トピックス


2012_ヨーロッパの日本人・・いいね〜、香川真司・・(2012年1月24日、火曜日)

勝負は、ボールのないところで決まる・・なんてネ。

 「そうなんだ・・シンジのプレーでもっとも高く評価されているのは、攻守にわたるボールがないところでの動きの量と質にあるんだよ・・もちろん、そのアクションが実際の成果につながっているというのが大前提だけれどサ・・まあ、それは、オレ達エキスパートのなかでのハナシだけれどネ・・あははっ・・」

 ドイツの友人プロコーチが、そんなことを言っていた。ハンブルガーSVとのアウェー戦。チャンスメイクの流れのなかで光るプレーを魅せるだけではなく、決定的な場面でアシストまで決めたボルシア・ドルトムントの香川真司は、この節のベストイレブンに選ばれた。まあ・・さもありなん。

 ディフェンスでは・・

 最前線からの忠実な汗かきチェイス&チェック(もちろん相手ボールホルダーや次のパスレシーバーに対する素早く効果的な寄せアクションも含めて・・)、また相手ボールの動きが停滞する「流れ」を正確に見極めた効果的な協力プレス参加、もちろんインターセプトや(相手の)次のパスレシーバーへのアタックも、猛禽類の鋭い眼で狙いつづける。

 それに近頃では、相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)のボール絡みアクションを「読んだ」クレバーなボール奪取プレー(ボール奪取アタック)にも磨きがかかっていると感じる。まあ・・自信の深まりを基盤にした、実効イメージ描写への余裕・・!?

 またオフェンス(攻撃)では・・

 ここでも、スペースランニング(忠実なフリーランニング)が目立つ。要は、効果的なパスレシーバーになる(スペースを攻略する)ということだけれど、そんなボールがないところでの動きは、味方のパスコースだけじゃなく、他のチームメイトが使えるスペースも作り出す(etc.)っちゅう効果を生み出すわけです。

 ボールがないところでの忠実な汗かきフリーランニングの積み重ね。ということで、忠実な守備アクションも含め、そんな香川真司の組織的(チーム)ハードワークを味方が頼りにしているからこそ、しっかりと彼を「探して」パスを回す・・という副次効果も派生してくるわけです。

 あっと・・、その副次効果だけれど、もちろんそれは、香川真司が、ボール絡みで「も」チームにとって実効価値のあるプレーを展開できているからに他ならない現象だよ・・言わずもがなだろうけれど・・あははっ・・

 ボール絡みで特別な才能に恵まれたプレイヤーが、攻守にわたる「汗かきプレー」でも全力を尽くす。そりゃ、信頼度がアップするのも道理だよね。もちろん、そんなチーム内での信頼感を確固たるレベルまでに築き上げられたバックボーンには、ユルゲン・クロップという「ストロング・ハンド」のサポートがあったことは言うまでもない。

 とはいっても、この後期開幕ゲームでの香川真司のボール絡みプレー内容には、ちょっと不満も残った。あれほどの「ボール絡みプレーの才能」を秘めた香川真司にしては、ちょっとプレーが淡泊に過ぎやしないかい??

 たしかに、ダイレクトのヒールパスで相手守備のウラを取るとか(味方が、ウラのスペースを活用できるために!)、ダイレクト・コンビネーションのキッカケを演出するとか、はたまた一瞬の効果的タメからスルーパスを送り込むとか・・最終勝負の流れのなかで、とてもインパクトのあるアクセントにはなっている。でも・・

 そう、わたしは(たぶん彼も!?)もっと、もっとダイナミックで強引な(!?)個の勝負「も」ブチかまして欲しい(ブチかましたい!)と思っているわけです(・・と感じているに違いない!)。

 例えば、中盤スペースでパスを受け、素早く振り向いて仕掛けドリブルに入ったという状況。

 この試合でも、何度かあった。素晴らしいタメキープから(相手守備の視線と意識を引きつけて)スペースへ走り抜けるチームメイトにスルーパスを出すというシーン。

 でも逆に、どちらかといったら、「自分で行けるのに、より可能性の高い味方へのパスを選択してしまった・・」っちゅうニュアンスのシーンも、何度かあった。

 その都度、私のなかで、「自分で勝負していけよ〜っ!!」っちゅう心の叫びが出た。

 もちろん状況による。強引に「過ぎる」ドリブル勝負については、注意深く判断すべきだよね。でもサ、たまにゃ〜、「香川真司、ここにありっ!!」ってな強引なドリブル突破&シュートだってアリでしょ。そう・・彼がデビューしたシーズンのような・・ネ。

 難しいけれど、まあ最後は、優れたバランス感覚・・っちゅうテーマに収斂されるでしょ。組織プレーと個人プレーのバランス・・とかネ。

 その視点で、香川真司のプレーは、決してバランスが崩れているわけじゃない。でもサ・・

 そうなんですよ。組織プレーと個人プレーの効果的なバランス・・というテーマでは、どちらかといったら、『より積極的に、エイヤッ!というフッ切れた個人勝負を仕掛けていく』ことの方が(そんなプレー姿勢こそが)大事になってくるんだよね。フム〜〜・・

 難しいテーマだけれど、攻守にわたるハードワークはそのままに、個のリスクチャレジ勝負を「より積極的に、バランスよく」仕掛けてけるようになることもまた、香川真司が「世界トップへブレイクスルーする」ための重要なテーマだと思っている筆者なのでした。

===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]