる・・というテーマです。

 たしかに、大きなところでは、しっかりとカバーリングできていたし、戻ってきたフィールド選手が、ゴールライン上で相手シュートをクリア・・なんていうスーパーなフォローアップもあった。

 でも、何度かは、(ボールや競り合いに目を奪われて!?)フォローアップアクションが遅れてしまったシーンもあったんだよ。

 以前、「J」でプレーしたことのあるドイツ人選手と、こんな会話を交わしたことがある。ソイツ、曰く・・

 ・・ドイツじゃ、1点のリードを、余裕をもって(危なげなく)守り切れることがディフェンダーのステータスになることはオマエも知っているよな・・それを達成するためには、もちろん、ボールがないところでの効果的な動きも含めた冷静な判断と実行力が問われるわけだ・・

 ・・そのポイントで、日本選手は、まだまだ甘い・・自分自身の判断と決断で(勇気をもって)行動するのに必要な意志が十分ではないと言うかサ・・だから日本じゃ、1点リードを守り切れる可能性は(確信レベルは)、低いよな・・

 フムフム・・まあ、そういうことなんだろうね。

 私の質問への山口素弘監督のコメントは、ここでは割愛するけれど、とにかく横浜FCが、とても価値のある学習機会を得たことだけは確かな事実だよね。

 「あの時間帯」におけるギリギリの攻防については、選手たちが、もっとも(冷や汗も含めて!?)強烈に体感しているはず。

 その「体感イメージ」を大事にしなくてはいけません。「その瞬間」における、自分の意志と、イメージングも含めた実際のアクションを、しっかりと思いだすことこそが「次につながる」のですよ。

 そう、危急状況であるからこその「冷静な観察能力と実行力」。

 このポイントについては、今回のドイツ滞在でも、トッププロ連中と何度もディベートしたっけね。

 それは、瞬間的な「アクションイメージの空白」を、いかに意志で充填するのか(意識の空白をいかに少なくするのか)・・っちゅうテーマのディスカッション。

 彼らは、そんな危急状況をトレーニングで作りだし、そこで繰り返しプレイヤーに「意識させる」ことで大きく改善できる・・と主張する。いや、ホント、サッカーは深いよね。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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