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2010_WM(1)・・開幕戦・・全体的なサッカー内容からすれば「まあ」フェアな結果だったと言えるだろうけれど、わたしは南アに肩入れしていましたヨ・・(南アフリカvsメキシコ、1-1)・・(2010年6月11日、金曜日)

そりゃ、メキシコの方が、地力では上だよね。彼らは、ゲーム立ち上がりの時間帯では(まあ前半は全般的に!)抜群のダイナミック&クレバー&忠実ディフェンスとスキルフルなポゼッションサッカーをベースに南アを押し込み、セットプレーも含めて、何度か決定機を演出した。また、ゲーム全体を通したチャンスの量と質という視点でもメキシコに一日の長があった。

 でも、南アフリカが魅せつづけた、クリアな勝負イメージを全力で追い求める「統一された意志による忍耐力」にも感服した。もちろん、決して受け身に下がるのではなく、あくまでも明確なイメージをもって積極的に(そして忍耐強く)組織的にボールを奪い返して必殺の「蜂の一刺しカウンター」を見舞うというイメージ。

 サッカー経験のない友人が、こんなことを言っていた。「たしかに、メキシコの方がゲームを支配していたし、そのなかで、セットプレーも含めて、何度か決定的なチャンスも作り出したけれど、それでも、迫力じゃ、南アの方が数段上だった」

 そんな印象が残ったのは、南アが、スピーディーな「蜂の一刺しカウンター」で何度も決定的チャンスを作り出したからに他ならないと思う。とにかく、忠実なチェイス&チェックをベースに、周りが「一体」となって次のボール奪取勝負を仕掛けていく組織ディフェンスと、それがあるからこその(要は、そのボール奪取勝負と次のカウンター勝負パスに対する信頼感があるからこその!)抜群にスピーディーで迫力あるカウンターに舌鼓を打っていた。フムフム・・

 そして、南アのチャバララが、まさに「狙いどおり」といった先制ゴールをブチ込んだとき、思わず声が出た。「サスガ〜〜、パレイラ先生・・」

 南ア代表チーム監督、アルロス・アルベルト・パレイラ。彼は、1994年アメリカワールドカップで、母国ブラジルを優勝へ導いた後、ヨーロッパでのサッカーコーチ国際会議で何度か講演した。私は、それを聞きながら、とても素晴らしいフィロソフィーとパーソナリティーの持ち主だと感じ入った。

 でも、その1994年ワールドカップ優勝チームは、母国ブラジルで、「あんなのはブラジルのサッカーじゃない!」なんて理不尽な批判に曝(さら)された。ブラジルのサッカーファンは、サッカーの究極の目標ともいえる「美しく勝つ」ということ以外は認めないからね。講演の合間のティータイムで、パレイラが、そんなニュアンスの愚痴をこぼしていたっけ。でもさ・・

 そして、2006年ドイツワールドカップ。再びブラジル代表を率いることになったパレイラは、スター連中を、きら星のごとく散りばめたチームで一敗地にまみれた。彼らがフランスに完敗したゲームについては、スタジアムの記者席で、その証人になった。それは、本当に、とても深〜い学習機会だった。

 ・・へ〜〜、「あの」パレイラでも、こんな大きな失敗をするんだ〜・・それって「ブラジル」という呪縛の故!?・・まあ、そういうことなんだろうね・・でもさ、あれだけの天才連中を抱えていたら、パレイラでなくても、やっぱり、美しく勝負強い「究極の理想型サッカー」を追い求めたに違いないよな〜〜・・なんてネ・・

 その、カルロス・アルベルト・パレイラが、今度は、南アで「究極の勝負強さ」を追求するサッカーに挑戦することになった!?

 下馬評での南アは、ワールドカップ史上で最初の、グループリーグで敗退するホストカントリーになる可能性が大きいということになっている。わたしは、そんなチームを引き受けたパレイラのチャレンジャー精神を、心からレスペクトしていました。

 まあ、パレイラさんの真摯なコーチング姿勢に少しでも個人的に近づいたという体感もあったから、やはり肩入れしていたんだろうね、ゲームを追いかけているうちに、「その入れ込みレベル」が、どんどんと高揚していったのですよ。

 だから、メキシコのショートコーナー場面で、意識と視線を奪われ、結局、ファーサイドゾーンで何人ものメキシコ選手をフリーにしてしまった南ア守備ブロックの「稚拙なミス」に、深〜い溜息をついていた。もちろん「それ」は、メキシコの同点ゴールシーンですよ。

 また後半44分に南アがブチかました見事な「蜂の一刺しカウンター」から、ワントップのムフェラがポスト直撃のシュートを放った絶対的チャンスシーンでも、深〜い溜息をついていた(誰もが息を呑み・・そして南アの決勝ゴールを確信していた!!)。

 「タラレバ」は厳禁だけれど、「あれ」が入っていたら、もっともっと素敵な「パレイラ・ストーリー」が浮き出してきたのに・・

 まあ確かに、全体的な内容からすれば、とてもフェアな結果だったわけだけれど、それでも、ホストカントリーの南アが魅せた立派なサッカーに(ゲームの立ち上がりは、ホントにどうなることかと心配になったけれど・・)心からの拍手をおくっていた筆者だったのでした。

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 ホントに、こんな素敵な開幕ゲームをスタジアム観戦できなかったなんてネ・・残念。さて、わたしの南アWM(=Welt Meisterschaft)遠征計画ですが、所用が重なっていることで、 現地への出発を遅らさざるを得ませんでした。だから開幕ゲームにも間に合わなかった・・。

 日本を出発するのは、6月13日。そして、ヨハネスブルクの空港にランディングするのは、日本対カメルーン戦当日の朝、0730AMです。そこで、予約してあるレンタカーをピックアップし、SIMカードや水などを仕入れてブルームフォンテーンへ400キロのドライブ・・っちゅうわけです。

 それだけじゃなく、ブルームフォンテーンに到着しても、まずアクレディテーション・センターへ行って、プレスIDを作ってもらわなければなりません(スタジアムとは別の場所!)。本当にゲームに間に合うのだろうか・・。

 まあ、やるっきゃないよな。フ〜〜・・

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。

 




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