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2012_なでしこ(アルガルベ杯)・・佐々木則夫監督に乾杯!!・・(なでしこvsUSA、1-0)・・(2012年3月6日、火曜日)

ヨ〜〜シッ、ヨシッ、ヨシッ、ヨ〜シッ!!

 タイムアップのホイッスルを聞いたとき、思わず頓狂な叫びが口をついた。

 充実した準備を重ね、ベストコンディションでアルガルベ杯に臨んだ世界ナンバーワンのUSA。パワフルでスピーディーな彼女たちにガチンコの勝負を挑んだ「なでしこ」が、(USAに対して!)初めて90分での勝利を飾った。ホント、鳥肌が立つほどの興奮を覚えた。そしてその後、ジックリと、深〜い嬉しさが身体全体を包み込んでいった。

 わたしは、昨年のドイツ女子ワールドカップ全日程をレポートしつづけ、そのなかで、トーナメント(本物の勝負ステージ)を通し、彼女たちが本物のブレイクスルーを果たすプロセスを体感した。フランクフルトでの表彰台シーンは、その意味も含め、まさに感動の極みだった。

 またワールドカップが終わった1週間後に(なでしこ初戦が行われたボーフムで)開催された、ドイツプロサッカーコーチ連盟主催の国際会議でも、世界中から集まった1000人を超える猛者コーチ連中や、連盟の会長からも心から祝福された。

 彼らエキスパート連中は、なでしこが展開した素晴らしい組織サッカーに、本当に心酔していたのですよ。だからこそ、彼らの祝福には心がこもっていた。

 そして今日。実力では誰もが認めるアメリカに対し、後ろ髪を引かれることのないガチンコ勝負を挑み、そして勝ち切った。私は、そのことに心から感動し、そして感謝もしていた。

 まあ・・、なでしこのお陰で、ヨーロッパでの私の仕事が、とてもやりやすくなった・・ということもあるわけだけどね。あははっ・・

 さて、テーマ。やっぱり、ここは、佐々木則夫監督の「ストロング&インテリジェント・ハンド」にスポットライトを当てないわけにゃいかないでしょう。

 いや、ホントに素晴らしい采配でした。

 この試合だけれど、なでしこが決勝に進むためには、アメリカに勝つしかなかった。だから「なでしこ」は、ゲームの立ち上がりから「前から勝負を仕掛け」る積極的なサッカーを展開した。そこでは、佐々木則夫監督の「事前のイメージ作り」が功を奏したことは言うまでもない。そして、だからこそ、得たモノも、ものすごく大きかった!

 このゲームを観ていて、本当にビックリしたのは、後半のアメリカが効果的な選手交代でゲームの流れを引き寄せ、何度か(なでしこを押し込んで)危ない最終勝負をブチかましたにもかかわらず、「なでしこ」が、そこから再び押し上げ、逆に惜しいシュートチャンスを作りだしてしまう等、まさに「互角」という表現がピタリと当てはまるゲームの流れを演出したことでした。

 またアメリカは、タテへパワフルなロングボールを出したり、ワンバックを狙ったハイボールを送り込むことで強引にチャンスを作り出すような一発勝負もブチかましてきた。それでも「なでしこ」は、(たしかに大ピンチには陥ったけれど・・)それに動じることなく押し返していったのです。

 まさに、ワールドチャンピオンとしての自信とプライド・・

 昨年からの彼女たちの「ブレイクスルー・プロセス」は、世界サッカーにとっても、とても大事な「学習機会」だと思う。そのテーマについては、前述のコーチ国際会議でも話題になったっけ・・

 あっと・・、絶対的エースの澤穂希が、急に(!?)体調を崩して欠場したことも忘れちゃいけない。急遽、「あの」澤穂希を欠くことになっちゃったんだよ。それは、「なでしこ」にとって、とても大きなネガティブ要素になるはずだったのだけれど・・

 別件:本当に澤穂希が心配だ。よっぽどのコトがあったのか!? とにかく、なるべく早く正確な情報が欲しい。江橋よしのりさん、お願いしますよ〜・・

 ハナシの続きだけれど・・。「なでしこ」は、チームの中心選手の欠場に対しても、素早く、そして冷静に対応した。もちろん、佐々木則夫監督の優れたマネージメント。

 彼は、このゲームでは、阪口夢穂と田中明日菜の守備的ハーフコンビを採用した。2人のタスクイメージも含め、試合前の「イメージ・マネージメント」では、彼女たちのコンビネーションイメージ作りに力点を置いたに違いない。

 その甲斐あって(!?)このコンビは、とても上手く機能していたと思います。

 特に阪口夢穂が、中盤守備のディレクターとしても(もちろん率先してチェイス&チェックの汗かきにも奔走していた!)、次の攻撃でのゲームメイカーとしても、素晴らしい存在感を魅せつづけていた。また田中明日菜も、ビックリするほど冷静に、そして自信をもって、さまざまなサポート&バランシングプレーを展開していた。

 あっと・・佐々木則夫監督の(ゲーム中の)采配というテーマだった。

 その采配。佐々木則夫監督は、後半20分に、3人の選手を同時に交替させます。あんなに緊迫したゲーム展開だったのに、勇気をもって選手交代を断行したのです。

 センターバックの岩清水梓に代えて、宇津木瑠美。最前線の安藤梢に代えて、若手の高瀬愛実。そして大野忍に代えて川澄奈穂美。フムフム・・

 実は、ちょっと不安になりました。こちらは、それまでの選手の組み合わせが、とてもうまく機能していると感じていたわけだから。でもフタを開けてみたら・・

 要は、ガチンコの互角ゲーム展開という「大きな流れ」には、変化がなかったのです。いや、なでしこ選手の特長の変化が、アメリカの守備ブロックを、ちょっと不安に陥れもしたかもしれない。

 また、それだけじゃなく、その3人の交替から15分後には、チームの中心として抜群の存在感を発揮していた「あの」阪口夢穂をベンチに下げちゃう。

 若手の、菅澤優衣香との交替。そして、その菅澤優衣香を最前線へ送り込み、それまで(安藤梢と交代して)最前線にいた高瀬愛実を守備的ハーフに下げちゃう。

 これまた、「エッ・・こんな緊迫したタイミングで、とても重要なセンターハーフという役どころの阪口夢穂を交替させちゃうの??」なんて、頓狂な声が口をついた。

 でもね、そんな選手交代(基本タスクの変更!)が、うまく機能しちゃうんだな。いや、それだけじゃなく、その交替や変更によって、若手を中心に、チームに「別な種類の!?」活力が注入された・・なんてコトまで感じた。ホント、佐々木則夫監督による驚きのマネージメントだったね。

 ことほど左様に、このトーナメントでの佐々木則夫監督は、オリンピックに臨む「なでしこ」のチーム作りにとって、ものすごく意義深いポジティブな「モノ」を成し遂げたと思っている筆者なのです。

 ・・若手の経験と自信を深化させたこと・・彼女たちとベテランを融合し、その組織コンビネーションの機能性をアップさせたこと・・チーム内に健全な競争の雰囲気を吹き込み、それを醸成したこと・・世界に対し、発展をつづける「なでしこ」を存分にアピールしたこと・・等など・・

 さて・・ということで、なか一日置いた水曜日には、「あの」ドイツと優勝を争うことになりました(先ほどドイツが、スウェーデンに、4-0の勝利を収めた!)。

 ホント、スゲ〜ことになった・・いまから楽しみだ〜・・フ〜〜・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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