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2012_五輪なでしこ・・立派な、本当に立派なサッカーを有難う・・そしてお疲れ様・・(なでしこ対USA、 1-2)・・(2012年8月10日、金曜日)

フ〜〜ッ!・・でもまず、フェアな全力プレーで金メダルを勝ち取ったアメリカ代表を祝福しよう・・

 そして、(タイムアップ直後に!)アメリカ選手の一人ひとりを祝福する、澤穂希や宮間あやをはじめとする「なでしこ」の女傑たちにも、様々な情緒を込めて、敬意と感謝の心を捧げよう。

 なでしこは、本当に素晴らしい闘いを披露してくれた。私は・・もちろん、日本全国の方々も・・「この」なでしこの女傑たちを心から誇りに感じているに違いない。そう・・、彼女たちは、日本のアイデンティティー(誇り)になった。

 素晴らしく立派なサッカー・・

 なでしこは、世界に対し、成長をつづける日本サッカーを強烈にアピールしてくれた。彼女たちは、昨年のワールドカップ決勝から一回りも二回りも成長した。そして女子サッカーの価値を、強烈にデモンストレーションした。

 おめでとう・・そして、ありがとう・・

 さて、ということで、ここからは試合のポイントを、例によってランダムに書きつづることにします。

 ・・試合は、アメリカの強烈なプレッシングからはじまった・・でも、そんなアメリカの勢いを落ち着いて受け止め、徐々に自分たちのペースも主張しはじめる「なでしこ」の女傑たち・・

 ・・そのペースアップの内実は、「なでしこ」が、着実にホンモノのサッカーへと発展していることを如実に感じさせた・・

 ・・その時点で「なでしこ」は、昨年のワールドカップ決勝とは、ゲームの内実が全く異なっていることを体感させてくれた・・

 ・・でも、そんな「なでしこペース」の展開になりはじめた次の瞬間、アメリカの先制ゴールが飛び出しちゃうんだよ・・それにしても、素晴らしいモーガンの突破&クロスだったね・・もちろん、ゴールを決めたロイドの、2列目からの飛び出しも素晴らしかった・・

 ・・このシーンで阪口夢穂は、ロイドが飛び出していくことを察知していた・・でも、マークし切れなかった・・そんな後方からの飛び出しだから、日本の最終守備ラインが対応できなかったのは道理・・「そこ」には、ワンバックもいたわけだからね・・

 ・・でも、このアメリカの先制ゴールで、なでしこが完璧にフッ切れたことも確かな事実だった・・完璧にゲームのペースを握るなでしこ・・まあ、そこには、アメリカの前への勢いが「落ち着いて」いったこともあるけれどね・・

 ・・とにかく、そこから「なでしこ」がブチかましつづけた、組織と個が素晴らしくバランスした「強い」サッカーは立派だった・・誰もが、頼もしく感じたに違いない・・

 ・・局面での正確なトラップとコントロール・・そして、シンプルなタイミングでのスペースパス・・もちろんそれが、人の動き(フリーランニング)と連動しつづける・・

 ・・それは、人とボールが、素早くスムーズに、そして広く動きつづける「なでしこ的」な究極の組織サッカー・・そして、だからこそ、大野忍や川澄奈穂美がブチかますドリブル勝負も、えもいわれぬほどハイレベルな実効を発揮するんだよ・・

 ・・なでしこは、組織サッカーを発展させることで、川澄奈穂美や大野忍の個人勝負プレー「も」進化させた・・それは、「なでしこ的」な正しい発展プロセスだった・・

 ・・そんな「発展プロセスのイメージ」をもって、我慢強く、その流れを加速させた佐々木則夫監督にも、敬意と感謝を表したい・・ホント、佐々木さんは素晴らしい仕事をしてくれた・・

 ・・あっと、試合・・

 ・・そこからの「なでしこ」のサッカー・・まさにフッ切れたスーパー組織サッカー・・そして「それ」に、大野忍や川澄奈穂美の、これまたスーパーな個人 勝負プレー(ドリブル突破)が、とても素敵にリンクする・・まさに「組織」と「個」が、素晴らしくバランスした高質サッカー・・

 ・・もちろん私は分かっていたつもりだったけれど、そんな「なでしこ」の発展ぶり(チームとしての本物のブレイクスルー!)を目の当たりに見せつけられたことで、こちらの参加意識も、何倍にも増幅していったという次第・・

 ・・そう言えば、日本で行われたオリンピック壮行試合の後、対戦したオーストラリアの監督さんに、こんな質問を投げたっけ・・

 ・・お褒めの言葉をいただき、とても誇らしい気持ちだが、いま言われた「なでしこの発展」の根本的なバックボーンは何だと思われるか?・・テクニックとか、そんなことではなく、根本的なファクターのことなのだが・・

 ・・そんな私の質問に対し、しばし考えたオーストラリアの監督さんが、一言・・そりゃ、自信だろ・・

 ・・そう、ワールドカップチャンピオンに輝いた自信・・

 ・・わたしは、そんな自信バックボーンを、ワールドカップの直後に中国で行われたオリンピック・アジア予選での「なでしこ」のプレーぶりから感じ取っていた・・

 ・・相手は、中国や北朝鮮、韓国やオースリラリアといった強国だからね・・それでも「なでしこ」は、まったく危なげないプレーぶりで、余裕をもって勝ち抜いた・・そんな彼女たちのプレーぶりをみながら、本当に「何か」が突き破られた・・と、感じた・・

 ・・あっと・・試合・・

 ・・そして、そんな「なでしこ」の素晴らしいサッカーが、実際のチャンスにつながるんだ・・まず前半17分の、大儀見優季が詰めた「こぼれ球シュート」・・つづく18分にも、大儀見優季の惜しいヘディングシュートがバーを叩く・・

 ・・この二つの絶対的チャンスは、アメリカGKホープ・ソロのスーパープレーによって防がれた・・ホープ・ソロは、後半37分に飛び出した、岩渕真奈のボール奪取からの決定的シュートも、スーパーセーブで防いでしまう・・

 ・・このゲームでのホープ・ソロは、少なくとも3つの失点ピンチを、スーパーセーブで防いだことになる・・フ〜〜ッ・・でも、拍手!!・・

 ・・ということで「なでしこ」のペースがつづていたわけだけれど、そこはアメリカ・・全体的に押し返すシーンでも、カウンターシーンでも、危険この上ない・・

 ・・そんなアメリカの流れのなかで、前半28分には、アメリカのクロスをヘディングで防ごうとした岩清水梓のボールが、あろうことか、日本ゴールへ飛ん でしまうんだ・・誰もが、失点を覚悟した瞬間・・でも、そのボールは、日本のポストを直撃し、そのまま逆のポスト際を流れていった・・誰もがフリーズした 瞬間だった・・フ〜〜ッ・・

 ・・その後も「なでしこ」の攻勢がつづく・・

 ・・前半33分には、これまた川澄奈穂美のドリブル突破からのクロスを、しっかりとキープした大野忍が、2列目から飛び出してきた宮間あやへ、まさに「置くような」ファウンデーションパスを送るんだ・・

 ・・そのボールを、ダイレクトで叩く宮間あや・・これまた、誰もがゴールを期待してフリーズしたに違いない決定的チャンス・・でも無情にも、そのシュートがバーを叩いてしまって・・

 ・・その後も、同じような、後方からの決定的ミドルシュート場面があった・・大儀見優季が「置いた」ボールを、大野忍がダイレクトで叩いたんだ・・でも そのシュートは、まさに数センチ、右ポストを外れていった・・それは、またまた誰もがフリーズした決定的シーンだった・・

 ・・後半・・

 ・・その9分・・ロイドの、この日2点目となる、素晴らしいドリブルシュートが、日本ゴールの右サイドネットに突き刺さる・・あり得ないスーパー・キャノン・シュート・・それは、アメリカの底力を体感させられた瞬間でもあった・・

 ・・あっと・・ちょっと「グラウンド上の現象」をトレースし過ぎだね・・

 ・・でも、なでしこの「追いかけゴール」だけはピックアップしなきゃ・・

 ・・それは後半18分・・宮間あやの素晴らしいスルーパスが、走り込んだ大野忍にピタリと合う・・そこから澤穂希へ・・澤穂希のシュートは相手の身体に 防がれちゃうけれど、諦めない澤穂希がスライディングでボールに迫るんだよ・・そして、こぼれたボールを大儀見優季がゴールへ流し込んだ・・

 ・・このゴールには、背景がある・・

 ・・それは、阪口夢穂と田中明日菜との交替・・たぶん佐々木則夫監督は、田中明日菜を中盤ディフェンスの「専業守備アンカー」に置くことで、澤穂希を、より前でプレーさせようとしたはず・・その采配が、この同点ゴールに活かされた!?・・

 ・・澤穂希だけれど、この試合でも、見えないところでチームに貢献しつづけた・・

 ・・例えば前半39分・・澤穂希は、ボールを持ち上がるワンバックに追いすがり、必殺のスライディングでボールを奪い返したんだ・・素晴らしいカバーリングとボール奪取勝負プレー・・

 ・・それは、まさに澤穂希の真骨頂だった・・危ないトコロに常に「いる」・・危ないトコロを嗅ぎ取り、忠実に「そこ」へ急行する・・素晴らしい、「ハードワークを探しつづける」プレー姿勢じゃないか・・

 ・・そんな澤穂希の「牽引パワー」は、たしかに群を抜いている・・世界中のサッカーエキスパートたちが絶賛するのも道理なんだよ・・

 ・・また、宮間あや・・なでしこの組織サッカーを、リンクマンとして引っ張る彼女は、攻守にわたる「汗かきハードワークの量と質」でも発展し、存在感を 発揮しつづけた・・そして彼女の真骨頂とも言うべきセットプレーのキック・・そこには、天才的な感覚が込められている・・

 ・・彼女たちだけじゃなく、チームの全員がヒーローなんだよ・・

 ・・また、この5年間チームを進化させつづけた佐々木則夫監督・・

 最後に、もう一度、「なでしこ」の女傑たちに対して、心からの敬意と感謝をおくる筆者なのです。本当に、お疲れ様でした。そして、ありがとう・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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