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2012_五輪U23・・巧みに「二兎」を手中におさめた関塚隆・・選手交代の妙・・(U23日本代表vsホンジュラス、 0-0)・・(2012年8月2日、木曜日)

フ〜〜ッ!・・やっとゲームの流れが落ち着いてきた・・やっぱり守備の内容だよ・・守備・・それこそがサッカーの絶対的ベースなんだ・・

 このゲームで関塚ジャパンが目指す具体的なターゲットは、もちろんグループ首位。それを達成した関塚ジャパンを祝福したい。

 でも、「そこ」へ至るまでは、大幅に選手を入れ替えたことで「ゲームの流れ」がちょっと不安定になったことも含めて、少なからずの紆余曲折があったと思う。何度か、ホンジュラスの爆発的な勢いの「個の仕掛け」にピンチに陥ったしね。

 ただ最後は、主力を「休ませる」ことと、グループ首位の奪取という「二兎」を両立させた。

 関塚隆監督がマネージした(ゲームへ臨んでいく)イメージ作りと、ゲーム中の采配(ハーフタイムの指示と選手交代など・・)に拍手を送りたい。

 さて、ということでテーマだけれど、何といっても「それ」は、関塚隆の采配によるゲームの「終わらせ方」にあったと思うわけです。

 関塚隆は、ゲーム終盤に、杉本健勇に代えて清武弘嗣をグラウンドに送り出したんだよ。そして日本の前線ブロックが(いわゆる・・)ゼロトップになった。そして、やっと、本当にやっと、日本のサッカーに「落ち着き」が戻ってきた・・と感じた。

 ゼロトップ・・

 基本的にそれは、誰でもスピアヘッドに入ってもいい(でも誰かは、常にスピアヘッドにいなければならない!)という発想のゲーム戦術だよね。

 たしかに基本は、大津祐樹がスピアヘッドに「上がる」というモノだったんだろうけれど、でも実際には、それぞれの前線選手たちの「プレーイメージと意志 のポテンシャル」によって、自然と、基本的なタスク(役割≒機能性)が決まっていったと思う。そして、だからこそ、日本オリンピック代表チームのサッカー が「落ち着いて」いった。

 この「落ち着き」の意味合いについては後述するけれど、まず、選手交代と、その後の、選手たちの実質的なプレー内容から入っていこう。

 要は、それぞれの選手がもつ守備意識(汗かきへの意志!)の量と質によって、自然と、実質的なプレー内容が決まっていったっちゅうことです。

 ここでいう「守備意識」とは、もちろん、最前線からのチェイス&チェックに代表される汗かきハードワークの量と質のことだよ。

 メンツを見る。

 齋藤学(その後は永井謙佑)、大津祐樹(その後は東慶悟)、ワントップのターゲットマン(ポストプレイヤーとして期待された!?)杉本健勇に代わって登場した清武弘嗣、そして宇佐美貴史。

 言わずもがなだけれど、このメンツだったら、自然な流れとして、宇佐美貴史がワントップに収まっていくのは自明の理だよね。何せ、宇佐美貴史の、守備での汗かきハードワークは、たかが知れているわけだから・・

 それに対して、ゼロトップを形成する(前述した)残りの3人は違う。

 最前線から、猛烈な勢いのチェイス&チェックで相手ボールホルダーを追いかけ回す齋藤学、大津祐樹、そして清武弘嗣。だからこそ、両サイドバックと守備 的ハーフコンビの守備プレーも「落ち着いて」いった。そして、だからこそ、宇佐美貴史の「才能プレー」も含めて、次の攻撃の「量と質」も格段にアップし た。

 やっぱり、守備こそが全てのスタートライン(絶対的な基盤)なんだよ。

 ところで杉本健勇。

 この試合では、サポートが薄かったことで、十分には存在感を発揮できなかった。もちろん、世界トップリーグで活躍する猛者ぞろいのホンジュラス守備が相手だから、簡単に、効果的なポストプレーを繰り出すわけにゃ、いかなかったでしょ。でもね・・

 まあ、この試合でハッキリしたのは、杉本健勇は、やはり、試合の流れを変える「切り札」の交替選手という役どころが、もっとも効果的だということだね。

 ・・最初は「ゼロトップ的」なやり方でゲームに入っていく・・強烈な守備意識を前面に押し出す前線カルテット・・それは、それで、とても強力な極限の組織サッカーを形づくる・・

 ・・でも、「それ」でゲームが膠着した場合、切り札として杉本健勇を投入し、それまでの「やり方」をガラリと変える・・そう、攻撃の流れの変化の演出。そして、相手守備の「混乱」に乗じてチャンスを作り出す・・ってな発想。いかが・・?

 それは、ゲームの流れを激しく「揺動」させる変化の演出とも言えそうだね・・

 そんな「揺動を引き起こす選手交代」対し、この試合で関塚隆が繰り出したのは、ゲームの流れを「落ち着かせる」選手交代だった!? もしかしたらそれは、ホンジュラスの「勝つことへの意志のポテンシャル」を減退させるための「変化」というイメージだったのかもしれない。

 ホンジュラスだって、絶対的な優勝候補であるブラジルとは当たりたくなかっただろうからね。彼らは、出来る限り高い位置で日本のボールを奪い、個の才能をコアに、必殺のカウンターを仕掛けていくっちゅうイメージ・・

 そんな彼らだったけれど、大きく増幅した関塚ジャパン前線ブロックの「汗かきハードワーク」と、その後の攻撃での危険度のアップを体感させられた。

 たぶん彼らは、疲労も手伝って、「こりゃ、ダメだ・・うまくボールを奪えなくなった・・それにヤツらの攻撃も、より危険になりはじめやがった・・この 14番は、2列目にいたら、まったく怖くなかったけれど、スピアヘッドに入った途端、危険なドリブラーに変身しやがった・・」なんて感じていた!? あは はっ・・

 とにかく私には、徐々に、ホンジュラスの意志のポテンシャルが減退していったと感じられた。

そう・・、関塚ジャパンにとって、とても重要な意味があった「ゲームの落ち着き」だけれど、それには、ホンジュラス選手たちの「意志のポテンシャルを減退させた」というニュアンスが内包されていたと思うわけなのです。

 とにかく、清武弘嗣がグラウンドに登場し、宇佐美貴史が「流動的なワントップ」に収まってからは、まさに確信的に、日本が、「この試合のターゲット」へ近づいていった・・と思うわけです。

 さて、準々決勝。

 たしかに、イメージ的な難敵は「逆側のトーナメントブロック」に入った。地元のスピリチュアルエネルギーを一身に集めるイギリス、極東の最強ライバル韓国、誰もが認める今大会最強のブラジル。

 とはいっても関塚ジャパンは、「メダル」までに、エジプト、メキシコ、セネガルといったハングリーな強者と対峙しなければならない。とても厳しい勝負マッチが待っている。

 でもサ、脅威と機会は表裏一体なんだよ。困難は、厳しければ厳しいほど、その先に待っている果実は大きい・・ってなことかな。どちらにしても、チャレン ジしなければ、決して発展や進化など(世界トップのとの最後の僅差をブチ破っていくこと等!)望めないっちゅうことは、歴史が証明しているからね。

 ストロングハンド、関塚隆については、「このコラム」も参照してください。では、準々決勝を楽しみに・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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