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2010_WM(16=番外編)・・ワールドカップという巨大な刺激と、岡田武史というテーマ・・(2010年6月25日、金曜日)

日本からの、雑誌やラジオの電話取材を受けながら思っていた。

 やっぱり、オレの内部思考コンテンツを「引き出して」くれるような「他の方々の創造的なチカラ」は、わたしの哲学的な発展にとって、とても重要な意味があるよな〜〜。

 わたしの新刊、「サッカー戦術の仕組み」も、サッカー好きの編集者やライターの方々が、寄ってたかって質問をぶつけてきた。だからこそ内容を深めることが出来た。自分一人では、確実に「煮詰まって」しまうような錯綜したテーマも、視点を変えることで、とても魅力的に展開させることができたのですよ。

 やはり、さまざまな思考をクリエイティブにミックスしていく手法は効果的。でも、南アで受ける電話取材は、なかなか深い発想の発言が口をついていたにもかかわらず、それを録音テープに残しておけない。だから、忘れちゃう。これは大変だ・・と、思い出せる範囲で、コラムとして記録しておこうとキーボードに向かったのでした。もう遅いかな〜〜!?

 まず、ワールドカップという「巨大で強大な刺激」というテーマ。

 松井大輔にしても本田圭佑にしても、またちょっと前までの大久保嘉人にしても、皆さんもご存じの通り、わたしは、彼らの「低級な組織プレーマインド」を強烈に批判しつづけてきました。要は、チェイス&チェックに代表される「汗かきディフェンス」をやらないとか、攻撃では、パス&ムーブも含むボールがないところでの動きの量と質が足りないといった批判です。

 低級な守備意識・・攻撃では、もっとシンプルにプレーしろ・・もっと走れ・・足を止めるな・・もっと闘え!・・などなど、観ていて腹が立つ・・あれほどの才能に恵まれているのに・・それってサッカー的な犯罪じゃネ〜〜かっ!?・・ってな具合。

 たしかに彼らは、日本有数の「才能」に恵まれている。ただそれが、チームにとって良いカタチで活かされていない。また、その才能にしても、相手と足を止めて対峙した状態から、その相手選手を置き去りにしてしまうような勝負ドリブルを繰り出せるわけじゃない。皆さんも、彼らがドリブルで「一流の相手ディフェンス」を翻弄した・・なんていうシーン、観たことないでしょ?

 そりゃ・・サ・・うまくスペースへ入り込んでタテパスを受け、遅れて対応してきた相手ディフェンダーを、対処的なカットで翻弄しちゃう・・なんていうシーンはあるだろうけれど、本物の勝負は、やはり、足を止めて対峙した状況を、いかに効果的に(一人で)チームの目的のために打開できるのかという一点に絞り込まれるのですよ。

 そんな、日本を代表する才能連中。わたしは、彼らが、攻守にわたる汗かきプレーを全力でやったら、確実にチーム力はアップする・・だからこそ、あの才能が惜しい・・なんてことを言いつづけてきたわけです。

 そんな、なんとなく煮え切らない状態で「本番」を迎えた。そして、日本が誇る「才能たち」が、本物のブレイクスルーを果たすのですよ。特に松井大輔。そのイメチェンには、面くらい、逆に、ちょっと腹まで立った。何故いままで、出来るのにやらなかったんだ〜〜!?

 もちろん彼らも、相手が世界の超一流ということで、自分たちの才能プレーが、うまく通用しないことを体感している・・だからこそ、勝つために、また自分たちのアイデンティティーを求めて(自分たちの誇りのために・・そして市場価値アップのために!!)攻守にわたる汗かきハードワークを、ここが大事なポイントだけれど、『自らの意志をもって』ギリギリの限界まで実行するようになった・・のだと思うのですよ。

 だからこそ、ワールドカップという巨大で強大な刺激・・。あっと・・もちろん、岡田武史が展開したに違いない、優れた「心理マネージメント」も忘れちゃいけない。インテリジェンスと優れたパーソナリティーにあふれる彼は、とても優秀なプロコーチなんですよ。もちろん、アタマが良くなきゃ、プロ監督なんて務まるはずがないけれどネ。

 次が、立派な「現実的サッカー」というテーマ。

 岡田武史は、究極の組織プレーを志向する。その方向性には、まったく変わりはない。でも、このステージは「世界」だからね。だから彼も、しっかりとした「ゲーム戦術」をもって試合に臨まなければならないことは言うまでもない。そう・・ある意味での「究極の組織プレーの現実的な調整」。

 「我々のチカラでは、まだまだ、世界の超一流とは対等に闘えない・・だから、しっかりとしたプラン=ゲーム戦術=が必要・・オランダ戦でも、同点を目指して少し前へ重心を移していったら(ちょっと攻撃的にベクトルを振ったら)、逆に、二本も、オランダに決定機を演出されてしまった・・またこの試合(デンマーク戦)でも、選手に、少し攻撃的なイメージを与えたら、逆に、攻め込まれて大ピンチを迎えてしまった・・」

 岡田武史が、そんなニュアンスのことを言っていた。まさに、その通り。

 巷では、「なんだ・・結局岡田は、相手の良さを消すサッカーしかやってなかったじゃネ〜〜か・・単に、大きなツキに恵まれただけだ・・」なんていう斜に構えたコトを言う方々もいるでしょう。でもね・・

 わたしは、決して岡田武史が、受け身で消極的な(だから無様な)守備偏重サッカーをやったとは思っていないのですよ。だから「立派なサッカー」。

 たしかに、彼らが作り出したシュートチャンスは、とても限られたモノだった。でも、彼らにとっての守備は(ボール奪取プロセスは)次の攻撃のためにあり・・という彼らの「積極的な闘う意志」が、ビンビン放散されているのを強く感じた。

 これは、微妙なニュアンスのテーマ。たしかに、相手が強いことで、全体的に守備ブロックが後退することは多かった。でも決して、受け身のリアクションサッカーではなく、常に、自分たちからアクトしていた(脳裏に描写した次の攻撃イメージをベースに自然と身体が積極的に動いていく・・ちゅうイメージ!!)。

 さきほど電話インタビューされたときには、もっと、もっと広く、深いハナシのコンテンツがあったように思う。ちょっと残念。30分も話していたから、それをすぐにメモを取っておけば良かった。

 あっと・・パラグアイ戦でも、確信レベルが天文学的な領域まで高まっている「この3試合のやり方」を踏襲する・・とか、昨日の記者会見での、丁寧な受け答えが、彼の達成感を象徴していた・・とか、まだまだ多くのテーマが出ていたはずなんだけれど・・。フ〜〜・・今度から、すぐにメモを取ろう・・

 何か、もの凄いスピリチュアルエネルギーが沸き上がってくるように書いてしまった。あまり寝てないのに・・あははっ。

 今日は、これから、スペイン対チリの勝負マッチです。では・・

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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