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2012_UCL_準決勝の1・・フ〜〜ッ!・・でも、まあ仕方ない・・(FCバルセロナvsチェルシー、 2-2)・・(2012年4月25日、水曜日)

さて、2011-2012年シーズン、UEFAチャンピオンズリーグの決勝へ、まずチェルシー・ロンドンが駒を進めた。

 それにしても、(チャンピオンズリーグを優先したにもかかわらず!?)バルセロナが敗退したことは残念でならない。

 あんなサッカーは、そう簡単には出てこないだろうからね。要は、あのサッカーコンセプトを体現するのは、とても忍耐の要る、骨の折れる作業だということです。あっと・・まだ少しは「今のバルセロナ」の時代はつづくとは思うけれど・・。

 まあ・・バルセロナが展開する「美しく勝つサッカー」というテーマについては、今年に入ってから多くのコラムを書いたので、そちらも参照してください。

 ということで、チェルシーをホームのカンプ・ノウに迎えた準決勝の第二戦。

 ゲームの基本的な構図は、言うまでもなく、下がり気味に厚く守るチェルシー守備ブロックを、ゲームを支配するバルセロナが、例によっての特異なリズムの人とボールの動きで攻略していくというモノです。

 とはいっても、強者チェルシーの守備だから、そう簡単には崩せない。それでもバルセロナは、流れのなかから、ワンツースリーというコンビネーションのなかに、3人目、4人目のフリーランニングをミックスしていくことでチャンスを作り出すのだから大したものだ。

 でも、いかんせん、チャンスの数が少なすぎる。それに、相手GKは世界最高の一人、チェヒだからね。「ウラ突き」コンビネーション(メッシとセスクのワンツーコンビネーションから、メッシのフリーシュートなど!)だけじゃなく、何度か試みたミドルシュートも、ことごとく防がれてしまう。

 ということで、バルサにとって、ゲーム展開の雰囲気は、とても重苦しいものになっていった。そんななかで、前半35分に、バルサが待望の先制ゴールを挙げるのですよ。思わずガッツポーズが出た。

 右コーナーキックのこぼれ球から(要は、チェルシー守備組織のバランスが崩れた状態で!)左サイドのクエンカにボールがわたり、そこからの折り返しを、(チェルシー守備組織のバランスが崩れたからこそ!)フリーになったセルヒオ・ブスケッツがゴールへ流し込んだ。

 それだけじゃなく、その2分後には、チェルシー守備の重鎮であるテリーが、ラフプレーで一発レッドの退場処分を受けちゃう。

 ・・流れのなかからではなく、セットプレーからの先制ゴール(その現象の意味合いは!?)・・テリーの退場・・そして、ゲームが動いていく・・

 それまで「戻って」守備を固めていたチェルシーが、徐々に守備ブロックを「開け」、前へ重心をかけはじめたのです。まあ、失点と、テリーの退場という刺激(アドレナリンの放散)によって、ちょっと冷静さが欠けていった!? そして次の瞬間、バルセロナの「ショートカウンター」が炸裂した。

 少しでも守備ブロックが開いたら(スペースが出来たら)、テリーがいないことでディフェンス組織のバランスが「まだ」しっかり取れていないこともあるのだから、そりゃ、バルセロナの才能が炸裂するのも道理。ホントに素晴らしいカウンターだった。

 ・・押し上げるチェルシーから、中央ゾーンでボールを奪ったアレクシス・サンチェス・・眼前にスペースが広がっている・・彼が、迷わずタテへ突っ掛けていったのは言うまでもない・・チェルシー守備が「そこ」へ集まってくる(チェルシー守備が引きつけられた!)・・アレクシスは、囲まれたことで、一瞬、動きを止める・・そう、効果的なタメの演出・・

 ・・でも逆サイドは動きつづけている・・メッシとイニエスタ・・そしてランパードがアレクシスにアタックを仕掛けた瞬間、まさに針の穴を通すようなスルーパスがメッシへ出された・・

 ・・まあ、これで勝負あり・・メッシは、ドリブルで突っ掛け、チェルシー選手の視線と意識を釘付けにし(見事なタメ!)、そのことでフリーになり、「大外」を回りこんでいくイニエスタへ、完璧なラストパスが回されたっちゅう次第・・

 ・・こうなっては、チェルシーの天才GKチェヒもどうしようもない・・イニエスタの狙いすました「ゴールへのパス」が、見事に右サイドネットに吸い込まれていった・・前半43分のこと・・

 この時点で、ホームのバルサが「2-0」のリード。それだけではなく(テリーの退場で)数的に優位な状況。

 こうなったら、失うモノがなくなったチェルシーが、「もっと」守備ブロックを開けて攻め上がっていくはず。そして、天才揃いのバルセロナに、カウンター(ショートカウンター)のチャンスが広がる・・

 よし、これでオーケー・・。わたしも含め、誰もがそう思ったに違いない。でも・・

 好事魔多し!? その諺のバックボーンは、もちろん心理・精神的なモノでしょ。誰もが、「バルセロナが絶対有利・・」思っているに違いないと書いたけれど、その中にはバルセロナ選手も含まれていた・・っちゅうことです。

 「それ」は、ホントに一瞬の集中切れで起きてしまった。誰もが眼を疑った。

 ・・タテパスをランパードへ送り、そのままパス&ムーブで走り上がっていく(チェルシーのハーフ)ラミレス・・タテパスを受け、必死でキープするランパード・・一瞬、ルックアップ・・そのとき、走り上がっていくラミレスが見えた・・

 ・・迷わず(まあ、それしか選択肢がなかったからだろうけれど・・)タテパスを蹴り出すランパード・・そのとき、走り上がっていたラミレスは、まったくフリーになっていた・・戻ってきたシャビも、最終ラインのプジョルやマスチェラーノも、誰もラミレスをマークしていなかった(どうせタテパスなんて来ない・・というイージーな心理!?)・・まさに、一瞬の集中切れ・・

 ・・そして、フリーで抜け出したラミレスが、貴重な、まさに全てをひっくり返す「アウェーゴール」を決めた・・バルサGKのアタマを越えるテクニカルなロビングシュート・・見事〜!・・

 そして後半。言わずもがなだけれど、再び、前半の立ち上がりとまったく同じゲーム展開になっていく。引いて、守備ブロックをガチガチに固めるチェルシーに対し、ゲームを支配して攻め込むバルセロナ。でも・・

 たしかに、メッシのPK失敗もあったけれど(セスクに対するドログバのファール!)、でも、ありったけの不利な条件をはね返して「勝ち抜ける状況」までこぎつけたチェルシーの強者たちは、これ以上ないという集中力を発揮しつづけたのです。

 そう、チェルシーは、まさに、集中力の塊(かたまり)だった。たしかに(流れのなかから)クエンカのフリーシュート場面は作り出したけれど、結局バルセロナは、強者ディフェンスブロックを崩し切れず、逆にチェルシーの一発カウンターに沈んでしまった(後半ロスタイムのフェルナンド・トーレスのカウンターゴールで、2-2!)。

 フ〜〜ッ・・まあ、仕方ない。これからは、「このバルセロナ」が、どのように変容していくのかを、しっかりと見届けよう。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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