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2010_WM(19)・・雑感・・そして、美しさと勝負強さのハイレベルなバランスという王道のベクトル上を進化しつづけるドイツ・・(ドイツvsイングランド、4-1)・・(2010年6月27日、日曜日)

フ〜〜、やっとブルームフォンテーンに着いた。ということで、今日は、昨日の「ハードワーク」も含めた雑感から入らせていただきます。

 昨日は、ご存じの通り、ルステンブルクで、アメリカ対ガーナを観戦しました。そのコラムの最後で、たぶん遅くとも朝の2時ころには「B&B」に到着できるのではないか・・なんて書いたけれど、とんでもなかった。

 ルステンブルクでの最終戦ということもあったんでしょうか・・。また、イングランドが来るかもしれないとチケットを買った人々も多かった!? とにかく、帰りの渋滞が尋常じゃなかったのですよ。

 ルステンブルクについては、大会がはじまる前から交通事情の悪さが取りざたされていた。南アの首都プレトリアからつながるフリーウェイは一本だけ。それも、一車線の対面通行だからね。要は、一般道と、何ら変わらない。でも、「側道」の幅はかなりあるから、遅い車は、その側道に回避することで、速いクルマを追い越させる・・っちゅう、暗黙の了解があります。そんな「一本道」に数万台のクルマが流れ込んだというわけです。

 ところでルステンブルク。その町は、「地の果て」なんていう感じです。要は、その先には、アフリカの大自然しかないのですよ。そして、文明圏へのアクセスは、その一本道のみ・・っちゅうわけです。

 そんな道路に、試合後に、数万台が・・。わたしは、記者会見に出席した後、コラムをアップしてからスタジアムを後にした。だから、試合の一時間半後あたり。もう大丈夫だろうとタカをくくっていた。でも・・。とにかくクルマがまったく流れない。事故でもあったんだろうか・・

 先日も、ルステンブルクの帰りに、同じような、まったく動かない渋滞に巻き込まれたけれど、それは「事故の見物渋滞」だった。でも今回は、ちょっと事情が違うかも。まったくクルマが動かないけれど、だからといって、先の方で、ポリスが事故処理をやっている様相もない。

 そして判明した。それは、単なる自然渋滞だったのですよ。わたしは、渋滞のメカニズムについては、よく分からないけれど、「バタフライ効果」なんかもあったんだろうね。とにかく、スゴイの一言だった。

 そして、もちろん、ルール違反走行のオンパレードになる。サスガに、対向車線をブッ飛ばすような「輩」は数えるほどだったけれど、多くのクルマが「側道」をガンガンと突っ走っていくのです。

 「ダメだぞ・・そんなヤツらと一緒になっちゃダメだぞ・・」

 わたしの心の声が、自制させます。でも、あんなにたくさんのクルマが行っちゃうんだぜ、オレも・・いやダメだ・・でも、どうせ先の方で一緒になるんだから同じじゃネ〜か・・いやダメ、本線に留まるべきだ・・うん・・

 でも最後は、目の前のクルマに引っ張られるように側道へ入っていってしまった。そして走ること数百メートル。結局そこでストップ。そして後悔した。あ〜あ・・誘惑に乗るんじゃなかった・・。他の、本線に残っていたドライバーの方々の「白い眼」が全てわたしに向けられている・・なんて感じ。分かるでしょ!? 恥じ入っていた筆者でした。お恥ずかしい。

 それでも、親切に、本線へ入れてくれた方がいた。感謝です。それ以降は、もちろん、行儀よく運転しましたよ。それにしても疲れた。二時間以上もノロノロ走行がつづいたんだからね。そしてB&Bにたどり着いたのは、午前4時をまわっていた。フ〜〜・・

 それから、三時間ほど仮眠し、事情があって交換しなければならなかった新しいレンタカーをピックアップするためにヨハネスブルクの空港へ寄ってから、ブルームフォンテーンへスタートした次第。

 そのドライブだけれど、最初の頃は、とても快適だったけれど、途中から、急に交通量が多くなってきた。それも、多くのクルマが、ドイツとイングランドのフラッグをはためかせている。彼らも、ブルームフォンテーンの試合へ行くのか〜〜・・。そして、またまた渋滞・・。フ〜〜・・

 それでも、まあ、昨日のほどの異常な渋滞じゃなかったから助かった。そして、予定より一時間遅れでブルームフォンテーンのメディアセンターに到着した次第でした。

 取り敢えず、ここまでのコラムをアップしておきます。もちろん、後から勝負マッチのコラムを書き足します。では・・

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 ということで試合のコラム。まずは、前半40分あたりのイングランド、ランパードが放ったシュートの場面から。

 そのシュートがバーを直撃し、真下へ叩きつけられた。そのシーンを観ながら、誰もが、1966年イングランドワールドカップ決勝、イングランド対ドイツ戦を思い出していたことでしょう。

 そのとき私は14歳の中学生だったけれど、その、歴史に残る激戦は、テレビでもハイライトが放映されたと記憶しています。だから、延長前半10すぎの、ジェフリー・ハーストが放ったシュートがドイツゴールのバーを直撃し、強烈に、真下へ跳ね返ったシーンもよく覚えている。

 もちろん、そのときは誰も確信をもって判断できなかったはず。でも、その試合のラインズマンが、「あれは、ゴールラインを割っていた・・」とレフェリーに伝えたことで、ゴールと認められたのですよ。そして、その判断が遺恨として残ることになる・・

 イングランド、ジェフリー・ハーストのシュートは、後で映像を詳細に分析することで、ボールはゴールライン上でバウンドしていたのであり、決してラインを割ってはいなかったことが判明した(少なくともドイツでは、そう確信されている!)。まあ、当時は、詳細な映像情報はなかったから、仕方ないけれど、イングランド人を除いた誰もが「ホームタウンデシジョンの疑惑」を感じていたに違いない。

 それにしても、あのシュートが(今度は、この試合でのランパードのシュートのことですよ)同点ゴールと認められていたら、ゲームがとてもエキサイティングに盛り上がっていっただろうね。もしかしたら、歴史的なビッグゲームにまで「成長」したかもしれない。

 あっと・・そのシュートだけれど、実際は、跳ね返ったボールが、明確にゴールラインを割っていたのですよ。そう、だから、イングランドの同点ゴールだった。ついていないイングランド。まあ、レフェリーのミスジャッジもドラマのうちだからネ。

 それにしても、この目に見える「両チームのチカラの差」は一体何なのだろうか。ドイツは、よいチームになっている(優れたサッカーを展開している)ということだけれど・・

 とにかく、組織プレーと個人プレーが、とても素晴らしいハーモニーを奏でているドイツなのですよ。例によって、ボール奪取イメージが有機的に連鎖しつづける素晴らしいディフェンスと、攻撃へ移ったときのシンプルな組織コンビネーションが、イングランド守備ブロックを切り裂いていく。

 ワンツーを積み重ねていく美しい組織コンビネーション・・それに、三人目、四人目の選手が、後方からスペースへ抜け出していく・・本当に、素晴らしい「ウラスペースの攻略プロセス」じゃありませんか。そして、そんな美しいプロセスを、実際のゴールに結びつけるのです。そんな、ところもドイツの真骨頂ということですかね。

 そんな、複合的コンビネーションだけではなく、先制ゴール場面では、一発ロングパスからミロスラフ・クローゼが、個のチカラを魅せつけるように抜け出し、そのまま、テリーと競り合うなかで滑り込むようにゴールを決めた。素晴らしい。

 2点目は、クローゼ、ラーム、そしてトーマス・ミュラーが絡む、トントント〜〜ンという、まさに目の覚めるような素晴らしいダイレクトコンビネーション。その流れのなかから抜け出したトーマス・ミュラーが、イングランド選手の意識と視線を引きつけ、逆サイドでフリーになっていたルーカス・ポドルスキーへ冷静にロビングパスを送った。そして次の瞬間、ドイツが誇る「天才ルーカス」の左足が炸裂した。

 そんなドイツに対し、イングランドの攻めは、まさに大味。ドイツが、正確で自信あふれるボールコントロールとシンプルなパス交換で、イングランドの「協力プレス」をかわしていくのに対し、イングランドは、うまくボールを動かせないのですよ。だから、アバウトな論パスを前戦へ送り込むなど、どうしても「大雑把なパワーサッカー」という印象になってしまう。

 でも、「2-0」となってから、やっとイングランドが目覚めた。パワーサッカーに、繊細なニュアンスが付け加えられていくのですよ。そんなプレーを観ながら、シンプルだけれど、一つ一つのプレーが、より自信にあふれ、正確でクリエイティブなモノへ昇華していったと感じていました。

 そうそう・・それこそがイングランド・・巧さと組織マインド、そしてパワフルな意志のコラボレーション・・!? ちょっと無責任な表現になってしまったですかね!?

 ヨーロッパ予選では、本当によいサッカーを展開していたから、わたしはイングランドを高く評価していたんだけれど・・。

 この試合でのイングランドが、ドイツとのチカラの差を見せつけられてしまったことは確かな事実だよね。でも、「今日のチカラの差」が、根本的な差だとは思わない。でも、「まあ・・こんな日もあるサ・・」ってな評価も正しくないと思う。やはりイングランドは、何か、根本的なところで大きな課題を抱えているのかもしれない。何せ、個人的には、あれだけの「能力」を備えているんだからネ。

 ドイツは、素晴らしいサッカーで世界にアピールした。前回大会につづき、内容的にも、「美しく強いサッカー」というベクトルを進化させている。以前は世界サッカー界に浸透していた「ドイツのパワーサッカー」というイメージからは、徐々に解放される傾向にあるよね。その意味も含め、最後にガッツポーズを・・

 「やったゾ〜〜〜ッッッ!!!!」

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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